「この餃子って生ですよね?」
先日、飲食店で注文した餃子が「生焼け」だったとの投稿がXで広く拡散され、大きな話題となった。
肉料理の加熱不足は、一歩間違えれば重大な食中毒にもつながりかねない深刻な問題だ。
餃子のみならず、チャーシューやから揚げなど、これまでも同様のトラブルはSNSでたびたび報告されてきたが、いざ当事者になると「クレーマーと思われないか」「これくらいなら大丈夫か」と対応を迷ってしまう人も少なくないはず。
万が一、不十分な加熱状態で料理が出された場合、自分の身を守るためにどう行動するのが適切なのか。飲食業法務の専門家である石﨑冬貴弁護士に、その具体的な対処法を聞いた。

加熱不十分な肉料理の提供、法的問題は?

冒頭のX投稿で話題となった餃子に使用されている肉の種類は不明だが、一般的に餃子の餡には豚肉が使われることが多い。豚肉を加熱不十分な状態で提供することの法的リスクについて、石﨑弁護士は次のように解説する。
「2015年から、豚肉は中心部の温度を63℃で30分間以上加熱するか、75℃で1分間以上加熱殺菌するなどの方法で加熱殺菌しなければならないとされており(平成27年6月2日付け食安発0602第1号)、この基準に合わない食品は調理、販売等できません(食品衛生法13条2項)」
食品衛生法は国民の健康を守るためにあり、たとえ店側に悪意がなく「過失」による提供であったとしても、また具体的な健康被害が出ていなくとも、行政処分の対象となる。
「行政処分としては、当該食品(豚肉)の販売禁止を含めて措置命令や、営業許可自体に関する処分(営業停止、営業禁止、営業許可の取消し)がありますが、これらに従わなければさまざまな罰則があります。
また、提供により実際に健康被害が出れば、それだけで業務上過失致死傷(刑法211条)に問われる可能性があり、その法定刑は5年以下の拘禁または100万円以下の罰金です」(同前)
さらに、生焼けの肉と健康被害との間に因果関係が立証できれば、販売者は民事上の責任を負い、治療費などを負担する義務も生じる。

万が一、生焼けの肉料理を提供されたら…

本来は十分に加熱されているはずの肉料理が、中まで火が通っていない状態で運ばれてくる。前述したように、こうした事案はSNSでもたびたび報告されている。もし訪れた店で「これ、生じゃないか?」と違和感を抱き、その場で店員に伝えたのにもかかわらず適切な対応がなされなかった場合、どのように対処するべきか。
石﨑弁護士は、現場での対応として以下のステップを強調する。
①無理に食べず、証拠を残す
もっとも大切なのは、自分の健康を最優先することだ。少しでも疑問が残る場合は、無理に口にするべきではない。

「生焼けであることの証明のため、写真や動画、領収証などで証拠を保全します。仮に喫食してしまった場合は、速やかに近くの医療機関を受診してください。事後的な対応としては、所轄の保健所に相談するのも一つです」(石﨑弁護士)
②支払いトラブルを避けるための「話し合い」
「食べられない料理に代金は払えない」と考えるのは当然だが、感情的に店を出ることは避けるべきだ。
「喫食できない料理に対して対価を支払う必要はありませんが、一方的に宣言して立ち去れば、『食い逃げだ』などとトラブルになる可能性もあります。一度支払い、店での検討を踏まえて代金を返還してもらうのか、その場では支払わず、後で支払うのか、店側とよく話し合った上で対応を決めるべきです。
どうしても折り合いがつかない場合は、警察官に立ち会ってもらうのも一つの方法です」(石﨑弁護士)

注意したい「SNS投稿」のリスク

こうした事態に直面した際、ついスマホを手に取り、怒りのままにSNSへ投稿したくなるかもしれない。店側の対応が不誠実だと感じた場合はなおさらだろう。しかし、石﨑弁護士は「SNSの影響力の大きさ」を考慮すべきだと警鐘を鳴らす。
「客観的に法令に違反していることが分かればよいのですが、その場で判断できるケースは決して多くないはずです。
SNSは、その手軽さに反して影響力が大きく、昨今、その危険性も話題になっています。表現や意見は自由ですが、結果として誤情報であった場合のリスクはもちろん、正しい情報であっても過度な批判につながる可能性もあるため、投稿した場合の影響を考えて行うべきでしょう。どうしても投稿したい場合は、匿名性を確保して慎重に行うことをすすめます」
安易な拡散は、名誉毀損や営業妨害として逆に訴えられるリスクをはらんでいる。
まずは保健所への通報や店側との直接交渉など、適切な手段を講じることが、自分を守ることにもつながるといえるだろう。


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