虫歯や老化で失った歯を補うため、入れ歯などを作る「歯科技工士」という仕事があります。その技術は極めて高度で、今後ますます必要になりますが、大きな課題が。

現場を取材しました。

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生きることを支えている「歯」。それを作り出す職人の技があります。

(歯科技工士・山本健一さん)
「先生が患者さんに入れた瞬間にそのままシュッといけるのがベスト。それを目指す」

入れ歯やインプラントなどを製作する歯科技工士。厚生労働省によると、65歳以上の半数以上が入れ歯やかぶせ物をつけていて、超高齢化が進む中…まさになくてはならない仕事となっていますが、今大きな曲がり角に差し掛かっています。

“入れ歯難民”に?減り続ける歯科技工士 現役の約半数が50歳以上 デジタル普及しても…かみ合わせはやっぱり“人間の手”
CBC

「スムーズに動く歯を作る」

12月中旬、愛知県東海市の歯科医院。歯科医と共に患者の状態を確認していたのは、歯科技工士の山本健一さん(54)。この道34年のベテランです。

患者は72歳の男性。上の歯のインプラント4本と金歯2本を作ります。

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診断や削るなどの治療は歯科医の仕事ですが、普通の傷口のように再生することのない歯。なくなった部分を補うことは、山本さんたち歯科技工士にしかできません。

自分の工房で歯の模型をスキャン。その立体データがモニター上に浮かびます。

(山本さん)
「内側のところがこんな風に膨れてしまっていたら、違和感を感じて気持ち悪い。こういうものがないように、スムーズに動く歯を作るというのが肝になる」

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「歯に色を塗ると0.0何ミクロンの厚みが」

歯型の3Dデータをモニター内で確認しながら、欠損部分をどう作っていくかデザインしていきます。

(山本さん)
「昔はこれが手作業だったので、いまの3~4倍の時間をかけてやっていた。デジタルになり、すごく短くやりやすくなり、なおかついい物ができるようになった」

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4年前に導入したこのシステム。噛み合わせなども画面上で確認できるようになり、全て手作業だった以前に比べ作業効率は格段に上がったと言います。設計したものを元に別の業者に外注してベースを作ってもらう分業が、この業界でも進んでいます。

数日後、出来上がったベースを本格的に削っていきます。作業は極めて慎重に。ほんの少しの削りすぎも削り残しも許されません。

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(山本さん)
「あまりこれ(削り目)を入れすぎると傷になって、そこからヒビが入るかもしれないので、本当に慎重に慎重にしないと」

「口の中って例えば髪の毛1本入っても気になる。そこまで認識できるので。

歯に色を塗ったり、コーティングしたりすると、0.0何ミクロンの厚みが生まれる。そこまで考えて削る」

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なるべくリアルに…色づけも手作業

次は仕上げ。いかに自然な歯に見せるかの色づけです。ほかの歯の写真と見比べながら、24種類ほどの色を使い分け、自然な色合いを追求します。薄く塗料が載っただけで

その厚みが違和感につながるためそこも調整しながらの作業です。800度で焼き上げ、磨いて完成です。型取りから12日後、4本のインプラント用のかぶせ物と、2本の金歯が完成しました。

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装着した男性患者は…

(あい歯科・藍浩之院長)「いかが?」
(患者)「見違えるようになったなあ。食べちゃいかんようなものある?」
(藍院長)「スルメ」
(患者)「スルメだめ?」
(藍院長)「ダメっていうかあんまりよくないかなあ」
(患者)「スルメ食べたいんだよなあ。以前はガムを食べるのもなかなか(苦労したし)固い物がかめなかった。これでしっかりかめるようになる。やっぱり、しっかりかめることが健康につながる」

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(患者)
Q.いい状態で正月を過ごせる?
「そうですね。いい正月を迎えられると思う」
Q.新しい歯で一番最初に食べたいものは?
「一番最初…スルメだなぁ(笑)(歯科技工士は)縁の下の力持ち。一番大事な役割」

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(山本さん)
Q.患者さん、笑顔だったが
「本当にその瞬間、僕たちが一番ほしいのは。

僕たちが作っているものって作りものだが、体の一部。毎日、毎日食べられる歯を作っている。それが誇り」

歯科技工士の現役世代は約半数が50歳以上

ミクロン単位の精度と芸術的なセンスの両方を求められる歯科技工士。しかしいま、担い手不足が深刻化しています。厚生労働省によると、歯科技工士はこの20年あまりで5000人以上減少。

現役世代も約半数が50歳以上と超高齢化。一方目指す人は減り続け、多かった時の4分の1に。愛知県内の養成学校も定員割れが相次いでいます。

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(愛知県歯科技工士会・鈴木正隆会長)
「人が足りないから値上げをして、人に経費を回すとか、そういうことが一切できない保険点数の中にいるため」

保険診療内の料金は細かく決まっているため、大変な割に「低賃金」「長時間労働」のイメージが定着し、ますます担い手が減っているといいます。

(鈴木会長)
「(入れ歯は)今まで1か月でなんとかしたっていうことが、今はもうできない。2か月はかかるんじゃないかなと感じる」
Q.ここから先はもう少しかかる可能性も?
「そうですね。特に入れ歯をやってくれる技工所を探している医師がたくさんいる」

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新技術で作業効率大幅アップ

今や「入れ歯難民」も心配される中、新しい技術も登場しています。

(カスプデンタルサプライ・山田和伸代表取締役)
「インプラントを埋め込む時に正確な位置を示すため、ガイドになるものを3Dプリンターで作っている」

インプラントの支柱をどこに埋め込むかを示す模型を3Dプリンターで作っています。以前は手作業で1個あたり3、4時間かかる作業でしたが、今や1時間ほどで最大10個も作ることができるようになりました。

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そして、パソコンで作ったデータを元に、素材を自動で削り上げる機械も。導入後、作業時間が半分以下に減ったといいます。

(技工士2年目)
「いま機械がやっている仕事を私たちで負担するのは、厳しいと感じるくらいすごく助けになっている」

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(カスプデンタルサプライ・山田和伸代表取締役)
Q.こういう設備があると人も集まる?
「今の若い人たちは、自分の時間を全部仕事にあてる訳じゃないので、絶対必要になる」

「やっぱりベースは人間の手」

最新技術の活用は、人材確保にもつながると話しますが…

(山田代表取締役)
「やっぱりベースは人間の手。例えば、歯の形とかかみ合わせとか、そういうのがわかっていないと機械を触ってもうまくできない。AIが台頭して来ないとも限らない。(AIでの製作を)試したが、まだ修正が必要」

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Q.最初と最後は人間の手が必要?
「そうなんです」

デジタル技術の普及を上回るスピードで、入れ歯などを必要とする高齢者が増える中、食べたり話したり、生きる事そのものを支える職人の技がさらに求められています。

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