「子ども2人1500円程度の出費でも、毎月のやりくりは火の車。
学校教育を支援する、本来「任意加入」の社会教育団体が、PTA(Parent-Teacher Association)です。本来、PTAは入退会自由のはずですが、実際には多くの学校でこのルールが十分に周知されないまま、会費が強制的に徴収されている実態があります。
共働きが増えた一般家庭にとってもPTAは大きな負担ですが、生活保護受給世帯にとっては、さらに死活問題。憲法が保障する「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利(生存権)」(憲法25条)と「教育を受ける権利」(憲法26条)を直接的に脅かしかねない深刻な人権問題となっていることは、あまり知られていません。
長年、PTAが強制加入でなく任意加入であることの周知に取り組んできた青森県X市のA市議は、最低賃金との関連性も指摘します。
「青森県の最低賃金は、2025年の改定でようやく時給1029円になりました。それまでは953円でした。必死に働いた1時間分の賃金以上が、使途の不透明なPTA会費として徴収されることの理不尽さは、学校関係者にはなかなか理解されません」
生活保護とPTAの問題は、プライバシーの問題から、これまでほとんど議論されることがありませんでした。そのため、生活保護世帯でもPTA会費の公的扶助はありません。
「1口100円、7~8口お願いします」の“公開処刑”
PTA会費の徴収方法は地域差が大きく、大阪をはじめ一部の地域では独特な集金システムが継承されています。それは、「PTA会費の申告用紙を子どもに持たせ、クラスで担任が回収する」「保護者に『1口100円』という単位で口数を自己申告させる」という運用方法です。「7~8口(1児童あたり)をお願いします」などと書かれた紙と集金袋が配られます。建前は「任意」ですが、子ども自身が学校へ持っていき、クラスメートや担任の前で提出しなければならないケースも少なくありません。
「あの子の家は1口だった」
「あの子の紙は空欄だった」
多感な年代の子どもが、そんな視線に晒されるリスクがあり、プライバシーへの配慮が欠落したこのシステムは、経済的に困窮する家庭にとって「公開処刑」にも等しい重圧です。時代に合わないだけでなく、倫理上の問題も抱えているといえます。
生活保護費から「PTA会費」は出るのか?
ここで「生活保護費からPTA会費は支給されないのか?」という疑問が生じます。結論から言えば、生活保護制度上、PTA会費についての明確な公費助成はありません。生活保護法上の「教育扶助」には、学用品費などが含まれますが、これは定額(私の事務所がある大阪府大阪市は小学生1人月1170円)であり、PTAの加入の有無や口数によって増額されることはありません。
つまり、前述のような「寄付金(1口〇円)」扱いの費用は、生活保護世帯が自分たちの食費(生活扶助)を切り詰めて捻出しなければならないのです。これは、国が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」に必要な食費や光熱費が、PTAという任意団体の活動費に消えていることを意味します。
貧困層が富裕層のランチ代を負担する「逆進的搾取」の問題も
無理をして支払われたそのお金は、何に使われているのでしょうか?本来、公費(税金)で賄うべき学校備品の購入費用や、行政職員が行うべき業務(防犯パトロール等)の人件費が、PTA会費や保護者の無償労働で穴埋めされている実態があります。
その背景には、教育現場が予算削減や慢性的な人手不足で、PTAに頼らざるを得ない事情があります。
さらに深刻なのは、一部の地域で見られる不透明な流用です。極端なケースでは、食費を切り詰めて支払った会費が、平日昼間に開催される高級ホテルでのランチ会(PTAの行事)や、運動会など学校行事に来賓として来校する地元議員への手土産代に使われた事例すらあります。
これは、「経常的最低生活費を切り詰めている貧困世帯の公金」が、「時間的・経済的余裕がある層の飲食代」に横流しされている状態であり、貧困層から富裕層への所得移転という、極めて不公平な逆進的搾取です。行政がこの実態を黙認すれば、公費の不適正支出にあたる可能性すらあります。
全国組織である公益社団法人日本PTA全国協議会は「PTA会費の適正な支出」「PTA予算の健全性」を呼び掛けています。しかし、上述の実態は今なお解消されているとはいえません。
「入会した覚えはない」法的根拠なき徴収
社会には、行政や世間が、法的根拠の欠如や違法性の指摘を認識しながらも、「慣行」を理由に長年にわたり黙認してきた問題が多々あります。その一つがPTAのあり方です。そもそも、PTAは入退会自由な、任意の社会教育団体です。
日本PTA全国協議会も、公式ホームページで以下の通り明記しています。
「PTAは、学校を支援する活動を行いますが、学校とは別の独立した団体です。
PTA会費の集金は、本来は、PTAが独自に会員から行うべきものと考えます。
