「影褒め」や「仕事ぶりを褒める」~仕事のモチベーションを上げるための具体策
モチベーション=働きがい

モチベーション=働きがい

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誰かのモチベーションをあげるために重要なことは、相手のモチベーションとなる要因=リソースを知るために質問力を磨くことです。

ところが、若手社員(部下とか後輩社員)は自分が何をもってモチベーションが上がっているのか、下がっているのかに気付いていないケースが多いように感じます。

ここで少々脱線しますが、モチベーションとは「働きがい」とイコールと言われています。

一方で類似している言葉として「働きやすさ」があります。働きがいとは、能動的に働いたときに会社が応えてくれるものです。

物的には金銭的報酬、精神的には成長を感じることや仕事への誇り・意義といったものです。働きやすさは職場環境の充実度合いのこと。制度や設備などがあたります。

働きやすくて、働きがいがあるのがモチベーションのあがるベストな状態と言えますが、働きやすくないけれど、働きがいがある会社もあります。

例えば、オフィスがオンボロで空調さえ不十分だけれど、成長実感がある会社。もし、あなたが経営者であれば、社員のために働きがいと働きやすさも向上させることができるかもしれませんが、管理職ならそれは無理。可能なのは働きがいに限ると思います。

会社の人事制度を根本から変えることは管理職一人では難しいし、仮に可能だとしても時間がかかりすぎるからです。

ですので、みなさんも働きがい=モチベーションと考えて相手の要因を考えてみましょう。

仕事で成功体験少ない若手社員

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仕事で成功体験少ない若手社員

若手社員は働きやすさに関しては休暇の取得や家賃補助など条件を聞くと具体的なイメージが出てきます。一方、働きがいに関しては、仕事で成功体験が少ない世代のため、具体的な事例がでてきにくい。

仕事を通じてモチベーションを高めた経験が少ないのです。

「お客様から笑顔をいただくとモチベーションがあがる」と回答してくれた若手社員に「具体的にどのような場面で笑顔をいただいたのですか?」と尋ねます。

さらに「もう、少し具体的に教えてください」「どうしてモチベーションがあがったと思いますか?」と質問を続けていくと正確な場面が回答できない、ないしは「本当にモチベーションあがったの?」と思えるような場面しか説明できない人が大半なのです。

一方で、なかには具体的で「なるほど」と思える働きがい=モチベーションがみつかっている若手社員もいます。

自分を追い込んで仕事をする・仕事を深める

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自分を追い込んで仕事をする・仕事を深める

クライアントから「やり直し」の要求を何回ももらい、泣きそうになりながらやり直し、その後、コンペに勝ち、受注。オンエアされたCMで商品が大ヒットした仕事に関わったJさんは「仕事ぶりがお客様に認められ、その仕事で世の中が大きく動いたときに働きがいを感じました」と語ってくれました。

おそらく、お客様に認められたことでモチベーションが小さくあがり、CMが大ヒットしてさらに大きくあがったといえます。

こうした成功体験があると本当にモチベーションがあがっているといえます。

ところが、そこまで自分を追い込んで仕事をしていない、深めた仕事をしていないと本当のモチベーションがみつからないまま「お客様の笑顔」などと答えます。

感情あふれる姿こそ本物

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感情あふれる姿こそ本物

社歴を重ねて、失敗と成功を繰り返すとモチベーションのあがる要因が具体的にみえてきます。

とはいえ、そんな状態になれるのはだいぶん先。回答している若手社員に質問を続けて、本当のモチベーションを探してあげていただきたいと思います。

その際にはできるだけオープンクエスチョンを使うのがポイントです。
「あなたのモチベーションがあがったと感じた瞬間はいつですか?」「どのように感じましたか?」「どうして感じたと思いますか?」と相手に考えさせるようにしましょう。

すると本音がみえてきます。最近の若手社員は就職活動で自己分析を相当に行っており、表層的な回答は上手です。自分をさらけ出さずにそれなりの点数を得る回答にたけているのです。

