
ワンルームマンション投資を成功させるためには、投資利回りの種類や計算方法をしっかりと理解する必要があります。一方で、投資利回りにばかり目を向けると、その他のリスクを見逃してしまう可能性があります。
本コラムでは、ワンルームマンション投資における利回りの種類と計算方法や利回りを高める方法、投資利回り以外に注意すべきポイントのほか、築年数・エリア別の平均値を詳しく解説します。
■ワンルームマンション投資の「利回り」とは?計算方法を解説
(画像:PIXTA)利回りとは、投資額に対してどれだけのリターンを得られるかの収益性を示す指標です。同じ物件価格でも利回りが高ければ高いほど、より多くの家賃収入を見込めることになります。しかし、単に利回りが高ければいいというわけではなく、賃料設定の妥当性や空室リスク、家賃下落リスク、修繕状況や管理状況とのバランスを考慮する必要があります。
利回りには主に「表面利回り」「実質利回り」「想定利回り」の3種類があり、それぞれ計算方法や性質が異なります。以下からは、それぞれの計算方法や活用方法を解説します。
●表面利回り(グロス利回り)
表面利回りとは、物件価格に対する年間家賃収入の割合を示すもので、不動産投資において最も基本的な収益性の指標です。表面利回りでは、取得時にかかる諸費用や購入後に発生する管理費や税金、修繕費などの運用コストを一切考慮せず計算します。
計算方法は、次の通りです。
表面利回り(%)=(年間家賃収入÷物件価格)×100
次に、具体的な計算例をみてみましょう。
・物件価格:3,500万円
・家賃収入(年間):156万円(月額家賃収入13万円×12ヵ月)
:表面利回り=(156万円÷3,500万円)×100=4.46%
表面利回りの数値が高い場合、一見すると魅力的ではありますが、実際の手取り収益はここからさまざまな費用が差し引かれるため、実際の利回り(実質利回り)は表面利回りよりも低くなります。
表面利回りは複数の物件を比較する際の目安や、物件の表面上の収益力を把握するには便利な指標です。
●実質利回り(ネット利回り)
ワンルームマンション投資では、物件取得時には登記費用や仲介手数料などが発生し、取得後には管理費や修繕費、固定資産税などさまざまな費用が発生します。実質利回りは、物件の取得時や保有中にかかるこれらの諸費用を含めて計算します。前述した表面利回りよりも、より実態を反映した正確な収益性を示す指標になります。
実質利回りの計算式は次のとおりです。
実質利回り(%)={(家賃収入-諸経費)÷(物件価格+購入時諸費用)}×100
次に、実質利回りの具体的な計算例をみてみましょう。
・物件価格:3,500万円
・購入時諸費用:350万円
※初期費用の相場は物件価格の5~10%程度、ここでは10%として算入。
・家賃収入(年間):156万円(月額家賃収入13万円×12ヵ月)
・諸経費(年間):30万円
※諸経費は家賃収入の10~20%程度、ここでは20%程度として算入。
:実質利回り={156万円-30万円)÷(3,500万円+350万円)} ×100=3.27%
購入時諸費用や運用コストを加味しない表面利回りでは4.46%であるのに対し、実質利回りは3.27%に低下しています。このように、経費支出は投資収益性に大きく影響するため、投資判断にあたっては実質利回りをしっかりと計算して把握する必要があります。
●想定利回り
想定利回りは、購入物件の中に空室が含まれている場合における満室想定での収益性を計る指標であり、一棟マンション・一棟アパートなどをはじめ区分マンションでも空室であれば一般的に用いられています。
また、表面利回りと同様に、経費を含まず単純に物件価格に対する満室時の年間家賃収入の割合を示すものです。
想定利回りの計算式は、次のとおりです。
想定利回り(%)=(満室時の年間家賃収入 ÷ 物件価格)×100
次に、想定利回りの具体的な計算例をみてみましょう。
・物件価格:1億円
・総戸数:7戸
・満室時の年間家賃収入:840万円(10万円×12ヵ月×7戸)
:想定利回り=(840万円÷1億円)×100=8.4%
想定利回りは、あくまで「全室が満室で稼働した場合の最大利益」を表す理想値であり、現実の入居率や空室リスクを反映しているわけではありません。そのため、実際の家賃収入や現在の空室状況、また家賃の設定が周辺相場と乖離していないかについても確認する必要があります。
■利回りの平均はどれくらい?築浅・中古・エリア別で比較

ワンルームマンション投資を検討する際、一般的な利回りがどの程度かという平均値を把握しておくことは、物件選びの判断材料として非常に重要です。利回りは物件の築年数や立地エリアによって大きく変わるため、それぞれしっかり確認しておきましょう。
以下では、築浅・中古・エリア別に具体的な利回りの目安を解説します。
●築浅ワンルームマンション(首都圏)の目安
首都圏での新築ワンルームマンションの表面利回りは、おおむね3%後半から4%前後が目安とされています。首都圏における区分マンションのうち、築10年未満の物件の表面利回り平均値は次のとおりです。
