北海道砂川市の要請でヒグマを駆除した際、建物への危険があったとして猟銃の所持許可を取り消された北海道猟友会砂川支部長、池上治男さん(77)が道に処分取り消しを求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第3小法廷(林道晴裁判長)は27日、道の処分を適法とした二審・札幌高裁判決を破棄し、処分の取り消しを命じる判決を言い渡した。
最高裁が自ら結論を出す「破棄自判」により、池上さんの逆転勝訴が確定した。
これにより、7年近くに及んだ法廷闘争は終結し、池上さんに猟銃が返還されることとなる。

「公益性」の考慮不足を指摘

判決で第3小法廷は、池上さんが「鳥獣被害対策実施隊員」という非常勤公務員の立場で、自治体や警察官が立ち会う中、住民の安全を守るために発砲したという「公益的側面」を重く見た。
二審判決が「公益活動に従事したことと処分の適法性は別」と断じた点について、判決は、重大な不利益処分を行う際の裁量権の行使において、当然考慮すべき事項を考慮していない「考慮不尽」の違法があると指摘した。

「建物の危険」と「人の危険」の混同を批判

また、処分理由が「建物への弾丸到達の危険」であったにもかかわらず、二審が「共猟者らへの抽象的な危険(跳弾など)」を強調して処分の正当性を裏付けた点についても、他事考慮(考慮すべきでない事項を考慮したこと)にあたると判断した。
鳥獣保護管理法が「建物」と「人」を明確に区別して規定している趣旨を重視し、行政側の主張を退けた形だ。

社会への影響と「自判」の意義

池上さんは現在77歳と高齢であり、猟銃の取り消しから既に7年近くが経過している。最高裁は、事実関係は既に出揃っており、高裁に差し戻して審理を継続させる必要はないとして、自ら処分を取り消す判断を下した。
この訴訟は、ヒグマ被害が深刻化する中で「要請に応じたハンターが責任を問われ、銃を奪われる」という事態であり、全国の猟友会は猛反発。自治体の駆除要請を拒否する動きにまで発展していた。
池上さんが支部長を務める道猟友会砂川支部は、処分があった19年以降、発砲によるクマ駆除を拒否。砂川市内ではこの間、主に箱わなで駆除に対応してきた。
今回の確定判決は、公益活動に従事するハンターの地位と法的保護を確立する画期的な判断となった。

昨年9月には社会問題化したクマ問題への対策として“緊急銃猟制度”が施行された。条件を満たした場合に限り、市町村長の判断により、市街地でも銃器を使用した捕獲等が可能になる制度で、その円滑な実行を見据えても、極めて妥当な判決といえる。

「ハンター目線に立ったこれ以上ない判決」

その手にようやく猟銃を取り戻した池上さんは「ハンター目線に立ち、極めて常識的に判断していただき、これ以上ないような判決だったと思います。最高裁、最高です。
銃は返ってきますが、銃刀法の問題や鳥獣保護の問題について、もっとよく考えてもらいたいなということだけは申し上げておきたいと思います。
長い戦いではありましたが、そのプロセスでクマの危険をしっかりと周知もいただけ、ある意味で有意義な戦いであったということが言えると思います」
弁護団のひとりで池上さんを支え続けた中村憲昭弁護士は「一審は勝ったものの、高裁で逆転してしまったということで、非常に申し訳なく思っております。だから、ほっとしたというのが率直な感想です。
今回の判決は、我々がずっと主張してきた通り、ハンターの皆さんにとって安心して発砲ができる一つの指標にはなるとは思います」と満面の笑みで話した。
行政学者で、行政法に精通する平裕介弁護士は「常識にも叶う素晴らしい判決だと思います。この国のことを大局的に考えて、ハンターのなり手が委縮しないよう制度を守るんだという、最高裁判所の意気込みを感じました」と判決を高く評価した。


編集部おすすめ