3月11日、いわき市(福島県)の5つの市立中学校で卒業生の祝いに赤飯の給食を用意したところ、同日午前に「震災のあった日に赤飯はおかしい」と電話があったことから、市教育委員会の判断で提供が取りやめられ、生徒たちには学校で備蓄した非常用の缶詰パンが出されていたことが、13日に明らかになった。そして、調理済みであった約2100食の赤飯は廃棄されてしまった。
本件について内田広之・いわき市長は14日にXでコメントを発表し、「約2100食分破棄は、もったいないと感じています」と述べている。
【給食で赤飯が破棄された旨の記事へのコメント】
本日の朝日新聞で、いわき市の3/11の給食にて、赤飯2100食分が破棄された旨の報道がありました。…
内田広之(いわき市長) (@uchida_iwaki) March 14, 2026
発覚から数日が経過しても、メディアやSNSでは本件について議論が起こり続けている。「被災者が多数出た地域で震災と同日に赤飯を出すのは不謹慎だ」といった声もあるが、多くの人は、たった1本のクレームを理由に、食べられる食品を大量廃棄へと追い込んだ市教委の判断に強い憤りを感じているようだ。
はたして、赤飯を廃棄するという判断は、法律に照らして妥当なものだったのか。

食品ロスは社会的な課題となっているが…

食べられる状態の食品が廃棄されてしまう「食品ロス」は、例年、恵方巻やクリスマスケーキで発生しており、社会的な課題となっている。また昨年はマクドナルドが「ちいかわ」や「ポケモンカード」とコラボしたハッピーセットで、転売目的の大量購入に伴う廃棄が問題視された。
農林水産省によると、2021年の日本の食品ロス量は約532万トンで、同年に食料支援機関である国連WFPが実施した食料支援量(約440万トン)の約1.2倍だった。「貧困や災害時の緊急支援など、世界の人々に対して支援される食品の量より、日本で廃棄されてしまう食品の量の方が多いのです」(農林水産省)
東日本大震災の際にも、十分な食料にアクセスできない被災者がいた一方で、避難所や自治体に届いた食料が配分の不備や情報不足により行き渡らず、放置されて無駄になった例があった。
さらに、食品の焼却にともない二酸化炭素を排出させるなど、食品ロスは気候変動や地球環境にも関係してくる。
上記のような問題を受けて、2019年、「食品ロスの削減を総合的に推進」することを目的とし、国・地方公共団体・事業者・国民の責務を定めた「食品ロスの削減の推進に関する法律」(食品ロス削減推進法)が施行された。
同法は「地方公共団体は、食品ロスの削減に関し、国及び他の地方公共団体との連携を図りつつ、その地域の特性に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する」と定めている(4条)。いわき市もまた、この「食品ロスを削減する責務」を負う当事者であるはずだ。

ただし、食品ロス削減推進法は罰則のない「枠組み法」だ。「責務」もあくまで努力義務に過ぎない。そのため、現場の判断においては、理念である食品ロスの削減よりも、目先のクレーム対応やリスク回避が優先されやすいという構造的な課題がある。

余った給食は「廃棄」が定められている

さらに、一度「提供しない」と決めた後の給食には、より厳格な「衛生管理」のルールが立ちはだかる。
そもそも、学校給食の提供や運営は「学校給食法」に基づいて実施されており、同法9条2項では文科省の定める「学校給食衛生管理基準」に沿って適切な衛生管理を努めるように求めている。
学校給食衛生管理基準は食中毒などの事故を防ぎ、児童生徒の健康を守ることを主たる目的としている。そして、「パン等残食の児童生徒の持ち帰りは、衛生上の見地から、禁止することが望ましい」「残品は、全てその日のうちに処分し、翌日に繰り越して使用しないこと」と定めている。
本件に限らず、生徒による食べ残しなど、学校給食では常になんらかの食品ロスが発生している。しかし、人の健康を守り、生命・身体の危険を回避することのほうがより重要なのは明らかであるため、残ったり余ったりした料理や食品を保管することや、学校外の施設に寄付することなどは許されなかったといえる。
つまり、いちど市教委が赤飯の提供を取りやめる判断をしてしまった時点で、約2100食の赤飯が廃棄されるのを防ぐことはできなかったのだ。
結局のところ、問題の核心は、「一度提供を止めれば廃棄するしかない」という厳しい運用ルールがありながら、クレームを優先して市内複数の中学校で給食を中止する判断をしてしまった、市教委の「事なかれ主義」にあると言えるだろう。
食品ロス削減推進法の前文には「食べることができる食品については、廃棄することなく、貧困、災害等により必要な食べ物を十分に入手することができない人々に提供することを含め、できるだけ食品として活用するようにしていくことが重要である」と記されている。
罰則がないとはいえ、震災の日にこそ、この理念を市教委は思い出せばよかったのかもしれない。


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