男性の医療脱毛「15万円のはずが90万円」の悪質ケースも…“コンプレックス”につけ込み法外な契約を獲得、“美容医療業者”の巧妙な手口とは
近年、男性の美容意識の高まりとともに、美容医療に関するトラブルが急増。国民生活センターは、インターネット広告をきっかけとした高額契約や強引な勧誘について、強い注意を呼びかけている。

15万円のはずが90万円に

20代の男性Aは「全身脱毛5回15万円」という広告を見て、インターネットで受診予約。大手クリニックの相場は5回で5万円台から20万円と幅があるものの、提示の「5回15万円」は高額の部類だ。
ところが、カウンセリングではスタッフから「こちらの方が効果があるから」などと割高な「15回100万円」のコースを提案されたという。
男性もさすがに「高すぎる」と感じ躊躇したところ、「今日契約すれば学割で90万円になる。分割払いなら月々3万円だ」と畳みかけられ、ついその場で契約してしまった。
後になって知人に相談すると「高額すぎる」と指摘され、支払いの継続も困難だとして、男性Aは国民生活センターへ解約の相談を寄せたという。

トラブルが急増している背景

釣る→煽る→急かす→割り引く。上記の事例は美容医療における、典型的な契約トラブルの発生パターンといえる。
ネットで安価なプランを提示し、集客。興味をひかせて来院させると、「あなたの状態では効果がない」と不安を煽り、高額プランを勧める。躊躇すると「今なら割引になる」と急かし、検討する時間を与えずに即時契約・施術を迫る――。
急増しているのは、こうしたフローで来院者に強引に契約を結ばせるケースだ。
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コロナ禍を経て急増する相談件数(出典:国民生活センター)

国民生活センターが公表している「美容医療サービスに関する年度別相談件数」は年々増加。2023年度から2024年度にかけては上昇カーブがより急角度になっている。

同センターによれば、寄せられる相談には契約内容や契約条件等に関するトラブルのほか、施術によるやけどや傷が生じる危害も一定数発生しているといい、注意喚起を行っている。

背景には男性の美容意識の変化も

相談件数増加の背景には、男性の美容意識の変化による市場拡大もある。
リクルートが2023年に行ったアンケート調査(男女各6600人)では、男性が美容医療を受けた理由のトップは「コンプレックスの解消」(17.1%)。続いて「手軽にできるようになった」(15%)、「自己満足」(13.8%)「価格も安くなってきたから」(13.7%)となっている。
かつて美容医療を受ける理由の上位だった「モテたい」(12.6%)の優先順位は下がり、男性も自分磨きに執心する時代へとシフトしている。

“自衛”のためのクーリング・オフの基礎知識

男性Aの事例はこうした心理を悪用したケースといえ、不本意に契約させられないためには“自衛”が重要になる。
男性Aのケースでは、クーリング・オフにより支払ったお金が返ってくる可能性がある。そうした知識があれば、その場では冷静な判断ができなくても取り返しがきく余地がある。
たとえば、その成功可能性が高いといわれる美容施術には、次のものがある。
  • 医療脱毛
  • 美肌治療
  • しわ・たるみ改善
  • 医療ダイエット
こうした施術のうちさらに、5万円超・1か月超のコース契約はクーリング・オフの対象となる。つまり、男性Aのケースは返金される可能性が高い事例といえる。
たとえば美容医療では、医師と患者の間に情報の非対称が起こりやすく、不公正な取引が発生しやすい。そこで、消費者保護の特別ルールとして「特定商取引法」が定められている。
さらに長期間・高額な美容施術は、同法内の「特定継続的役務提供」として規制の対象となっている。

これにあてはまる美容施術をする場合、クリニックやサロンは消費者がじっくりと判断できるよう、施術内容・金額をはっきり伝える義務がある。当然、法律上の必須事項をすべて記載した契約書を消費者に渡す必要もある。
この義務を果たしていない契約は、クーリング・オフの8日以内の期限に関係なく、いつでも返金が可能となっている。男性Aの場合、条件に当てはまっていれば、もし8日を経過していても、支払ったお金を取り戻せる可能性がある。

「今すぐ施術が必要」と煽られてもその場で契約・施術はしない

国民生活センターは美容医療のトラブル防止として、次のように助言している。
「美容目的の施術は多くの場合、緊急性がありません。『今すぐ施術が必要』と不安を煽られてもその場で契約・施術はしないようにしましょう。クレジットを組んでまで必要な施術なのかよく考えましょう。不安に思った場合やトラブルになったときは、消費生活センター等に相談しましょう」
契約までのプロセスで、ほんの少しでも不安を感じるようならきっぱりとペンディングを伝える。自分を磨く前に、そうした危機に対するセンサーを磨くことが、健全な美容医療にたどり着くための近道、と心得ておくのが賢明といえそうだ。


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