現在、新型コロナウイルスの影響により、リモートワークやテレワークが社会に浸透しつつありますが、一方で新たな課題も浮かび上がっています。一つ一つを検証すると「オフィスはどうあるべきか?」という働き方の根本的な問題に行き当たります。
※文末に当日の動画や資料へのリンクがあります。
急速なテレワーク化による実情と新たな課題とは
新型コロナウイルス感染拡大による自粛期間中においては、強制的にテレワークへとシフトせざるを得ない状況でした。事態の収束を見据え、現状をどのように捉えればよいのか。また、これからのオフィスの在り方はどのように変化していくのかについて、考えてみたいと思います。
「ステイホーム」の期間中は、どのくらいの人が出勤していたのでしょうか。直近1週間(営業日ベース)での週当たりの出勤日数を調べてみると、3割の人が会社に1日も行っていない状態で、1~2日出勤した人も3割程度でした。毎日、会社に行っていたという人は10%にとどまっています。ここまで全体的にテレワークが実行されたのは、日本のワークスタイル史上、初めてのことでした。
実際にテレワークをやってみて何が見えてきたのでしょう。リクルート住まいカンパニーの「コロナ禍を受けたテレワークの実態調査」によると、「テレワークを継続したいか」という設問については、80%以上の人が「継続したい」と回答しています。もう少しリアルな声を知りたいのでツイッターを調べてみると、最もストレスフルだと感じているのが「通勤」だということがわかりました。
これまで「満員電車による通勤は仕方ない」と思っていたのに、テレワークを行うことで、改めてそれがストレス要因であることを再認識したのです。またTwitter上では「#出勤再開うつ」とハッシュタグを付けたツイートが多く見受けられましたが、着目すべきは「もうオフィスは不要だ」という声でした。
それでは今回のテレワークについて、皆さんは満足しているということでしょうか。実は、70%近くの方々が、テレワークの「生産性は高くなかった」と答えています。8割の方がテレワークを続けたいと考えているのに、7割の方は生産性が高くないと考えている。逆説的な現状が出たことは、実に興味深い結果でした。
では、今回実施されたテレワークの問題とは何だったのでしょう。最も多かった回答は「同僚とのコミュニケーションの量が減る」で38.4%。次いで「時間管理が難しい」が30%。
働き方改革の目的は、効率化ではなく、刺激・ワクワクを最大化させること
コロナ自粛の期間中に「オフィスは不要ではないか?」という問い合わせを多くいただきましたが、私は今後もオフィスは重要な機能を果たすと考えています。
今後のwithコロナ、アフターコロナを考えたとき、社員が働きやすいオフィス機能としてどのようなものが望まれるのか。これまでの働き方改革を考えてみると、3つの柱が挙げられます。1つ目は「高齢者の就労促進」。次に「非正規と正社員の格差の是正」。そして「長時間労働の解消」(生産性の向上)です。
また、ぜひ知っていただきたいことがあります。日本の働き方改革はようやく定着してきましたが、世界と比べると、熱意あふれる社員の割合が少ないと言える状況です。ある調査では、仕事に熱意を持っている人の割合は全体の6%のみという結果が出ていました。
私はワークスタイルの変革のために職場環境を活用したいと考えていますが、最も大きな課題に社員一人一人の「モチベーション」があります。日本では、楽しく熱意を持って働いている人が少ないにもかかわらず、働き方改革の3つのテーマに、この課題が挙げられていません。私はそれに長らく疑問を持っていました。
働き方改革を考えるとき、オフィスやテレワーク、リモートワークといった考えるべき問題は多くあります。しかし、これらは手段でしかありません。では、働き方改革の目的とは何でしょうか。私たち社員が仕事を楽しんで、やりがいを持つことにあるはずです。楽しくない・退屈・面倒・我慢するものとして定着してしまった「仕事」を、成長実感を得るためのステキな社会活動に変えるため、働き方改革をその手段とするように捉えてほしいと考えています。そうすることでオフィスの在り方はおのずと見えてきます。働く場であるオフィスを「刺激・ワクワクを最大化させる装置」とすることです。
私がリモートワークについて相談を受けた中で、最も多かった質問は、進捗状況や人事考課などのやり方について「これからどうやって管理していけばよいのですか」というものでした。寄せられた質問から、多くの方々がオフィスを「行動管理の場」と捉えていることがわかります。私は今後、オフィスを働き方改革の中心に据えるために、人々を管理するためのオフィスから、刺激・ワクワクを最大化させるためのオフィスに変えていきたいと考えています。
それでは、ワークプレイス(職場環境)やワークスタイル(働き方)は、どのように変化させればよいのでしょうか。
