海外の空港で売春を疑われる日本人女性が増え、厳しい入国審査を受けるケースが増える一方、それでも海外で“出稼ぎ風俗嬢”として働くことに惹かれる女性も少なくない。
その背景にあるのが、SNSを通じて発信する「海外で自由に稼ぐセックスワーカー」の姿だ。
海外出稼ぎの情報や勧誘は、どのように拡散され、女性たちの選択に影響を与えているのだろうか。
※ この記事は、フリーランス記者・松岡かすみ氏による『ルポ 出稼ぎ日本人風俗嬢』(朝日新書、2024年)より一部抜粋・再構成しています。

SNSで輝くセックスワーカーのアイコン的存在も

SNSの広がりによって、海外のセックスワーカーの動きが可視化しやすくなり、女性たちが影響を受けやすい状況も生まれている。
かつてブログが盛んだった時代には、ブロガーが大きな影響力を持っていたように、現在はユーチューバー、インスタグラマー、ティックトッカーなど、各種SNSにそれぞれ影響力の高いインフルエンサーと呼ばれる存在がいる。
こうした何万人ものフォロワーを抱えるインフルエンサーの中には、世界を股にかけて仕事をするセックスワーカーのアイコン的な存在もいる。
そうしたセックスワーカーは、どこか特定の店に所属して働いているのではなく、さまざまな国で個人で客を取って仕事をするスタイルの人も多い。
こうした動きをSNSなどを通じて知り、「自分も海外でこんなふうに働いてみたい」と考える日本人女性もいるようだ。
現在、海外で顧客と直接交渉して性的サービスを提供する「エスコートガール」として働くミドリさん(仮名・35歳)もそうした1人で、日本の風俗店で働いている時から、海外の有名なセックスワーカーの女性のアカウントをフォローし、動きを追っていた。
都内の風俗店に所属し、仕事で裁量がない自分に対し、その女性は個人で自由に働いているように見えて、うらやましさを覚えるとともに、自然と憧れに似た感情を抱いた。
同時に、日本では風俗の仕事にこれ以上の先がないように感じていたが、同じセックスワークの仕事で海外で働く道があることを知り、活路を見出したような気持ちにもなったという。
加えて、エージェントやスカウトを名乗る人物らから、SNSを通じて海外出稼ぎの情報を得やすくなった。詳しくは後述するが、今エージェントやスカウトらが、出稼ぎに行く女性の勧誘を行う“主戦場”は、圧倒的にSNS、特にツイッターだ。無料で不特定多数に発信できるツールとあって、日々さまざまな出稼ぎ案件が更新されている。

女性にとっては、手軽に情報が得られる一方、「無理なく、桁違いに稼げる」といった甘い口車に乗せられ、安易な考えで出稼ぎを実行してしまう人も増えているようだ。

「こんなに稼げるとは!」ネット上には甘い誘い文句が…

SNSを通じて、海外出稼ぎの勧誘活動が盛んになっている実態を、もう少し掘り下げよう。
女性たちに勧誘活動を行うのは、主にスカウトやエージェントを名乗る人物たち。こうした人物を介して、海外に出稼ぎに行く動きが顕著になってきている。
例えば、ツイッターで「海外出稼ぎ」のワードで検索すると、海外出稼ぎの案件を紹介するアカウントが多数ヒットする。
「月に500万円以上稼げる」「日本のようにノルマもなく、働きやすくて稼げる」「あまりに稼げるので、一度行ったらリピートする人が多い」など、甘い勧誘文句がずらりと並び、日々たくさんの案件情報が更新されている。
また、エージェントやスカウトを介して海外出稼ぎに行ったという女性を名乗るアカウントでは、「短期間でこんなに稼げた」という話が、大量の現金の写真や海外のリゾート写真などとあわせて投稿され、「海外出稼ぎに行ったらこんなに稼げる」「稼いだお金で海外で遊べて最高」と、より出稼ぎを煽るような動きも散見される。
嘘か本当か、収入を報告するメールのスクリーンショット画像とともに、「こんなに稼げるとは思いませんでした!」「手厚くサポートしてくださって感謝しています」「お店の人も協力してくれるし、わからないことはわかるまで何度聞いても教えてくれる」などと、エージェントやスカウトに対する感謝を綴る投稿も数多い。
こうしたエージェントやスカウトを介して、実際にどれだけの女性が海外出稼ぎに行っているのか、正確な人数は定かではない。だがSNSによって、ごく一般的な生活を送る人までもが、海外出稼ぎの勧誘情報にアクセスしやすくなっているのは事実だ。
「未経験でも、英語が話せなくてもOK」「サポート体制が万全なので、安心して海外出稼ぎができる」など、一見「初心者でもできるのかも」と思わせるような書きぶりをしている投稿を見て、「行ってみようかな」「私にもできるかも」と思う女性が出てくるのは不自然ではないだろう。


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