東海豪雨からことしで25年。「想定外の豪雨」が相次ぐいま、東海豪雨で被災した地域で進む備えとは。
(視聴者提供の動画)
「洪水だ、床上浸水じゃない?玄関まで水がいっている」
2000年9月に起きた「東海豪雨」。街は濁った水の中に。都市型水害の衝撃を与えました。

東海豪雨で大きな被害を受けた、愛知県清洲市。
(桜沢信司気象予報士)
「清須市古城の交差点です。いまは車通りが多い普通の交差点ですが、25年前の東海豪雨の際には、このあたりが船着き場になり、一面が海のようになっていました」


「消えないね、あの記憶だけは」
名古屋で1日に428ミリもの大雨をもたらしたのは、当時あまり馴染みのなかった「線状降水帯」でした。
愛知県を中心に死者10人、浸水は約7万棟に。増水した新川の堤防が決壊したのは、古城交差点から1キロほど北の場所でした。
当時、交差点の近くのうどん店で出会った、牛古猛さん。

(めん処 恵比寿・牛古猛さん 2000年9月)
「あっという間で、何も出す余裕がなかった」
街や店は復旧しても、あの日の記憶が薄れることはありません。
8月末、再び牛古さんの元を訪れました。
(牛古さん)
Q.25年経っても?
「消えないね、あの記憶だけは」
Q.雨が降ると怖い?
「やっぱり怖い、大雨注意報がでたら、どれだけ降るかわからないもん。あんなのは二度と嫌だ」

決壊すると…名古屋駅は最大3m浸水想定
堤防が決壊した新川の水は勢いよく街の中に。新川は江戸時代に作られた人工の河川で、庄内川が増水すると、その水を流す構造をもっています。
そのため、庄内川の洪水対策が集中的に進められてきました。いまだに工事が続く場所には、地形の特徴が。

(名古屋大学 田代喬特任教授)
「昔は橋を渡すときにできるだけ効率のいいように、川幅が狭い、谷幅が狭まっているところを選んで橋をかけてきた。この辺りに橋が集中しているということは、それだけ川幅が狭まっている、いわゆる狭窄部(きょうさくぶ)になっている」
清須市と名古屋市にかかる県道、JR、新幹線の3本の橋。当時、庄内川は橋のすぐ近くまで水位が上がっていました。


実はこの場所は名古屋駅にも近く、左岸が決壊すると、名古屋駅は最大で3m浸水する想定になっています。
小学校のグラインドにプール約2杯分の雨水が貯められる?
(庄内川河川事務所 山田哲士副所長)
「元々、県道枇杷島橋がここに架かっていた。仮設橋という橋を架け替えて、交通はこちらを通ってもらっている」

2021年からは橋の架け替え工事が始まりました。工事が終わると川幅は40m広がるほか、すでに70センチほど下がった水位は、さらに下がる見通しです。こうした中、新たな備えは清須市内の小学校にも。
(清須市 危機管理部・飯田英晴部長)
「ここがグラウンドの表面だったけど、土を掘り下げることによって、水がたまるように」

古城交差点からすぐ近くのこの小学校の校庭は2018年、800立方メートル=小学校のプール約2杯分の雨水が貯められるように整備されました。雨水を外に逃がさず「川に負担をかけない」対策です。
(名古屋大学 田代喬特任教授)
「800立方メートルというのは、そんなに多くはないと思うが、こういう場所が何か所もあれば、川に入ってくる水が少なくなったり(水が)入ってくるスピードが遅くなったり、川の水位を下げるのに役立つ」

「避難所」が浸水のリスクも…
さらに体育館には…
(清須市 危機管理部・飯田英晴部長)
Q.体育館についてるのって珍しい?
「愛知県内でもかなり早い。避難所生活の環境の改善を図れるということで、早期に設置した」
清須市はおととし、全小中学校の体育館にエアコンを設置。

しかし、市内の避難所は、容量が市民の30%しかなく、この体育館のように、いまだ浸水想定域にあるところも。
(名古屋大学 田代喬特任教授)
Q.避難場所が浸水することもある?
「災害には、いろいろな種類があるので、水害のときには適さない避難場所もある」
「何か起こってからやろうとしても間に合わない」
水害のリスクを抱えた地域では、住民も動き始めています。
庄内川に接する砂入地区に住む、大嶋義彦さん。自主防災会の本部長を務める大嶋さんは、近所のつながりが薄くなると災害時の助け合いも難しくなると感じ、地域のイベントのたびに声をかけ、防災に関わる人を増やしてきました。

(大嶋義彦さん)
「難しいことばかり言っても、なかなか人は集まらないので、お祭りとかをやって防災につなげると、もし何かあったときに「共助」の部分で助け合いができる」
大嶋さんはいま、避難に時間がかかる人をリストアップし市外への避難も含め、確実に逃がせるよう地域で連携して「個別避難計画」づくりを進めています。

(大嶋さん)
「自分の命は自分で守る選択をしておいて、自分で逃げられない人たちを助ける、共助の部分は今後も必要かなと」
線状降水帯は、先月だけで9回発生しました。東海豪雨から25年、雨の降り方は確実に変わっています。
(名古屋大学 田代さん)
「この25年間、同じような、あるいはそれ以上の水害・洪水が起こらなかったのは、たまたまでしかないと思う。何か起こってからやろうとしても間に合わない。どういう行動を取れるのか、どういう対策をあらかじめすることによって、被害を減らせるのかということを常日頃から考えいただきたい」
「想定外」の豪雨に見舞われても、確実に命を守る。個人、そして地域の備えが、改めて問われています。

