一種単価とは?不動産投資での活用方法・計算方法をわかりやすく解説
一種単価とは?不動産投資での活用方法・計算方法をわかりやすく解説

不動産投資では、事前に購入物件の収益性をしっかりと把握した上で投資の意思決定をすることが重要です。土地を購入する場合、その土地の収益性を簡易的に把握するために活用されているのが「一種単価」です。

一種単価とは容積率100%あたりの土地単価のことで、建物を建てた際の収益性を示す指標です。主にマンションやオフィスビルの建築に際して活用されています。

本コラムでは、一種単価の概要や具体的な計算方法、活用方法のほか、アパート経営において重視される他の指標についても詳しく解説します。

■一種単価とは?|容積率100%あたりの土地単価のこと

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(画像:PIXTA)

一種単価とは、容積率100%あたりの土地単価を示す指標のことをいいます。

通常の土地価格は坪単価などで表しますが、それだけでは建物を建てた際にどれだけの収益性があるのかを判断できません。一種単価を使うことで、土地自体の値段ではなく、建築によって得られる収益性や投資効率を簡易的に把握することができます。

一種単価の計算に用いる「容積率」とは、建物の延べ床面積が敷地面積に対してどれだけの割合で建てられるかを示す数値で、都市計画法によって用途地域ごとに上限(指定容積率)が定められています。

例えば、商業地域では容積率が高く設定されることが多く、同じ面積だとしても他の用途地域の土地と比べて建てられる延べ床面積が大きくなります。一種単価を算出することで、そうした土地の収益性を簡易的に把握できます。

土地を購入し、オフィスビルやマンションの建築を検討する際には、この土地がどの用途地域に属しているのかを正しく把握し、その容積率を前提に一種単価を算出することでよりスピーディーに意思決定をすることができます。

用途地域の種類や特徴、容積率の幅については、以下の記事でも詳しく紹介しています。

【関連記事】都市計画法の用途地域とは?13種類の一覧・特徴と制限をわかりやすく解説

■一種単価の計算方法・計算例

一種単価の計算式は「土地の坪単価÷(容積率÷100%)」です。

土地坪単価は「土地価格÷土地面積(坪)」で求められます。

(計算方法)

一種単価=土地坪単価÷(容積率÷100%)
※土地の坪単価=土地価格÷土地面積(坪)

容積率400%と200%の場合の具体例を挙げてみましょう。

(前提条件)

・土地価格:1億円
・土地面積:100坪(約200畳・約330㎡)
・容積率:400%(第1種中高層住居専用地域)(計算例)

※土地の坪単価=1億円÷100坪=100万円
一種単価=100万円÷(400%÷100%)
25万円/坪

土地価格が1億円、土地面積が100坪、容積率が400%の場合、土地の坪単価は1億円÷100坪=100万円となります。これを容積率で割ると「100万円÷(400%÷100%)=25万円/坪」となります。次に容積率の条件のみ200%に変更して計算してみます。

(前提条件)

・土地価格:1億円
・土地面積:100坪(約200畳・約330㎡)
・容積率:200%(第2種低層住居専用地域)(計算例)

※土地の坪単価=1億円÷100坪=100万円
一種単価=100万円÷(200%÷100%)
=50万円/坪

容積率を200%とした場合には「100万円÷(200%÷100%)=50万円/坪」となり、容積率400%の場合と比較すると数値が高くなることがわかります。土地価格や土地面積が同じ条件でも容積率が異なると、収益性に違いが出ます。

この違いは、建物の延べ床面積の広さに違いが生じてくるためです。容積率が高ければより多くの床面積を確保できるため、結果的に賃貸部分の延べ床面積も大きくなり、収益性が高まります。一方で、容積率が低い土地は床面積が制限されるため、一種単価が高くなり投資効率は低下する傾向にあります。

したがって、一種単価が安いほど収益性が高く、高いほど相対的に収益性が低いと判断できます。上記の例では、一種単価「50万円/坪」の土地よりも「25万円/坪」の土地の方が、収益性が高いということになります。

■一種単価が活用される場面とは?

