航空自衛隊のT-4練習機が愛知県犬山市の入鹿池に墜落した事故について、専門家による分析を交え、現時点で判明している情報をまとめます。
T-4練習機は離陸からわずか2分後に墜落
事故機は14日午後3時6分に小牧基地を離陸し、そのわずか2分後の午後3時8分、愛知県犬山市の入鹿池付近でレーダーから消失し、墜落しました。入鹿池のすぐ近くには博物館明治村があります。
事故当日の飛行計画では、小牧基地を出発後、北へ向かい、入鹿池付近で東に旋回、知多半島を通過して太平洋へ出る予定でした。そこからさらに紀伊半島、四国の先端を経由し、宮崎の基地に到着する計画で、直線距離で約600km、実際の飛行距離はそれを上回ると考えられます。この飛行計画から、事故機にはほぼ満タンの燃料が搭載されていたと推測されます。

T-4練習機は2人乗りの純国産機であり、自衛隊内で非常に高い信頼を得ている機体です。製造から36年が経過していることは、その信頼性の高さを裏付けると言えるでしょう。練習機としてだけでなく、任務にも使用されており、今回はF-15戦闘機に随行する任務中でした。

この機体は航空自衛隊のアクロバット飛行チーム「ブルーインパルス」でも使用されており、高度な飛行能力を有しています。エンジンは2基搭載されており、1基が故障した場合でも飛行を継続できる設計です。しかし、2基とも故障した場合は、いわば紙飛行機のような状態となり、操縦士の技術のみが頼りになるとされています。
搭乗していたのはベテランと中堅パイロット
事故機の前席には網谷奨太2等空尉、後席には井岡拓路1等空尉が搭乗していました。井岡1等空尉は飛行時間約1170時間のベテランパイロットであり、網谷2等空尉の飛行時間は約480時間で、初級と中堅の中間レベルと見られています。

航空自衛隊の階級は全16階級で構成されており、1等空尉と2等空尉はいずれも幹部に属する階級です。

今回の事故原因について、現時点で考えられる要因を目撃証言と合わせて分析します。元航空自衛隊トップの河野克俊氏は、「機体を方向転換させて池に落としたように見えた」という目撃証言に対し、「事故を起こさないことが最優先ではあるが、有事の際には市街地を避けて墜落させる判断もあり得る。今回のケースでもその可能性は否定できない」と指摘しました。

一方、「くるくる回りながら機首から突っ込んだ」という別の目撃証言については、「機体を制御できないほどの緊急事態に陥り、入鹿池を選択する余裕もなかった可能性も考えられる」と述べています。この点については、専門家の間でも意見が分かれています。
実際にこのあたりを飛行している、飛行時間8000時間のベテランパイロットの方に聞くと、入鹿池は離れてみるととても小さいが、近くでみると大きい。あえてここを選択した可能性もあると話していました。
今回の事故機にはフライトレコーダーが搭載されていなかったため、事故原因の特定は非常に困難になるということです。
