実は「月々の賃料」に含まれている? 賃貸トラブルの4割を占める「原状回復」知らないと“払い損”になる修繕費の境界線
賃貸住宅の退去時に最も多いトラブルの一つが「原状回復」だ。自然に消耗するものもあれば、もとから物件が古く、各所がもろかったなど、賃借人/賃貸借人双方に言い分があるケースが多く、意見の食い違いが起こりやすいことも一因だ。

国民生活センターには、賃貸住宅に関する相談が毎年3万件以上寄せられる。そのうち約4割が「原状回復」に関するものという。こうしたことからも、日常において注意すべきトラブルの代表例といえる。
特に引っ越しシーズンには相談が急増する傾向にあるといい、同センターも17日、ホームページ上で注意喚起した。

原状回復トラブルに巻き込まれないために

そろそろ引っ越しを考えているという人はもちろん、これから新生活がスタートするという人も、いまから対策を念頭に入れておけば、退去時に嫌な思いをしなくて済むハズだ。
原状回復トラブルでは、退去時に高額な修繕費用を請求されるケースや入居時からあったキズの修繕を求められるケースが争点となりやすい。同センターは、トラブル防止のために「契約時」「入居時」「入居中」「退去時」の各段階で、キズや汚れの有無を確認し、記録を残すことを強く推奨している。

国民生活センターが挙げる事例

実際に同センターに寄せられた相談事例には、以下のようなものがある。
  • 身に覚えのない費用の請求:自分では通常の使用による損耗(通常損耗)だと思っていた箇所の修繕費や、契約書に記載のない費用を請求された。
  • すべて借主負担となる修理費:入居予定の賃貸アパートの契約書に「退去時に、故意過失にかかわらずクロスや床の張替等は100%の料金を請求する」との記載があり、契約書のサインを保留した。
  • 長期居住後の請求:約10年住んだ物件で、覚えのないクロス汚れを指摘され、費用を請求された。
  • 高額な清掃費:物件を退去する際、契約書の内容と異なる高額なエアコン清掃代などを請求された。

スマートな退去のためにやるべき行動

退去時にこうしたトラブルに巻き込まれないためには、上記事例を見越した行動が重要になる。
  • 立ち会いと記録:退去時はできるだけ貸主側と一緒に部屋を確認する。その際、入居時の記録や写真と照らし合わせ、新たなキズや汚れがないかチェックし、写真やメモで記録に残すことが不可欠だ。
  • 安易に署名しない:清算内容に納得できない場合は、その場でサインせず、十分な説明を求める。一度署名すると、その内容を了承したとみなされるリスクがある。
  • 明細の請求:敷金から差し引かれる費用の具体的根拠や内訳の明細を請求し、説明を求める権利がある。

国土交通省ガイドラインから学ぶ、トラブル防止の知恵

トラブルを複雑にするのが、どこまでが借主で、どこまでが貸主の責任なのかあいまいになりがちな点だ。これについて、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」は、費用負担の一般的な基準を示している。
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原状回復の“基準”は一応ある(国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」より)

それによると、「原状回復」の定義は借りた当時の状態に完全に戻すことではなく、借主の義務は、「故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超える使用」による損耗を復旧することに限られる、となっている。
費用負担については原則として、経年変化(日焼け等)や通常損耗(家具の設置跡等)の修繕費は、月々の賃料に含まれていると考えられている。
一方、飲みこぼしのシミ、結露を放置して拡大したカビ、タバコのヤニ汚れなどは借主の負担とされている。この辺りは感覚的ではあるが、貸す側も借りる側もある程度の納得感があるだろう。
もめがちな経過年数の解釈については、借主が修繕費を負担する場合でも、設備の経過年数(耐用年数)を考慮するとされている。たとえば壁紙(クロス)は6年で残存価値が1円となるような考え方が採用されており、長く住むほど借主の負担割合は減少する。

「特約」の内容には注意

注意すべきは特約だ。たとえば、「ルームクリーニング代は借主負担」といった特約がある場合、それが効力を発揮するには明確に合意されている必要がある。
入居前に必ず説明があるはずなので、うわの空で聞いていなかったということは回避しなければならない。
仮に記憶にないが“合意”していたとしても、その内容があまりに一方的な場合は無効とされる可能性もあるので、弁護士などに相談するといいだろう。
最後に生々しい実例を紹介する。入居中および退去後に、借主の契約違反となる行為が多数発覚し、オーナー側から提訴され、いまだ係争中というものだ。
よくよく聞けば、入居者は契約時の禁止事項である事務所としての利用や自身によるエアコンの取り付けによる壁破損、夫婦で入居の虚偽報告など、貸主の反感を買う行為のオンパレードだったという。
入居者はすべてを否定しているが、貸主は入居前の物件の状況を撮影して記録を残しているため、入居前に傷や汚れがなかった証拠が揃っている。入居者側はそれを覆す証拠を提出することができておらず、敗色濃厚となっている。
賃貸住宅においては、気持ちよく住み続けるためにはなによりも貸主との信頼関係が重要になる。虚偽の報告などもってのほかだが、そうしたことでもめないためにも、契約時にはしっかりと説明を聞き、入居前、入居中、退去前には記録に残すことを徹底。そして常に貸主への感謝の気持ちを忘れない。それが、最強のトラブル回避策といえるだろう。


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