竹内元判事は、2003年に弁護士会の推薦により裁判官に任官。
また、2023年には津地裁の裁判長として、2013年~2015年に行われた生活保護費の減額の違法性が問題となった「いのちのとりで裁判」で、「厚労省が自民党の政権公約に忖度した」と明記した原告勝訴判決を下し、話題になった(この問題については、2025年6月に最高裁で違憲判決が行われた)。
他方で、「日本裁判官ネットワーク」の中心メンバーとして活動し、また、自ら実名でブログ「弁護士任官どどいつ集弁護士任官どどいつ集」で積極的に情報発信を行っていた。大分地裁に勤務していた際、所長からブログでの情報発信を咎められ、異論を述べると、「君は僕に口答えをしたね」と言われたこともあったという。
今年3月、津地方裁判所民事部の部総括判事(民事部の裁判長のトップ)を務めたのを最後に依願退官。現在は立命館大学法科大学院(ロースクール)教授、弁護士として活動している。
前回の第4回口頭弁論期日(2025年10月1日)では、裁判長から原告・被告の双方に対し、主張内容についての確認や説明を求める「求釈明」がなされた。それを受けて原告は主張を補充し、被告(国)は準備書面の提出を行った。そして、本期日ではそれらを前提として弁論が行われた。期日後には竹内元判事と弁護団による報告集会が開かれた。
竹内元判事が受けたとする「昇進・昇給差別」について
本訴訟では、以下の2つの争点が提起されている。- 地域手当の違憲性:裁判官に毎月支給される「地域手当」の制度が、裁判官の報酬を「在任中、これを減額することができない」と定める憲法80条2項に違反している
- 昇給・昇格差別:竹内元判事が昇給・昇格差別を受けていた
一般論として、人事差別を受けたとの主張を立証することは難しい。そもそも人事権者には一定の裁量が認められるうえ、わが国では往々にして「昇進できなかったのは能力が足りなかったからではないのか、差別のせいにするな」といった類の、短絡的かつ粗雑な非難が容易にまかり通り、広く受け入れられがちだからである。
そこで、原告側は訴え提起の当初から、あくまでも客観的資料に基づき裏付けを行い、「人事差別が存在しなかった」と仮定した場合に生じる不合理な点や矛盾点を明らかにし、それらについて被告国側に釈明を求めるという方針をとっている。
裁判官の報酬額は「号俸」と連動している。「最高裁判所長官」「最高裁判事」「高等裁判所長官」(東京とその他とで区別)のほか、「判事」は1号~8号、「判事補」は1号~12号に分かれている(【図表1】参照)。
【図表1】裁判官の報酬(裁判官の報酬等に関する法律2条「別表」をもとに作成)
「号俸」と役職との厳密な対応関係は明らかにされていない。しかし、原告によれば、公表されている実際の役職ごとの人数と照らし合わせると、おおむね以下の通りとなる。
- 判事1号:高等裁判所の部総括判事、地方裁判所・家庭裁判所の所長
- 判事2号:地方裁判所の部総括判事またはその経験者
他方で、竹内元判事の司法修習同期(39期)は、2024年6月末日時点で、竹内元判事を含め現職の裁判官が19名、うち17名(弁護士任官者2名を含む)が高裁長官、高裁の部総括、高裁支部長、知財高裁所長、地裁所長、家裁所長、司法研修所長のポストに就いていた。
これらはいずれも、上述の対応関係によれば、「判事1号」または「判事2号」に相当することになる。
裁判長からの「求釈明」に国はどう答えたか
裁判長は国側(被告)に対し、10年ほどの幅をとり、竹内元判事の修習同期(39期)だけでなく前後の期を含め、「3号以下」で、定年退官した裁判官、または定年直前に退官した裁判官がどれほどいるのか明らかにするよう、求釈明を行った。これに対し、被告国側は、同期間中に退官した裁判官のうち所長等未経験者が約59.9%を占めていることなどを示し、以下の通り回答している(被告第3準備書面参照)。
「過去10年間という長期にわたるデータからすれば、裁判官を退官した者の多くは、所長等の職を経験しておらず、65歳で定年退官した者であっても、3割近くは所長等の職を経験していないのであって、原告が、定年まで約2年7か月を残した時点で所長等の職を経験しないまま退官したことが特異な例であるとはおよそいえない」
期日後の報告集会で、竹内元判事は、この国側の準備書面の内容について「前回口頭弁論期日で、裁判長が被告に投げかけた質問とずれている」と指摘した。
竹内元判事:「被告国側は『所長になっていない人は半分くらいいるから、差別はない』という。しかし、裁判長はそんなことは問うていない。
私は『所長にしろ』と言っているのではなく、『津地裁の裁判長(民事部部総括)として正当に処遇してほしい』『同期が1号・2号になっているのに私だけ3号なのはひどい』と言っているだけだ。
被告側代理人の訟務検事は、前回口頭弁論直後に裁判所の調書を謄写しているはずであり、そこに記載された質問の意図を取り違えようがない。わざと裁判長の質問とずれた回答をし、はぐらかしたと言われても仕方ないのではないか」
裁判官の人事評価基準は「ブラックボックス」?
