ニホンウナギがワシントン条約の規制対象になる動きが…。もしそうなった場合、
どのような影響が考えられるのか。

ウナギの生態に詳しい中央大学の海部健三教授に聞きました。

専門家「ウナギの流通量はかなり減少か」 もしニホンウナギが...の画像はこちら >>

流通している7割~8割が規制対象に?

(中央大学 海部健三教授)
「現在日本で流通しているウナギの7割~8割が規制の対象になると考えています。もし輸出の規制がかかって輸出されないということになれば、日本においてウナギの流通量はかなり減少するだろうと考えられます」

海部教授によると、現在日本で流通するウナギの大半は中国を中心とする海外からの輸入に依存していて、ワシントン条約で取引の規制対象になると、その影響は計り知れないといいます。

専門家「ウナギの流通量はかなり減少か」  もしニホンウナギがワシントン条約の規制対象になったら… 動物保護の観点では「キリン」などと同じ扱い
CBC

ワシントン条約では規制の内容が細かく分類されています。

一番厳しいのは、商業目的の国際取引自体の禁止。そして二番目に厳しいのが商業取引の禁止はありませんが、海外から輸入するためには条件が課されるというもの。今回、ニホンウナギについてEUが提案しているのがこれです。

(海部教授)
「その生き物を輸出するためには、その生き物が生息している国の輸出許可が必要になります。日本の場合には(ウナギを)中国から輸入する場合が多いのですが、中国が輸出許可を出すかどうかということが次の問題になってきます」

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生きたウナギは約9割が中国からの輸入

日本におけるウナギの輸入元を見てみると、生きたウナギは約9割、加工品にいたっては、ほぼ100%が中国からの輸入です。もし、その中国が輸出許可を出さなかった場合どうなってしまうのでしょうか?

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(大石邦彦アンカーマン)
「日本のウナギのさまざまな団体、ウナギ屋さんも含めて(国際取引が)規制されてしまったら商売あがったりだと思うんです。日本のウナギ業界に多大な影響が出ると思いますが?」

(海部教授)
「日本が輸入しているウナギが規制の対象になり、本当に輸入ができなくなった状態。つまり、いくつかのタラレバが重なった場合という前提になりますけれども、もちろん影響は出てくるのだと思います。それで影響が出ないと考える方が少々難しいことだろうと。例えば安く提供されているウナギが流通しにくくなるようなことが起こってもおかしくないのではないかと思います」

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輸入に依存する日本のウナギ業界。

中国が日本に対し輸出許可を出す可能性について、海部教授は。

(海部教授)
「輸出許可を出すかどうかということは、日本政府が決められることではなく、原産国が決めることなので、非常にわからない部分が多いということになります」

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動物保護の観点でいうと…キリンと同じ扱い

(若狭敬一アナウンサー)
「ワシントン条約での扱い次第で、今後ウナギはどうなっていくんでしょうか」

(大石)
「ウナギって高いイメージがありますよね。ワシントン条約で規制が強まれば、輸入量が減って価格がもっと高くなる可能性も十分考えられます。ではそのワシントン条約を紐解いていきましょう」

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「ワシントン条約は規制の強弱によってこの3つの段階に分類されます。今回、ウナギは2番目に入る可能性が指摘されています。商業目的の貿易禁止まではいかないんですが、動物保護の観点でいうとキリンなどと同じ扱いということになります。

実はヨーロッパウナギは、もう2番目に分類されているんです。ただニホンウナギなど他のウナギの全種類はここに入っていなかったんですが、入る可能性があるんです。そうなると科学的助言などに基づく輸出許可証が必要になるので、相手国の許可証がないと輸入できなくなるということになります」

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輸入に頼る日本のウナギ

(大石)
「世界2位の消費国、日本のウナギの供給量を見ていきましょう。過去70年ぐらいの歴史なんでが、グラフの青が国内供給量、赤は輸入量なんですが、結構輸入に頼っていると思います。ワシントン条約の規制によって輸入量が減ってしまったら、国内消費にも大打撃を与えるというのは必至になります」

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中国のウナギの稚魚は「北中米産」が半分以上

(若狭)
「中国が日本にこの輸出許可証を出してくれないと困る、ということになってくるわけですね」

(大石)
「ただウナギの生態の専門家、中央大学の海部教授は中国が許可証を出さなくなる可能性もあるとみています。中国から日本に輸入されているウナギの半分以上は、北中米…カナダとかハイチやアメリカ合衆国などで稚魚のシラスウナギをとって、それが中国に運ばれて養殖され、日本はそれを多く輸入しています」

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「そうなると、それぞれの原産国であるハイチやアメリカ合衆国やカナダが輸出許可を出すかどうかが問題になってきます」

(大石)
「中国だけの問題ではないということなんですが、中国は世界最大のウナギ消費国になります。

愛知県内の関係者を取材したんですが『中国には日本に輸出せずに市場を独占したいと考える業者も出てくるのではないか』という懸念を持っています」

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「ニホンウナギはそんなに減っているのか」

(若狭)
「中国の出方が非常に気になるんですが、一方で小泉大臣も話していましたが、そもそもウナギはそんなに少なくなっているのか、このワシントン条約の強弱の2番目に入る、その基準ってどうなのというところも一つ疑問です」

(大石)
「水産庁に取材しました。ニホンウナギについては『資源は回復しつつあって、絶滅に近い状況ではない。条約の採決基準を満たしていない』と」

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「一方で専門家は『資源は減っている。管理する必要があるんです』という指摘もあって、実は国内でも違いを訴える人がいます」

ワシントン条約 今後の日程 

(大石)
「では、今後どうなっていくのか、日程を見てみましょう。11月下旬から12月にかけてウズベキスタンでワシントン条約の締約国会議が開催されます。ここで3分の2以上の賛成があれば、規制強化ということになるんです」

「ただ、すぐに輸出が許可制になるわけではなくて、実は1年半の猶予はあるということです。日本のウナギ業界全体への影響が計り知れないだけに、関係者は不安の声を上げています」

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