2010年の大晦日に日本航空(JAL)が165人の社員を整理解雇してから約15年。
最高裁で解雇の有効性が確定した後も、元乗務員らは「本当に必要な解雇だったのか」と問い続けている。

そうした中、東京都労働委員会は整理解雇後の乗務員・客室乗務員の人数についてJALが十分な説明を行わなかったことを不当労働行為と判断。JAL側に対し、誠実な団体交渉を行うよう命じた。
命令書の交付を受け、JAL被解雇者労働組合(JHU)が1月15日に都内で会見した。

15年前の整理解雇、削減数は明らかにされず

JALは2010年1月に経営破綻し、企業再生支援機構のもとで更生手続きに入った。同年12月31日、JAL側は運航乗務員と客室乗務員ら165人を整理解雇。このことが今日まで続く争議の出発点となった。
会社側は当時、「事業規模の縮小に伴う人員削減」と説明していたとされるが、労働組合側は「解雇の必要性はなかった」と反発。裁判で無効を主張した。解雇の有効性については最終的に2015年2月4日、2月5日に最高裁で会社側の主張が認められ、判決は確定している。
一方で、その過程で示された「削減目標」と、実際にどれだけ人員が減ったのかという点は長らく争点となってきた。
会見で労組側は、会社が国交省に提出した安全報告書などから、整理解雇時点で運航乗務員は目標より269人、客室乗務員は466人多く削減されていたと主張した。しかし、これらの具体的な数字は、団体交渉や訴訟の場で十分に開示されてこなかったと訴える。
こうした経緯を踏まえ、JAL被解雇者労働組合は2021年以降、JALが人員数などの情報を示さないまま整理解雇問題の交渉を拒んだとして、東京都労働委員会に不当労働行為の救済を複数回申し立てた。
審査は複数年にわたり続き、断続的な調査・審問を経て、今回の命令に至った。
JAL被解雇者労働組合はあわせて、整理解雇の過程に国土交通省が強い影響力を及ぼしたとして、国を相手取った団交拒否の救済も申し立てていた。都労委は、国交省がJALの人員削減を含む更生計画の策定・遂行過程に「一定の影響を及ぼしたことは否定できない」としつつも、JALの雇用・人事管理について直接の権限はないとして、労組法上の「使用者」には当たらないと判断し、この部分は棄却した。

「誠実に団体交渉に応じる義務」明示

この日の会見には、指宿昭一弁護士、岡田尚弁護士ら弁護団と、JAL被解雇者労働組合の山口宏弥委員長、山崎秀樹書記長らが出席し、命令の内容と意義について説明。
今回の命令で東京都労働委員会は、JALが整理解雇後の乗務員・客室乗務員の人数について、組合が具体的な根拠を示して回答を求めていたにもかかわらず、十分に説明しなかった点を問題視した。
命令主文では、JALに対して、整理解雇後のJALグループにおける運航乗務員数と客室乗務員数について、根拠を示した具体的な見解を述べるなどして、誠実に団体交渉に応じる義務があると明示。加えて、「不当労働行為であると認定されたこと、同様の行為を繰り返さないよう留意すること」を記載した文書を、1週間以内に組合へ交付するよう命じた。

「現在の安全トラブルとも関係」

会見で指宿弁護士は、「解雇の有効性自体は最高裁で確定しているが、それとは別に、(労働問題)解決のために必要な情報については会社に説明義務があるという点を都労委が認めた」と評価。
岡田弁護士も、「何人を削減目標として、実際に何人まで減ったのかという最も基礎的な事実が当時明らかにされていなかった」として、「この数字が早く開示されていれば、解雇の必要性に関する評価は違ったはずだと組合は考えている」と説明。
そのうえで、「JALの再生は国の関与なしには成り立たなかった。ならば、その後始末、特に解雇された人たちへの対応についても、国交省は一定の責任を持つべきだ」(岡田弁護士)と述べ、国側の役割にも言及した。
労組側は、安全面との関連も訴える。山口委員長は、「いまJALでは安全トラブルが続いている。
結果には必ず原因があるのに、足元の労働問題すら未解決のままでは、安全基盤は確立できない」と主張。労使の信頼関係が安全の根幹にあるとして、長年の労務政策と安全文化の関係を問題提起した。
また、現在審理中の優先雇用事件では、整理解雇後にJALが運航乗務員や客室乗務員を新規採用していることを踏まえ、「経験豊富な元社員を戻さず新人を大量採用しているのはおかしい」と訴えており、労組側は「解雇回避義務を十分尽くしていない」との位置づけを強めている。
また、山崎書記長は、「真の解決に向けて大きな武器をもらった」と述べ、今後の団体交渉では今回の命令を根拠に、削減数や再雇用に関する具体的な説明を改めて求めていく考えを示した。
なお、弁護士JPニュース編集部では、JALに対してコメントを求めたが、現在まで回答は得られていない(1月16日10時時点)。


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