2月23日の午前8時頃、朝ラーメンの有名店として知られる「煮干乱舞」(埼玉県・春日部市)で、3人の泥酔客らが店内でトラブルを起こした。
報道によると、泥酔客らは、早朝から多数の客がいる中、店側の人間が店内に掲示してある『酔っ払いの方はお断り』という貼り紙を指して退店を促したにもかかわらず、強引に席に座った。
再び退店を促した店主に対して怒声を上げ、様子を見かねて注意した他の客にも激しい言葉で威嚇したという。
店主が警備会社の緊急通報ボタンを押すと、泥酔客らは電話で仲間を呼び寄せ、男ら約10人が集結。男らは店の出入り口を封鎖し、店主に対して「これから毎日来て嫌がらせしてやるからな」「お前のSNSもXも全部知ってるからな、勘違いすんなよ」などの言葉を浴びせ続けた。
その後、通報を受けたパトカー数台が店の前に急行。しかし男らは警察官を前にしながらTikTokで流行している「横揺れ」のダンスをする、警察官の顔面に近づいてにらみ付けるなど、挑発的な振る舞いを1時間近く続けたという。
同日午前10時30分頃、店は公式Xで「本日はこのまま営業終了」と告知。翌24日も「安全確保のため」休業となったが、25日から営業を再開している。

威力業務妨害が成立する可能性

店側は24日の時点で、威力業務妨害の容疑で春日部警察署に被害届を提出しているという。
威力業務妨害とは、その名の通り、「威力を用いて人の業務を妨害した」ときに成立する犯罪だ(刑法234条)。法定刑は3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金だ。
刑法に詳しい杉山大介弁護士は、この文脈における「威力」は幅広い範囲を持つ概念であると指摘する。
「(問題となっている行為や事態において)何らかの物理的なパワーが作用している場合や、相手に心理的圧迫を覚えさせるような場合には、『威力』に該当してきます。
そして、その『威力』が業務を混乱させる可能性があるなら、実際に混乱したか否かに関わらず、犯罪が成立してきます。

今回のケースでは、男らが10人以上で押しかけて、店を取り囲んで騒ぎ立てました。すると他のお客さんは店に入ることもできなくなりますから、男らは業務妨害性のある威力を用いた、といえるでしょう」(杉山弁護士)
一方で、男らが「これから毎日来て嫌がらせしてやるからな」「お前のSNSもXも全部知ってるからな、勘違いすんなよ」などの言葉を発したことは脅迫罪(刑法222条)にあたるのではないか、との声も見受けられる。
脅迫罪の法定刑は、2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金刑。杉山弁護士は、本件においては脅迫罪が成立する可能性もあると指摘しつつ、上記の言動は業務の混乱(営業の停止)を複数日に及ばせる一因にもなったことから、威力業務妨害罪の量刑を重くする一要素として評価する方が適切である、と述べる。
「威力業務妨害罪は、脅迫罪より重いとはいえ、決して法定刑が重い犯罪ではありません。拘禁刑に相当する評価を得るためには、相応な(罪の)重さが必要とされます」(杉山弁護士)

損害賠償請求は可能か

さて、被害の事実および警察に被害届を提出した旨を報告した公式Xアカウントの投稿には、「休業による損害の賠償を男らに請求すべきだ」という旨のリプライが複数並んでいた。
杉山弁護士によると、たしかに男らの行為は「不法行為」(民法709条)であるため店側には法律上の請求権が生じるだろうとしつつ、実際に請求する手続きを行うためには相手の住所などを把握する必要があることから、まずは刑事手続きを先行させるべきだという。
「金額面を考えるなら、営業停止によって失った売り上げを請求するのが、筋が良さそうには思います。
ただし、朝から徒党をくんで暴れている客層がきちんと賠償金を払うだけの原資を持っているかには留保が必要です。民事では、お金の無いところからは取れませんから。
基本的に刑事を先行させ、示談など、被害者がコストをかけずに賠償を受けられる機会を探っていく方が望ましいとは感じます」(杉山弁護士)


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