空室率が低下すると賃料相場は上がっていきます。渋谷の再開発、大手町の新ビル、日本橋や虎ノ門エリアは平均値で坪当たり4万円の賃料と提示されていますが、実態は5万円と急激に高騰しています。「オフィスを借りたくても見つけられない」「仮に見つけられたとしても賃料が高い」ということに悩まされてきた方も多いでしょう。コロナ禍に「オフィス不要論」が飛び出した背景には、高騰していた賃料の問題もあると思います。
次に、オフィスの中でどのようなことが行われていたのかを考えてみましょう。従来のオフィスでは、スペースの7割くらいを社員が個人で作業をするソロワークのための場所に使っていました。一方で、会議室などの共有スペースは3割ほどでした。これが最近の働き方改革によって、徐々にオフィススペースの利用方法が会社でしかできない個人の仕事と、ミーティングなどの特定人数での共有スペースに限られるようになってきました。この流れを受け、私は3年ほど前から「ワークスタイル3.0」と称して、コワーキングスペースの利用やサテライトスペースの利用を促し、さらにプライベートタイムを充実させる改革を提唱しています。
「ワークスタイル3.0」は、オフィスでの作業が必要な業務にはテクノロジーを徹底的に活用することで、作業のリモート化と生産性の向上を図ります。
withコロナ、アフターコロナで、日本企業が取るべきオフィス戦略の3要素
「ワークスタイル3.0」を推進する3つの要素として下記が挙げられます。
① 多様なワークプレイスの最適チョイス
② テクノロジー活用による生産性向上
③ オフィスは刺激あふれるワクワク空間「HUB for works」へ
以前は作業スペースと言えばオフィスしか場がなかったのですが、現在はコワーキングスペースをはじめとした外部の環境を活用できるようになり、働き手が主体的にワークプレイスを選べる時代となりました。加えて「テクノロジー活用による生産性向上」を行うことで、より多様なワークプレイスを選べるようになり、空いた時間をコラボレーションワークやプライベートタイムに有効活用できるようになったのです。
その中で「オフィス」が果たす機能とは何でしょうか。多様なワークプレイスが活用されることで、オフィスでの仕事は、限定的な個人業務と重要な戦略会議など、特定人数での共有スペースに限定されていきます。つまりオフィス機能のほとんどは、コラボレーションスペースに代えられるのです。今後オフィスは創造性を豊かにする「刺激あふれるワクワク空間 (HUB for works)」になることが求められるのではないでしょうか。
そこで私は、withコロナ・アフターコロナを意識した新しい働き方として、「新たなワークプレイスの出現とシームレスなHUB&SPOKE(ハブ&スポーク/中心地とそれを取り巻く拠点)」を提唱します。オフィスはHUB for worksの中心。
オフィスでのソロワークスペースをなくすことができるため、オフィスの小型化により浮いた費用をコワーキングスペースやサテライトオフィスの利用など、新たな設置に振り分けられると思います。センターオフィスを取り巻くように、今後はさらに需要が高まりサテライトオフィスや自宅、カフェなどのワークプレイスが増えていくことでしょう。
「ワークスタイル3.0」の出現を踏まえ、withコロナ・アフターコロナの働き方では、安全性・創造性・生産性の3要素が重要になると考えます。これまでの働き方において創造性と生産性を重要視してきましたが、今回のコロナ自粛を受け、今後は安全性を取り入れた多様なワークプレイスづくりが重要になるでしょう。満員電車で通勤するなど、同じ時間に行動したり、1カ所に人々が集まったりすることを防ぐことができ、日本の働き方もABW(Activity Based Working = 業務内容に合わせて好きな場所で働けるというワークスタイル)につながっていくと考えています。
取材後記
新型コロナウイルス感染拡大に伴って、働き方改革の手段の一つとされていたテレワークが急速に普及したことで、「オフィス」の在り方が問われています。しかし、働き方改革の本当の目的は、意欲のある社員を増やすこと、オフィスの在り方はその延長線上で考えるべきだと、槌井氏は語ります。
「社員の行動を監視する場」とされていたオフィスを、「創造性を豊かにする刺激的でワクワクする空間」に変えていくことで、オフィスは新しいことを生み出すコラボレーションスペースになっていく。そしてHUB for worksの中心となるセントラルオフィスとして、社員のコワーキングを推進する装置となるべきだという槌井氏の提案は、今後のオフィス戦略を考える上で、大きなヒントになるのではないでしょうか。
取材・文/藤岡雅 EJS、編集/d’s JOURNAL編集部

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