原告側は、裁判官の人事評価がどのようなプロセスで行われたのかについても説明を求めた。被告国側はこれまで、答弁書・準備書面で以下のように昇給・昇格の基準を示している。
「弁護士任官者であっても、(中略)判事3号以上への昇給については、経験年数のほか、ポストや勤務状況等を考慮して、各高等裁判所の意見を聞いた上で、最高裁判所の裁判官会議において決定される」
これに対し、原告側は、竹内元判事が名古屋高裁から津地裁へ異動した2021年4月1日から退官直前の定例昇給日である2025年1月1日までの期間に実際に行われた最高裁判所の裁判官会議の日時・所要時間等をまとめた(【図表2】)。
【図表2】最高裁判所の裁判官会議の日時・所要時間(2021年4月1日~2025年1月1日)
本期日でこの点についての弁論を行った原告代理人の松村啓史弁護士は、次のように振り返った。
松村啓史弁護士(訴訟弁護団事務局提供)
松村弁護士:「最高裁裁判官会議の議事録によると、裁判官の昇給以外にも様々な議題がある中で、全体の会議の時間が5分~30分ほどしかない(【図表2】参照)。しかも、裁判官の昇給決定については最高裁事務総局人事局が作成している『裁判官昇級候補者名簿』の原案通り、修正を加えずに決定している。
つまり、最高裁裁判官会議では実質的な議論はされず、最高裁事務総局人事局が作成した名簿の通り、形式的に決定しているだけであることが明らかになっている。
そこで、高裁から最高裁事務総局人事局に提出している名簿に竹内元判事の名前が載っていたのか否か、仮に載っていたとすればいつの定例昇級日についての名簿に載っていて、全体のうち何位に位置づけられていたのかを明らかにするよう説明を求めた。
また、最高裁事務総局人事局で作成している名簿がどのような書式なのかを明らかにするよう求めた。
さらに、過去に原告側の準備書面で回答を求めたにもかかわらず被告が答えていない事項について、再び釈明を求めた。各高裁からの意見聴取はどのように行われたのか、意見が付される対象となるのはどの範囲の裁判官なのか。意見は具体的にどのような内容なのかを明らかにするよう求めた。
加えて、国が言う『経験年数のほか、ポストや勤務状況を考慮し』とはどのような意味なのか、評価書等の文書があれば明らかにするよう求めた」
今日、民間企業でも官公庁でも、人事評価の基準が可能な限り客観的かつ明確に定められていることが求められている。
もし、裁判官に対する人事評価基準が「ブラックボックス」となっているのであれば、果たして、その下で働く裁判官が「良心に従い独立してその職権を行い、憲法および法律にのみ拘束される」(憲法76条3項)ことが可能なのか、疑問が生じることになる。
裁判官の「地域手当」の問題も「はぐらかし」?
本期日では、もう一つの争点「地域手当の違憲性」についての弁論も行われた。裁判官を含む国家公務員の地域手当は、勤務地(居住地ではない)に応じて「報酬額の何%か」で決まっている。
竹内元判事は2021年4月、名古屋高裁から津地裁に民事部の部総括として異動した際、「地域手当」が減額された(15%から6%へ)。その結果、名古屋で勤務していた時と比べ、収入が大幅に減少した(【図表3】参照)。
そこで、竹内元判事は、地域手当が憲法80条2項の「報酬」にあたると主張し、異動後3年分の「地域手当の差額」238万7535円などの支払いを求めている(行政事件訴訟法4条参照)。
【図表3】竹内元判事の異動による給与減額の状況(訴状より)※地域手当の額は2024年に改定されている
これに対し、被告国側は、憲法80条2項の「報酬」は「一定の役務の給付の対価として与えられる反対給付」の意味であり、地域手当は「地域における民間の賃金水準を基礎とし、当該地域における物価等を考慮して支給されるもの」(一般職給与法11条の3第1項参照)なので「報酬」にあたらないとしている。
竹内元判事:「裁判長は、前回口頭弁論以降、再三、被告に対し『地域手当とは何なのか』と質問して迫っているのに、被告はごまかそうとしている。
最大で給与月額の20%(東京23区の数値)も上乗せしておきながら『報酬ではない単なる手当であり、住宅手当、扶養手当、通勤手当等と性質が同じだ』と、形式論で答えるばかりだ。
『手当』とは個別の事情に応じて支給されるものだが、地域手当はそうではない。
実質は、最高裁事務総局の『裁判をしない裁判官』も含め、『東京23区・大都市に勤務する裁判官のための特別の報酬』となっている。
被告がはぐらかし続けるなら、次回以降は『実態からすればこうだ』と決めつけて攻勢に出てもいいと考えている」

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