名古屋城の天守閣やお堀を支える石垣は、国内屈指の規模を誇り、今その修復作業が行われています。20年以上の長い期間がかかる作業の背景には、400年前のスゴ技が。



吊り上げられる巨大な石。

400年の歴史で“異変”が… 名古屋城の石垣修復はまるで“巨...の画像はこちら >>

いま名古屋城の一角で、石垣の修復工事が進んでいます。

2002年から20年以上かけて行われている作業。その大変さは、石垣の規模と築城当時の技術の高さを表しています。

400年の歴史で“異変”が… 名古屋城の石垣修復はまるで“巨大石のパズル” 1日に積み直せる数はわずか3個 最新の地震対策も
CBC

石垣に使われた石は推定20万個以上

400年の歴史で“異変”が… 名古屋城の石垣修復はまるで“巨大石のパズル” 1日に積み直せる数はわずか3個 最新の地震対策も
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当時の様子を描いた屏風絵。

名古屋城が作られたのは1610年。石垣部分は、総延長8.2キロ。面積6万5000平方メートルで使われた石は、推定20万個以上と国内随一の規模。

現在修復が行われているのは、天守閣の東側。元は馬や兵士が出撃の準備をした「本丸搦手馬出(ほんまるからめてうまだし)」と呼ばれる場所です。

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長い年月が経ち石垣に“異変”が…

修復のきっかけは「ある異変」でした。

(名古屋城総合事務所 保存整備課・小村拓也課長補佐)
「石垣の一部が膨らんでしまっていて、その膨らみを除去するため」

2004年頃に撮影された写真を見てみると「はらみ出し」と呼ばれる状態で、長年の風雨や元々の重みで石垣の下が押し出されています。

石垣は、表面の「築石」、その後ろでクッションや水はけの役割をする「栗石」、さらに「盛り土」の三層構造。そのバランスが長い年月で崩れていたのです。

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番号を振って解体→同じ形に積み直す

(小村課長補佐)
「石垣を全て撤去して、それを再度同じ形に積み直すという事業」

対象となる石は、この場所だけで実に4393個。バラバラの形の巨石を積み直すため、全ての石に番号を振って保存状態を色分けし、一度すべて解体。それを積み直しているのです。

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(和田石材建設 和田宇司社長)
「ここに置いてあるものは、基本的に全部元々あった石です」

築石を設置するには、クレーンで石を吊り上げますが、その際一本のベルトのみで支えます。一見不安定にも見えますがこれには理由が。

(和田社長)
「1本でつるのは、石垣の石は基本的に形が決まった物ではないので、2本でつるとバランスが悪くなる」

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石垣修復はまるで“巨大石のパズル”

工事にあたるのは、石垣積みの技術を今に伝える大阪の和田石材建設。職人の勘と経験で、パズルのピースをはめるように石を積んでいきます。

(和田社長)
「これから一旦後ろを仮にとめて、帯の位置を動かしながら微調整します」

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そして隙間に「栗石」を詰め込み、微調整を繰り返して、石の場所を元通りにします。

(和田社長)
「例えばこの石が、本当はもうちょっと下げないといけないとなると、たぶん2段か3段ぐらいまで下にさげて修正しないといけなくなるので、そうなると結局6個ぐらい(作業が)戻ることになるので」

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1日に積み直せる石垣は「平均3個」

元々全体でバランスをとって積み上げられた石垣。やり直しながら少しづつ進められています。

(和田社長)
「平均したら1日3個ぐらいずつ進んでいくかなと」

1日平均わずか3個を4000個あまり。気の遠くなる作業ですが…

(和田社長)
「この場所にあったものを、この場所に戻しているだけです」

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当時の石だけでは修復できないことも…

国の文化財である石垣を修復する大前提は「元通り」にすることですが、400年の歳月にさらされた石の中には、割れているものもあり、接着剤などで修理を行いますが、新しい石に交換する場合も。



(和田社長)
「この51番、98番は元々あった石で、これは場所を変えられないので、この石を基準に真ん中を新しい石材で成型して作る」

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当時はなかった“最新技術”で地震対策も

さらに今回、400年前にはなかった最新技術も投入されています。石の間に挟み込まれているのは、「ジオグリッド」と呼ばれる樹脂製のネット。石がずれにくくなるため、南海トラフ地震への対策となります。見た目は、作られた当時のまま。中は、最新技術でより丈夫に。これが、令和の石垣修復です。

400年の歴史で“異変”が… 名古屋城の石垣修復はまるで“巨大石のパズル” 1日に積み直せる数はわずか3個 最新の地震対策も
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(名古屋城調査研究センター 木村有作学芸員)
「昔の石垣と遜色ないように、どんどん積まれていく。こんなすごい石垣を作ってしまうことに感動する。そんな仕事です」

工事の完了予定は、来年度末の予定。20年の歳月をかけた大工事が終わるのも、もうすぐです。

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400年前 わずか半年で作り上げられた名古屋城の石垣

(和田社長)
「せっかく400年前に建ててもらったお城の石垣というものを、僕らの時代でなくなってしまうのはもったいないので、次の世代に繋げられるように、補修や保全などができればいいかなと」

実は400年前の築城の際、人力だけでわずか半年で作り上げられた、名古屋城の石垣。進む修復作業から、当時の技術の高さとそれを未来に残していく難しさが改めて浮かび上がります。

400年の歴史で“異変”が… 名古屋城の石垣修復はまるで“巨大石のパズル” 1日に積み直せる数はわずか3個 最新の地震対策も
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CBCテレビ「newsX」2025年12月9日放送より

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