一方で、事務負担の軽減、集金コストの軽減の観点から、学校徴収金としてPTA会費を集金する場合もあります。
また、自治体のなかにはPTA向けに「運営改善に向けた提言とロードマップ」を提示し、学校経由の現金徴収は「即時廃止すべき」、銀行引き落としについても、「法的リスクのため、即時分離・廃止すべき」と明記しているところもあります。
しかし、多くの学校で、入学と同時に「全員強制加入」であるかのように扱われ、入会届も契約書もないまま、給食費などの諸経費と一緒に会費が口座から引き落とされています。
また、保護者の同意がないまま学校から名簿がPTAに提供され、個人情報保護条例違反に該当するのではないかと裁判で争われるなど、公的教育機関である学校が、任意加入団体であるPTAの徴収活動に深く関与している実態があります。
「そもそもPTA会員になった覚えもない」
「学校が勝手に保護者情報をPTAに渡すのは個人情報保護条例違反ではないか」
「給食費の口座から勝手に引き落とすのは、契約なき支払い、不当利得ではないか」
教員がPTA業務を行うには、本来、校長とPTA間で明確な「業務委託契約」が必要であるはずなのに、それが行われていないという指摘もあります。
こうした法的瑕疵(かし)の指摘は、長年、全国の保護者から教育委員会にも寄せられていました。
一部の保護者から問題視する声が上がっても、PTAは子が学校を卒業すれば終わり。声がかき消されては、また新たに入学した児童の保護者が声を上げる。こうして、問題は解決しないまま、次世代に先送りされてきたのです。
この問題は「誰が悪い」といえるものではないということを、認識しておく必要があります。
学校現場も、予算削減や人手不足でPTAに頼らざるを得なくなっており、PTAもそれへの対応を余儀なくされているという、構造的な問題が見え隠れします。
最低生活費を圧迫する「超過負担」と福祉事務所の責務
生活保護受給者の場合、月1000円ほどの教育扶助の特別基準額(例:大阪府大阪市の小学校で月額1170円)を超過した場合、その超過分は、保護の実施機関が指導する経常的最低生活費の範囲内でやり繰りによって賄う性質のものとなります。経常的最低生活費は、被保護者の衣食等の、月々の最低生活需要すべてを満たすための費用であり、この超過分を捻出することは、被保護者の食費や光熱費を直接的に圧迫します。
これは、生活保護法の根幹である「必要即応の原則」(最低生活の需要を満たすに十分であって、かつ、これを超えないものでなければならない)の趣旨に反する行為であり、被保護者の自立助長を阻害する可能性があります。
福祉事務所の職員は、被保護者に対して、金銭の管理について生活保護の趣旨目的に反しないよう適切な助言指導を行うこととされています。
「任意加入団体」への超過支出は、本来この「適切な家計指導」の対象となるべき性質のものといえます。被保護者の生活維持のため、福祉事務所には「事実上の強制徴収」を排除する積極的な介入が求められます。
「大人のいじめ」と貧困
PTAへの強制参加や会費未納世帯への同調圧力は、被保護世帯を地域社会から孤立させ、精神的な尊厳を傷つける排除のメカニズムとして機能することがあります。PTA非加入や会費未納を理由とする圧力は、単なる金銭的要求に留まりません。異論を唱える保護者に対する組織的な無視、陰口、情報遮断といった「大人のいじめ」「村八分」が横行し、いつしかそれが子どものいじめに発展する例は全国で後を絶ちません。
生活保護受給世帯は、ただでさえ地域社会での偏見や孤立を恐れています。「お金がない」「参加できない」と声を上げることが、「貧困のカミングアウト」となり、さらなるいじめや差別の対象となるのではないかという心理的抑圧こそが、生活保護世帯が苦しいながらも不当な徴収に従わざるを得ない、最大の強制力となっている現実があります。
女性の無償労働の搾取
また、PTAのあり方は、立場の弱い母親の労働力を搾取し、行政の予算不足を穴埋めさせていると批判を受けてきました。象徴的なのが「ベルマーク運動」です。膨大な時間をかけ、小さなマークを切り取り、仕分け、集計する作業は、すべて保護者(主に母親)の無償労働に依存しています。この活動で集まった点数で購入される備品は、本来公費で賄われるべきものです。
「子どもを人質」というと言葉は強いですが、地区班の編成が「災害時の集団下校に必要」という理由でPTAへの加入を事実上強制される事例もあります。子どもが災害時に危険に晒されるかのような不安を煽る手法には問題があります。
人権侵害としての差別的取り扱いと、契約なき徴収
さらに、PTA非加入や会費未納を理由とした、子どもへの差別的取り扱い(卒業記念品の不授与、特定の行事からの排除、登校班からの除外など)は、子どもの教育を受ける権利と尊厳を侵害する行為であり、明確な人権侵害です。被保護者は、心理的圧迫により、本来支払う義務のない費用を支払わされるという二重の苦痛を強いられています。