しかし、そんなきれいな回答ではなく本当は何がモチベーションなのか?それを導き出すためには感情まで聞き出す必要があります。

それは苦手なことや、経験したことがないことかもしれません。時間をかけて丁寧に聞き出す努力が必要だと思います。

ちなみにどういう答えであれば「本当のモチベーション」であると見極められるのか、見極めたあとはどうしたらいいのか。

それは表情やしぐさに注目すべきと考えます。

人は感情が高まると口角が上がり、手や体を動かして話をしようとします。あるいは前のめりになったりもします。声にも抑揚が出てきます。ようは感情あふれる状況を示すのです。

その姿に注目してください。おそらく、誰がみても明らかなくらいに違いがあるはずです。

仕事ぶりを褒める 具体的な意欲に

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仕事ぶりを褒める 具体的な意欲に

日々の仕事で小さくモチベーションをあげるために効果的なのは褒めること。そもそも、褒められると相手との関係が良好になります。

褒めるという行為は相手を認めているという気持ちを表すので、褒められた側は自尊心を満たされて気分が良くなります。

人は自分に好意的な人には好印象を持ち、同じように好意的に接する傾向があり、褒めてくれる人に対してネガティブな感情は抱きにくいものです。

そして、相手に自信とやる気を与えます。積極的に動いてくれるきっかけになります。

ただ、仕事でモチベーションをあげる効果的な褒め方にはポイントがあります。相手の承認欲求がみたされ、モチベーションがあがるようにタイミングよく具体的にほめてあげてください。

さらに言えば仕事でモチベーションをあげたい時には「服が素敵」「姿勢が格好いい」と見た目や印象を褒めるよりは、その人の仕事ぶりを褒めることをお勧めします。その方が仕事上で具体的な意欲につながるからです。

例えば、「丁寧な対応で助かった」と褒める。「他の社員たちも参考にすべき取り組みだ」と評価の高さを示す。

「シェアが3倍」「利益が120%増」など、具体的な数字をあげて褒める。「丁寧なフォローが成果につながった」とプロセスを褒める。

さらに自分だけではなく「〇〇さんもすごいと感心していた」と第三者の意見も交えて説得力を持たせるなど工夫を凝らしてください。

日常の行動を観察し続ける

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日常の行動を観察し続ける

「契約おめでとう」とか「たいしたものだ」といった褒め言葉では、相手はうれしいかもしれませんが、モチベーションがあがることはあまりありません。具体性が乏しく、仕事の中身をみてくれたと思えないからです。

有効な褒め言葉をかけるためには、日常の行動を観察し続ける必要があります。

スケジュールを確認したり、周囲の同僚たちにインタビューしたり、そんな行動も心がけてください。

「おめでとう」に加えて、先輩からの忠告とかだけを話すスピーチに感動はないですよね。それと同じです。

面倒に思うかもしれませんが、例えば、結婚式で新郎新婦をたたえるときにいろいろ取材や情報収集をすると思います。その努力があると、聞いている参列者は感動します。まさに参列者のモチベーションがあがるわけです。

褒めて、モチベーションを上げたいのであれば努力が必要なのです。

信頼・信憑性増す「影褒め」のすすめ

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信頼・信憑性増す「影褒め」のすすめ

ちなみに直接褒めることが苦手な人もいます。それでも、やってみてほしいのですが、どうしても無理であれば、「影褒め」を試してみてください。「影褒め」とは本人ではなく第三者に対して褒め言葉を伝えることです。

例えば、同じ職場の同僚に対して「●●さんは顧客とのスピーディーなやり取りがすばらしいね」とコメントをするのです。するとその褒め言葉が間接的に「△△さんが顧客とのスピーディーなやり取りがすばらしいと褒めていたよ」と伝わることでモチベーションがあがるというやり方です。

これはウィンザー効果を狙った高度なやり方とも言えます。ウィンザー効果とは直接言われるよりも第三者から間接的に言われたほうが信憑性・信頼性が増す、という心理的効果です。

「うちの店のラーメンうまいよ!」とお店の人からすすめられるのと「あそこのラーメンうまかったよ!」と友人からすすめられる。どちらのほうが信頼できますか?おそらく答えは後者です。

