和解条項には、千葉県が管轄する全児童相談所職員を対象とした「休憩時間の実態把握」「研修の実施」「適切な職員配置の実現」「未払い賃金が判明した場合の速やかな支払い」などが明記された。
飯島さんの弁護団によれば、児童相談所の労働環境改善を訴えて、管轄の県を相手取る訴訟は前例がないという。「労働基準法などに則れば当然のことだが、それを認めさせたことに大きな意義がある。また和解条項は、千葉県議会における承認決議を経たものであり、法的義務にとどまらず、政治的責任を伴う約束となっている」と弁護団はコメントした。(ライター・佐藤隼秀)
定員の2倍超の子どもを抱える現場
飯島さんは大学在学中に、ボランティアで携わっていた「子供の電話相談員」の経験から、児童相談所で働くことを志し、卒業後の2019年4月、千葉県に就職した。しかし、配属先の一時保護所(家庭での虐待などを理由に一時的に保護された児童が生活する施設)では、研修が十分に行われないまま業務が始まったという。
加えて、飯島さんの話によれば当時、入居児童の定員20名に対して、常時40名前後、多いときは60名近い子どもが保護されていた。また、原告の意見陳述書によると、就労した4か月間の時間外労働は、いずれも70時間を超えており、日勤の休憩や夜勤の仮眠もままならない状態での勤務が続き、夜勤では24時間以上の拘束も珍しくなかった。
そのうえ一時保護所は、児童が集団で生活する環境で安全を確保するため、施設内のルールが細かい。飯島さんが勤務していた一時保護所では「トイレは許可制」「起床時間の7時より前に起きても子どもを部屋から出してはいけない」「入浴時間は20分以内に済ませる」などのルールが設けられ、管理も負担となった。
こうして子どもを守るという使命感も、目の前の業務に追われていくうちに擦り減っていった。原告側の資料によると、入庁から4か月で、飯島さんはうつ病を発症し休職。一時は復職するも、退職に至ったという。
「判決」ではなく「和解」であることの意義
その後、飯島さんは2022年7月に、前述の通り千葉県を相手取って裁判に踏み切った。一審の千葉地裁判決は、児童相談所の労働環境について、「職員の心身の健康を損なう恐れがあり、安全配慮義務に違反する」と認定。そのうえで飯島さんの請求を一部認め、精神的苦痛に対する慰謝料と、休憩時間・仮眠時間分の未払い賃金相当額の合計約50万円の支払いを千葉県に命じた。
千葉県は一審判決後、即日控訴に踏み切ったものの、最終的には和解に着地した。
飯島さんの弁護団は、「判決」ではなく「和解」という形がとられ、飯島さん個人が救済を受けるにとどまらず、県全体の制度の改善につながる条項が盛り込まれた意義は大きいと振り返った。
「(仮に)判決であれば、飯島さん個人の権利回復は一部されるが、他の職員に対する影響力は事実上ない。千葉県としても、判決に従って、お金を払う解決の仕方もあったなかで、こちらから求めた改善の条項に了解をもらえた。一定程度、問題意識を持っていただき、改善していく意欲があるとプラスに評価している」
児童相談所で適切な人員配置が行われない状況が常態化すれば、職員の離職が進み、保護されるべき子どもへの支援も十分に行き届かなくなる。飯島さんにとっても、こうした構造的な課題の是正を求めていたため、和解による解決は望ましいと振り返る。
「訴訟を提起するにあたり、児童相談所の労働環境を明らかにすることで、新しく児童相談所に勤めたいと思っている方が躊躇(ためら)ってしまうのではという葛藤もあった。
しかし、今回の和解が成立し、千葉県が和解条項に沿って労働環境の改善などに前向きに取り組むことで、新しく勤めたいと思う千葉県の職員の方々が集まり、これまで届きにくかった子どもたちのケアがよりよく届く状況に近づいているのではと感じている」(飯島さん)
千葉県による児童相談所の環境改善や体制強化は「道半ば」
千葉県は、2020年度から23年度にかけて、児童相談所の職員を累計261名増員したと公表。26年度内には、県内にある6つの児童相談所に加え、印旛・松戸の2か所に児童相談所を新設し、柏市と船橋市も独自の児相を新設する予定だ。加えて、業務のICT化や児童への学習指導などの外部委託も始め、職員の負担を減らす環境を整えている。一方で、千葉県が管轄する児童相談所の一時保護所における、2022年度の平均入所率は125.0%と、全国の都道府県で最も高い数値を記録。県が25年3月に実施した職員への調査によれば、昼休憩を完全に取得できた職員は平均で64.9%にとどまった。
状況改善への動きが見られる一方で、児童虐待相談件数も高止まりが続いており、職員の確保や離職防止の取り組みは依然として道半ばと言える。
今後は、今回の和解条項が、実際にどこまで履行されるのかが焦点となる。弁護団は「(和解成立は)ゴールではなく、スタート地点に過ぎない」と語っており、和解条項が履行されるまで注視していくとした。
■佐藤隼秀
1995年生まれ。大学卒業後、競馬関係の編集部に勤め、その後フリーランスに。ウェブメディアを中心に、人物ルポや経済系の記事を多く執筆。趣味は競馬、飲み歩き、読書。

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