新型コロナワクチン接種後に息子を亡くした、2組の遺族の思いを聞きました。因果関係はわからないとしながらも、救済を認める国の矛盾に憤りも。
あれから3年「時間は止まったまま」
東京都内に住む50代の女性。3年前の4月、当時27歳の長男を亡くしました。
(長男を亡くした女性)
「信じられないというか受け入れられないというか、受け入れたくないというか、3年以上たっているけれども時間が止まったまま」

健康上の不安はなかった長男。前の年に結婚し、妻と2人暮らしでしたが、3回目のワクチンを打った翌日でした。
(長男を亡くした女性)
「熱が40度台になって苦しいとLINEが妻にあった。帰宅したところ、リビングであおむけになって倒れていて反応のない状態だった」
救急搬送された病院で死亡を確認。肺からの大量の出血や、心不全などが死因とされました。

医師「死亡とワクチンに因果関係ある」 国は「評価不能」
(女性)
「診療録の表紙を見ただけで、胸がどきどきして具合が悪くなる。救急病院の診断の医師も言っていたが、若い人が突然倒れて出血が止まらない…このような症例は見たことがないと。『ワクチンとしか考えられない』と私たち家族の前で説明した」
医師は、死亡とワクチンには因果関係があると国に報告を上げましたが、厚生労働省の結論は「評価不能」を意味するγ(ガンマ)。「分からない」というものでした。

(大石)
「臨床医が診た意見が覆ってしまう国の今の制度をどう思いますか」
(女性)
「審議会は全く機能していない。評価不能という名の『不明』。『不明』というのはまだ詳しく調べていないという状態なのに、それを『安全性に懸念はない』と発表してしまう。

自然が好きだった息子。国の救済認定は受けられましたが、母親は健康被害に向き合わない国の姿勢に憤りを感じ、去年8月に始まった国家賠償請求の裁判に、原告として参加することを決めました。
(大石)
「今、まさに裁判中だが、息子さんにどんな報告をしたい?」
(女性)
「被害者が正しい主張をしているのだと認めてもらって、そして国も過ちを認めて、謝罪してくれたと、『ちゃんと認められたよ』と伝えたい」

ワクチン接種3日後の朝「体を揺らしても反応がなかった」
ワクチン接種後、家族を亡くした人は他にも。
(大石)
「優しそうな表情の息子さんですね」
(息子を亡くした山下一代さん)
「良い子だったんですよ」
神奈川県に住む山下洋三さん・一代さん夫妻。4年前の9月、29歳の息子を亡くしました。ワクチンを接種した3日後の朝でした。


(一代さん)
「体をさすって揺らしても反応がなかったが、亡くなっているなんて本当に全く思っていないので『どうしたの どうしたの』って。ふと気づいたら体がちょっと冷たかった。温かくない。あーどうしちゃったんだろうと」
(息子を亡くした山下洋三さん)
「私はすごく動揺して(救急隊員に)『どうして早く手当てしないんですか』と言ったら『ごめんなさい。もう手遅れなんですよ』と言われ、その時初めて事態が分かった」


「ワクチンが原因というのは99.9%ない」と言われたが…
死因は、虚血性心疾患。長男は高血圧ではあったものの、心臓に全く異常はありませんでした。
検死を行った医師に、ワクチンとの関連を聞きましたが…
(一代さん)
「『コロナワクチンが原因というのは、99.9%ない』と言われ、ワクチンは関係ないと言われた。『だから国への疑い報告も書かない』と」

別の医師に頼んで、国へ副反応報告をあげてもらうと結果はやはり「γ」。
(大石)
「認定疾病名が『心臓突然死』。予防接種の種類が『新型コロナワクチン』。理由の欄には『接種後の経過を考慮すると、息子さんが受けた当該予防接種も原因となった可能性が否定できない』とある」

ワクチンが原因…“殺された”と受け取ってしまった
(一代さん)
「ワクチンが原因だとわかって、ショックを受けた。病気だったらまだ息子の死を納得できるけれど、ワクチンが原因だということは、“殺された”と受け取ってしまって、いたたまれなかった。私がもっとちゃんとしていれば、ワクチンを受けなくて、そうすれば生きていたのかなと考えると、かえって認定されたことで悔しさもあって」

国を相手取った裁判の原告に加わった山下さん夫妻。その思いは…
(洋三さん)
「我々からすれば『懸念がない』なんて考えられない。1人でも2人でも死んだら、それは犠牲者が出ているわけですから『懸念がある』と思う」

(一代さん)
「(裁判を)やる意味は何だろうと考えてしまうが、ただ何もしないと息子が亡くなったことが闇に葬られて風化してしまうことが許せない」

「クヨクヨしてたら息子が『何やってんだ』と思うなと」
ご両親の手元には、大学時代の友人が作った息子さんの写真アルバムがありました。
(大石)「優しそうな息子さんですね」
(一代さん)「はい。息子はとても前向きだったので、私がこんなにクヨクヨしている姿を見たら『何やってんだ』と思うなと」

夫婦は長年息子と暮らした埼玉の実家を離れ、神奈川に移り住んでいます。
母親の一代さんは、息子の形見となったベースの練習を始めました。
(一代さん)
「『(うまく演奏が)できないんだよ』とか『難しいのによくやっていたね』とか(心で話しかけながら)やっています」

国を訴えた裁判の第二次訴訟
9月8日。2組の遺族は東京地裁を訪れていました。
去年始まった第一次訴訟の13人から、原告は51人に増えました。
(長男を亡くした東京都内の女性)
「直ちに接種を中止して、被害の実態を検証して、謝罪をすることだと思います」
国への請求は“薬害”と認めて謝罪することと、総額3億8000万円余りの損害賠償。国は応じることなく棄却を求めていて、長い訴訟が予想されます。