表面利回り(首都圏)2020年2021年2022年2023年2024年築10年未満4.50%4.38%4.24%4.14%4.01%出典:不動産投資と収益物件の情報サイト 健美家 ( けんびや )「収益物件 市場動向 年間レポート 2024年」
このように年々緩やかな低下傾向にあるのは、土地の取得費や建築コストの上昇を背景とした築浅マンションの価格上昇や、投資家の需要増加による影響が反映された結果と考えられます。
築浅物件は入居希望者からの人気が高く、投資初期段階では空室リスクが比較的低い反面、一般的に中古物件と比べて購入価格は高く、その分利回りが低くなりやすい傾向にあります。築浅であることのメリットを享受しつつ、利回りを重視した投資判断を下すために、立地や管理状況、家賃設定なども慎重に検討するようにしましょう。
●中古ワンルームマンション(首都圏)の目安
中古ワンルームマンションの場合、築年数によって利回りは大きく異なります。首都圏の築20年未満の物件では、表面利回りが4%~5%程度とされています。一方で、築20年以上の物件になると、6%~8%程度の高利回りが期待できます。
首都圏における区分マンションのうち、築20年未満・築20年以上の物件の表面利回りは、次の表のとおりです。
表面利回り(首都圏)2020年2021年2022年2023年2024年築20年未満5.04%4.89%4.70%4.53%4.40%築20年以上8.13%7.70%7.50%7.14%6.84%出典:不動産投資と収益物件の情報サイト 健美家 ( けんびや )「収益物件 市場動向 年間レポート 2024年」
中古物件は築浅物件と比べると購入価格が抑えられる分、表面利回りが高くなりやすいです。しかし、建物の劣化や修繕の発生、設備交換などに伴う費用が発生する可能性が高いため、表面利回りだけでなく、実質利回りや修繕履歴、管理状況なども確認しておくことが重要です。管理状況については、例えばマンションのエントランス部分や外壁の劣化状態、清潔感など、実際に現地で物件を見て気が付くことも多いので、購入を検討する場合には不動産売買契約締結前に自分自身の目で現地を見るようにしましょう。
●エリア別の目安
ワンルームマンションの利回りは、エリアによって大きく差が出ます。
一般的には、東京都心部などの人口密集地では物件価格が高く、結果として表面利回りは低くなる傾向があります。しかし、都心部は空室率も低い傾向にあり、安定した賃貸需要が見込みやすいという利点があります。反対に、地方都市や郊外エリアでは都心部よりも物件価格が安く、賃貸中の物件であれば表面利回りが高めになっていることも珍しくありませんが、空室リスクや家賃下落リスクは一般的に都市部よりも高く、入居者が出て行ってしまった場合に次の入居者が決まらずに空室が続いたり、入居者が家賃設定を下げたりせざるを得なくなる場合もあります。
例えば、2024年時点のデータで築10年未満の区分マンションにおける表面利回りは、全国平均で4.30%、首都圏で4.01%、北海道で4.58%、東北で5.05%、東海で4.61%、関西で4.55%といった水準です。
地域別の統計を見ると、利回りが高い地域ほど魅力的に感じますが、実際の投資判断においては、収益面からエリアごとの賃貸需要、費用面から個別物件ごとの運用コストや管理状況などを踏まえた総合的な判断が求められます。
ワンルーム以外のファミリー向け賃貸物件や、アパート経営などの利回りについては、別のコラムで詳しく解説しています。
【関連記事】不動産投資の利回りとは?理想は何%か?最低ラインも解説
【関連記事】アパート経営の利回りの理想と最低ラインは?安定化には経費率が大事
■高利回り=成功ではない?落とし穴とリスク要因

ワンルームマンション投資において、「高利回り物件」は魅力的ではありますが、その裏に潜むリスクに十分注意する必要があります。高利回り物件にありがちなリスク要因として、次の3つが挙げられます。
・空室リスクが高い
・修繕・維持コストが高い
・家賃下落の可能性がある
まず考えられるのが空室リスクです。表面利回りは、物件価格が安くなればなるほど高くなります。そのため、郊外の物件や築年数の古い物件の表面利回りは高くなる傾向にありますが、安定した賃貸需要が見込めず、入居者が出て行ってしまった場合に、次の入居者がなかなか決まらないリスクもあります。空室期間が長引けば、家賃収入は得られず、また、家賃設定を下げざるを得なくなるケースもあります。
また、築年数の古い物件では修繕などの物件を維持するための費用が投資直後から発生する可能性があります。給排水管や外壁、防水工事などは定期的に発生する費用で事前に見通しが立てやすいですが、例えば、給湯器やエアコンなどの設備についてはある程度の築年数が経過している物件の場合には突発的に修理や交換が発生し、収益性が圧迫されることがあります。表面利回りが高い物件でも、ランニングコストを甘く見積もり過ぎてしまうと、実際の利益は想定よりも少なくなることがあります。
さらに、エリアによっては今後の人口減少や周辺環境の変化によって家賃が下落するリスクもあります。家賃が下落すれば利回りが低下するだけではなく、将来的な資産価値の低下にもつながるため、物件選びの段階で十分な情報を取得し、慎重な見極めが必要です。