「PTA入会届」を用意している学校は全国的にも稀であり、任意加入団体に入会の意思表示をしていない以上、本来は会費の支払い義務は生じません。それでも保護者が支払いを拒めないと訴える最大の理由の一つは、「子どもがいじめられないか」という恐怖です。
実際、SNS上にも、PTA非加入世帯を「タダ乗り」として批判する傾向が見られます。
また、生活保護受給世帯に対し、「就学援助(修学旅行費や給食費の補助)を受けているのだから、PTA会費くらい払うべきだ」という声もあります。
しかし、これはまったく別の問題です。
就学援助は経済的困窮への公的支援であり、それを受けたからといって、任意団体への入会や会費支払いを強制されるいわれはありません。そもそも多くの自治体では就学援助の対象項目にPTA会費が含まれていません。
教育現場には、入学時に保護者に対して、PTAが完全な任意加入団体であることの説明と、個人の入退会の有無が他の児童や保護者に知られることのないプライバシーへの配慮の徹底が強く求められます。
同時に、国には、上述した、教育現場が予算削減や人手不足でPTAに頼らざるを得ない構造を改善することが求められます。
義務教育無償化のあるべき姿へ
「みんな払っているから」という空気の中で、今日の食事にも事欠く家庭が、法的根拠のないお金を徴収されていることさえ知らずに苦しんでいる現実があります。慣習としてこの問題を放置することは、憲法で保障される生存権(25条)と教育を受ける権利(26条)の侵害にほかなりません。解決のためには、まず何よりもPTAが「任意加入」であることを徹底周知し、学校徴収金とPTA会費を明確に分離することが不可欠です。
PTAが入退会自由の任意加入、任意団体であるということを未だ知らない保護者も多くいます。入会しないという当たり前の権利を誰の目を憚ることもなく、自由な意思で行使できれば、そもそも会費負担は発生せず、「お金がないから払えない」とカミングアウトする必要もなくなります。これこそが、精神的な重圧から解放されるための第一歩です。
さらに、本来PTA会費で賄われている学校備品などは、保護者の私費ではなく公費(税金)で賄われるべきものです。公的予算を増やし、保護者の財布に依存する体質を変えることこそが、「義務教育無償化」の本来あるべき姿であり、本質的な解決策と言えます。
しかし、こうした改革が浸透するまでの過渡期において、現場での事実上の強制が直ちになくなるとは限りません。同調圧力によって生活保護世帯が食費を削らざるを得ない現状に、猶予は許されません。
強制徴収の実態がある以上、国や行政はその責任として、即、生活保護制度での対応をすべきです。家賃のように、代理納付の対象とするか、あるいは教育扶助として実費を上乗せ支給するなどの制度改正を直ちに行うべきです。
これは決してPTAの強制性を肯定するものではなく、あくまでも、生活保護世帯が「生活扶助費を切り詰めてPTA会費を支払っている」現状を即解消し、生存権を守るための、必要やむを得ない緊急の措置です。
長年にわたり構造的問題が温存されてきた結果、そのツケが、最も立場の弱い、声を上げたくても上げられない、生活保護受給世帯に回ってきているのです。
すべての子どもが経済状況にかかわらず、心身ともに健康な状態で教育を受けられる環境を整備する事が必要です。また、学校側がPTAに頼らざるを得ない状況を少しでも改善していくことが必要です。
行政、学校、そして地域社会全体には、抜本的な意識改革と制度改革が求められています。
■三木ひとみ
行政書士(行政書士法人ひとみ綜合法務事務所)、社会保険労務士(ひとみ社労士事務所)。官公庁に提出した書類に係る許認可等に関する不服申立ての手続について代理権を持つ「特定行政書士」として、これまでに全国で1万件を超える生活保護申請サポートを行う。著書に『わたし生活保護を受けられますか(2024年改訂版)』(ペンコム)がある。

![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 昼夜兼用立体 ハーブ&ユーカリの香り 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Q-T7qhTGL._SL500_.jpg)
![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 就寝立体タイプ 無香料 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51pV-1+GeGL._SL500_.jpg)
![[コロンブス] キレイな状態をキープ 長時間撥水 アメダス 防水・防汚スプレー420mL](https://m.media-amazon.com/images/I/31RInZEF7ZL._SL500_.jpg)







![名探偵コナン 106 絵コンテカードセット付き特装版 ([特装版コミック])](https://m.media-amazon.com/images/I/01MKUOLsA5L._SL500_.gif)