一種単価とは?不動産投資での活用方法・計算方法をわかりやすく解説
一種単価とは?不動産投資での活用方法・計算方法をわかりやすく解説

(画像:PIXTA)

一種単価は、主にマンションやオフィスビルといった大規模開発において活用されます。これらの開発では、土地の購入を検討する段階で早期に収益性を試算する必要があるため、入口段階で一種単価を計算し、複数の建物プランや賃料想定と組み合わせてシミュレーションを行うことが一般的です。土地の価格だけでは判断できない投資効率を見極めるうえで、一種単価は重要な指標となっているのです。

一方で、アパート開発では一種単価がそのまま活用されるケースはほとんどありません。これは、アパートは敷地条件や前面道路幅員の制約を強く受け、建物の形状や間口などの個別性も高いためです。

特に前面道路幅員が12m未満の場合には、建築基準法に基づき容積率が制限されます。建築基準法第52条2項により、前面道路幅員が12m以上であれば都市計画で定められた指定容積率をそのまま活用できますが、12m未満の場合には道路幅員に用途地域ごとの係数(40%や60%など)を掛けた数値が基準容積率となり、それが指定容積率より低い場合には低い方が優先されることが定められているためです。

例えば、第1種低層住居専用地域で指定容積率が200%に設定されていても、前面道路幅員が4mしかない土地では「4m×40%=160%」が基準容積率となり、200%を消化できません。つまり、実際に建てられる延べ床面積は減ってしまうのです。

このように、前面道路幅員が12mあるかどうかによって、指定容積率をそのまま適用できるか、制限されるかが分かれます。アパート開発ではこうした個別事情を踏まえて判断していくことが一種単価よりも重要視されます。

用途地域前面道路幅員に乗じる係数第1種低層住居専用地域
第2種低層住居専用地域
田園住居地域40%第1種住居地域
第2種住居地域
準住居地域
第1種中高層住居専用地域
第2種中高層住居専用地域40%、特定行政庁が指定する区域では60%近隣商業地域
準工業地域
工業地域
工業専用地域
商業地域
用途地域の指定の無い区域60%、特定行政庁が指定する区域では40%もしくは80%

さらに、前面道路幅員が4mを下回る場合には、建築基準法によってセットバックが義務づけられ、敷地の一部を道路として提供する必要があります。

その結果、建築可能な有効敷地面積が減少し、実質的に容積率も制限されてしまいます。

このように、アパート開発においては個別の条件による影響が大きいため、一種単価が指標として使われる場面は少ないのです。

セットバックの概要や注意点、費用に関する詳しい解説は、こちらの記事もご覧ください。

【関連記事】セットバックとは?発生する理由や必要費用・購入してよいケースを解説

■アパート投資では何が重視されるのか

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ここまで解説したように、アパート投資において一種単価が用いられることはあまりありません。その代わりに重視されるのが、運営段階での利回りや収益性、立地条件、そして管理コストや修繕コストといった実務に直結する要素です。

これらの指標を正しく見極めることで、安定的なキャッシュフローを生み出す投資かどうかを判断することができます。これらの指標について詳しく解説します。

●利回りと収益性

アパート投資において最も重視されるのが利回りです。特に、単純な表面利回りではなく、想定家賃から運営費や修繕費、保険料、固定資産税などの経費や賃料下落リスク、空室リスクなどを考慮した実質利回りを確認することが欠かせません。

種類特徴表面利回り運用コストを考慮しない、物件の「見かけ上」の収益性実質利回り家賃収入だけでなく、修繕費・管理費・火災保険料・固定資産税などの運用コストや、物件取得時のコストも加味したより正確な収益性想定利回り物件が満室で稼働する場合に想定される収益性

長期的に安定した収益を得られるかどうかは、入居率の維持や突発的な支出への対応力に左右されます。そのため、購入前にはキャッシュフローを長期的にシミュレーションし、返済や将来の修繕費用を含めて利益を確保できるかどうかを精査することが求められます。

ワンルームマンション投資を前提としたものではありますが、こちらの記事では利回りの種類や特徴、利回りを向上させる具体的な方法について詳しく解説しているため、ぜひご覧ください。

【関連記事】ワンルームマンション投資の利回りはどれくらい?目安と注意点を解説

●立地条件(駅からの距離、周辺環境など)

アパートの収益性を左右するもう一つの重要な要素が立地条件です。駅からの距離や利便性、周辺に商業施設や教育機関があるか、将来的に再開発計画が進んでいるかといった要素も賃貸需要に直結します。

さらに、エリアの人口推移が安定しているかどうかも中長期的な入居率の維持を考えるうえで欠かせません。これらを総合的に判断することで、空室リスクを抑え、安定した家賃収入を見込むことが可能となります。

●管理コストと修繕コスト

アパート経営では家賃収入を得るだけではなく、管理や修繕にかかる費用を適切にコントロールできるかが利回りに大きな影響を及ぼします。共用部の清掃や管理会社への委託費は継続的に発生し、さらに外壁塗装や屋根防水、給排水管の更新といった大規模修繕は一定周期でまとまった支出を伴います。

これらのコストを軽視すると利回りが圧迫され、思わぬ赤字に陥るリスクがあります。そのため、購入前からメンテナンス周期や修繕費の見込みをキャッシュフロー計画に組み込む必要があります。

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