このように、不動産投資では単に利回りの数値だけをみるのではなく、その背景にあるエリア特性や物件の状態、賃貸需要、将来の見通しなどを総合的に判断することが重要です。
■ワンルーム投資で実質利回りを上げる4つの工夫
ワンルームマンション投資において収益性を高めるためには、家賃収入を効率よく最大化しながら、支出を適切にコントロールする工夫が必要です。以下からは、実践しやすい4つの改善ポイントを紹介します。
●適正な家賃を設定する
実質利回りを高めるうえで重要なのが、適正な家賃設定です。
家賃が高すぎると空室リスクが高まり、反対に低すぎると収益を圧迫します。そのため、周辺の類似物件との賃料相場や交通アクセス、設備、日当たりといった物件の魅力を総合的に判断し、バランスの取れた家賃設定を行うことが必要です。
適正な家賃設定は自力で判断することが難しいため、不動産会社など専門家に依頼しましょう。賃料査定の種類や評価ポイントについては、こちらのコラムで詳しく解説しています。
【関連記事】賃料査定とは?賃料査定の流れや注意点などを解説
●リフォームやリノベーションをする
築年数が経過している物件であっても、内装や設備をリフォームしたりリノベーションしたりすることで賃貸需要が高まります。例えば、壁紙の張り替えや床材の変更、水回り設備のグレードアップといった小規模な工事でも、印象が大きく変わり、家賃上昇や長期入居の促進につながります。
入居者にとって快適で魅力的な住環境を提供することで、賃料アップや空室率の低下が見込め、利回りの向上を期待できます。こうした工夫は初期費用がかかるものの、中長期的に見れば十分に費用対効果が得られる可能性もあります。
●管理委託費用が安い管理会社に変える
賃貸経営においては、管理会社への委託費用も無視できないコストです。管理内容が同等であれば、よりリーズナブルな手数料を提示している会社に乗り換えることで、毎月の固定費を削減できます。
ただし、安さだけで判断すると委託できる業務内容が少なかったり、満足できるサービスを受けられなかったりすることで、自分自身の負担や不満に繋がることもあります。安さだけで判断せず、管理体制や対応の質も確認したうえで選定することが重要です。
賃貸管理会社を選ぶ時のポイントや相場、手数料を抑える方法については、別のコラムで詳しく解説しています。
【関連記事】賃貸管理手数料の相場は?サービス内容や管理会社の選び方を解説
●必要経費を適切に計上する
コストの削減という観点からは、節税も欠かせません。不動産投資では、減価償却費・修繕費・管理費など、経費として計上できる項目が多数あります。これらを正しく計上することで課税所得を圧縮することが可能です。
ただし、不動産に関する税務処理には専門知識が求められることも多く、誤った申告をすれば追徴課税などのペナルティを受ける可能性もあります。正しく税務処理を行い、節税効果を最大化するためにも、税理士に相談することをおすすめします。
■ワンルームマンション投資で利回り以外に見るべきポイント
ワンルームマンション投資を始める際には、どうしても「利回り」に目をむけがちですが、長期的に安定した収益を得るためには、それ以外にも注目すべきポイントが数多く存在します。
ここでは、ワンルームマンション投資で特に重要な3つのポイントを解説します。
●物件の立地(駅距離・周辺環境)
物件の立地は、ワンルームマンション投資の成否を大きく左右する重要ポイントのひとつです。
首都圏であれば最寄り駅からの距離が近く、徒歩10分以内でアクセスできる物件は高い入居需要が見込めます。加えて、近隣に大学や企業のオフィスが集中しているエリアは、学生や単身会社員など特定のターゲット層の賃貸需要があるため、入居希望者が途切れにくく、空室リスクの低減につながります。
また、治安や生活利便性も入居者にとって重要な判断基準であるため、スーパーマーケットやコンビニエンスストア、病院、公園などの周辺施設の充実度も確認しておくことが大切です。
●物件の築年数・管理状態
ワンルームマンション投資では、物件の築年数や管理状態も見逃せない要素です。
築年数が古い物件は、見た目や設備の老朽化によって入居希望者の印象が悪くなり、適正家賃の低下を招きます。また、リフォーム等によって部屋の中が綺麗になっていても、外壁や配管、エレベーターといった共有部分の管理が行き届いていないと、やはり入居希望者の印象が悪くなってしまいます。
そのため物件を選ぶ際には、専有部分以外の修繕履歴や管理状況も確認するようにしましょう。
●融資条件
ワンルームマンション投資では不動産投資ローンの利用が一般的です。不動産投資ローンの融資条件も、適用される金利や返済年数によって、毎月のキャッシュフローや最終的な利益が変わるため、実質的な収益性を大きく左右する要素になります。
したがって、利回りとあわせて融資条件のバランスを考慮し、資金計画や将来設計に合ったローンを選ぶことが重要です。
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(提供:manabu不動産投資)
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