つまり、自分でアピールしたものにはあまり信憑性が伴いません。しかし、第三者がすすめるものであれば信憑性が生まれます。

これがウィンザー効果。そして、この効果をうまく使っているのが口コミサイトです。私もこのウィンザー効果について実験したことがあります。

1つの部屋に同じ職場の同僚を4人集めて、別の部屋にもう1人同僚を置きます。そして4人に別の部屋の1人を褒めてもらいました。

その会話をマイクで拾って別の部屋の1人に聞いてもらい、終了後の感想を聞いたところ、うれしくて大いにモチベーションがあがったと感想を教えてくれました。

「影褒め」をモニタリングしてみたのですが、直接褒められるよりもうれしさは大きかったようです。どうしても直接に褒められない人は「影褒め」を試してみてください。

成功の果実は周りの人と分かち合う

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成功の果実は周りの人と分かち合う

職場の後輩や部下たちが仕事で成果を出したので、褒めて部下らのモチベーションが上がることは上司や先輩にとってうれしいことです。

ただ、会社は組織なので高いモチベーションが全体にいい波及効果を及ぼしてもらいたいもの。つまり、周囲もモチベーションがあがる状態になってもらえばなおよしとなります。

ですから、モチベーションが高い状態を同じ職場の同僚も享受できる機会をつくることが重要です。

例えば、いい仕事でいい成果が出て部下を褒めた。その成功には同じ職場の同僚たちの支援もあったに違いない、と同僚たちも褒める。

さらにインセンティブとして賞金や焼き肉ツアーなどの機会をシェアする。さらに上司も便乗して参加する。このように、誰かの成果でともに称えあう状況をつくるのです。

もちろん、成果を出した当人が大きくインセンティブを享受できることが前提ですが、お裾分けがあるようにしておくのです。

自分だけが喜びを独占したいという人にとっては少々不満が出る可能性がありますが、それでも「今後の仕事をスムーズにするために些細な投資だと考えれば安いもの」と説明すれば理解はできるでしょう。

経験を重ねると感じる、チームの重要性

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経験を重ねると感じる、チームの重要性

「仕事で成果を出すと自分だけでなく周囲にも喜びを与えることができる」と思える状況は、新たなモチベーションを生み出す可能性があります。さらに言えば社会人経験があればあるほど、周囲に喜びを与えることがモチベーションにつながるようです。

ある転職サイト調査でも人間関係を重視する傾向が年齢とともにあがります。

仕事をチームで行うことの重要性を、なぜ社会人経験が重なると感じるようになるのでしょう。

これは仕事に限らずスポーツの世界でも同様かもしれません。

仕事でお目にかかったスポーツ選手も若手時代のうちは自分のために勝ちたいのが当たり前。でも勝ち続けて経験を重ねると自分のためだけでは勝てない。モチベーションも維持できない。なので、誰かのため、つまり、ファンのために勝ちたいと思うようになると語ってくれました。

どうして年齢を重ねると、自分のためには頑張りきれず、人(社内・社外問わず)のためだと頑張れるようになるのでしょうか。

その理由は、誰かのために頑張った方が自分も周囲もいい結果につながると、身をもって経験するからだと思います。

あるエンジニアが感じた心境の変化

取材したエンジニアのGさんは自分のために頑張る典型だったようですが、入社して5年目くらいからチームで開発に関わる機会が増えて、チームリーダーを任されるようになりました。

すると自分だけが開発をすすめていくだけでは仕事が終わらない。後輩の成長も考えて、指導したり、役割を割り振ったりする仕事に忙殺されるようになりました。

そうして開発ができたときにはチームで喜びを分かち合い「よかった」とお互いに抱き合うくらいの感動を体験したようです。

すると、次の開発では同じ感動を味わうためにチームの仲間のことを考えて仕事をするようになっていったと変化の状況を話してくれました。

おそらく、開発規模が大きくなり、チームとして関わる人数が大きくなれば自分のことよりもチームのメンバーのことを考える比重が大幅に増えることでしょう。こうして、モチベーションの要因も変化していくのでしょう。

経験が重なるとモチベーションのレイヤーが変わるということなのかもしれません。それだけ人のためやチームのことを考えて仕事をするようになったことで、本人の大きな成長につながったといえます。周りの人を巻き込んだ成功体験こそがモチベーションをあげるカギになるのです。

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