投資詐欺の代表格として知られる「ポンジスキーム」とは、新規の投資家から出資金を集めて既存の投資家に配当金として支払い、実際には資産の運用を行わない(または運用が破綻している)という手口を指します。
事業者が当初から詐欺を意図していたかどうかにかかわらず、この仕組みは構造上破綻することは避けられません。
ポンジスキーム化する事例においては、事業者の財務内容や社内組織体制、さらには事業スキームや収支計画などの細かな情報が開示されていないことが多く、出資の検討にあたっては、情報開示が充実した事業者・商品であり、リスクや収益性を客観的に判断できる先を選ぶことが不可欠です。
本記事では、ポンジスキームの基本的な仕組みから国内外の実例、不動産投資を謳うポンジスキームに騙されないためのポイント、類似事例まで詳しく解説します。
■ポンジスキームとは?語源や代表的な手口
(画像:PIXTA)ポンジスキーム(Ponzi scheme)とは、投資詐欺の代表的な手法になり、新規の投資家から集めた出資金を、既存の投資家への配当金に充てる投資詐欺の一種です。投資家に対して高配当を約束して資金を集め、実際には運用を行わないことがほとんどです。ポンジスキームという名称は、1920年代にアメリカで郵送為替の巨額な詐欺事件を起こしたチャールズ・ポンジに由来します。
初期の投資家に対しては、約束通りの配当や利益を支払うため、「儲かる投資だ」という信頼感を醸成します。しかし実態としては、集めた資金を適切に運用していないことが多く、新規投資家から集めた資金を既存投資家への配当に充てているだけです。
配当原資が新規投資家からの出資金のみになるため、新規投資家が集まらなくなると既存の投資家に対して配当の支払いができなくなり、結果として破綻します。そのため、後から参加した投資家ほど元本も配当も回収できなくなり、損失額が大きくなる仕組みです。最終的には、主催者が残された資金を持ち逃げし、多くの投資家が損失を被るといったケースも多いです。
ポンジスキームの特徴は、市場の実態とかけ離れた高利回りを謳い、さらに「元本保証」や「確実に儲かる」といった甘い言葉で投資家を誘惑する点にあります。
■ポンジスキームの実例
ポンジスキームは国内外で数多く発生しており、その被害規模は時に数千億円にも及びます。ここでは、日本で起きた2つの大規模事件と、海外の事例を紹介します。これらの実例を知ることで、詐欺の手口をより具体的に理解できるでしょう。
●豊田商事事件(日本、1980年代)
豊田商事事件は、日本における投資詐欺事件の中でも最大規模の被害をもたらした悪質な事例です。
この事件では、金地金を用いた現物まがい商法・ペーパー商法により、高齢者を中心に全国で数万人もの被害者を生み出しました。被害総額は2千億円を超えるとされています。
豊田商事は、顧客に高額な金地金の売買契約を結び、その金地金を豊田商事が預かって保管・運用し、高利回りの配当を支払うと謳っていたものの、実際にはほとんど運用実態はありませんでした。「純金ファミリー契約証券」という証券を交付し、新規投資家の出資金を配当に充てるという実体のない取引を続けていたのです。
さらに、「豊田商事」という社名がトヨタ自動車を連想させることを利用し、信頼性があるかのように装ったことも、被害拡大の一因となりました。
この事件は、企業名の印象操作や高齢者を狙った訪問販売の手口などの手法が特徴的であり、ポンジスキームの一例を示す事例として、現在でも教訓として語り継がれています。
●エル・アンド・ジー(円天)事件(日本、2000年代)
エル・アンド・ジー事件は、独自の電子マネー「円天」を用いた巧妙なポンジスキームとして知られています。
顧客には実際の配当として「円天」という独自の電子マネーが配布されましたが、この電子マネーは限られた加盟店でしか使用できず、さらには円天と現金の交換は制限されており、実質的な価値は極めて低いものでした。それでも初期には配当が支払われていたため、会員は安心して追加投資を行い、さらに新規会員を勧誘していきました。
わずか3年あまりで約5万人もの会員を集め、被害額は1,280億円にものぼりました。この事件は、新しい金融技術や電子マネーといった耳慣れない仕組みを悪用することで、投資家の判断力を鈍らせる手法の危険性を示しています。
●安愚楽牧場事件(日本、2010年代)
安愚楽牧場は全国に牧場や提携農家を持ち、和牛の繁殖・肥育を行う実態のある事業を展開し、出資者が「牛のオーナー」となり利益を分配する仕組みを採用していましたが、牛の販売収益だけでは約束した高利回り(年利5~7%)を維持できず、新規出資金を過去の配当に充てる自転車操業に陥っていました。
東日本大震災をきっかけに牛肉の消費や価格が急落し、新規出資の減少と既存出資者からの解約が増加したことで資金繰りが急速に悪化し、破綻に至りました。
つまり、事業自体は存在したものの、収益構造が脆弱で結果としてポンジスキームになってしまったのです。
この事件は被害総額約4,200億円、被害者数は約7万3,000人で、日本の投資詐欺の中でも最大級の規模となりました。
■不動産投資を謳ったポンジスキーム
不動産は土地や建物という実物資産が存在するため、純粋なポンジスキームは起こりにくいとされています。しかし、不動産の中でも実態の分かりにくい商品で詐欺が行われることがあります。
不動産クラウドファンディングでのポンジスキームの主な手口は、次の通りです。
①実現可能性が不透明な事業への投資を持ちかける
②不透明な仕組みで「高利回り」を謳う
③現況確認等の希望を巧みにかわす
④契約後しばらくは「配当」を支払う
⑤突然連絡が取れなくなる
典型的な流れとして、まずは実現可能性が不透明な事業への投資を持ちかけるところから始まります。
次に、不透明な仕組みで「高利回り」を謳い、さらに「元本保証」や「確実に儲かる」といった言葉で投資家の興味を引きつけます。
契約後しばらくの間は、新規投資家から集めた資金を使って「配当」を支払うため、投資家は安心してしまいます。しかし、新規投資家が集まらなくなったり、計画的なタイミングで突然連絡が取れなくなったりして、最後には事業者が姿を消してしまいます。
このような詐欺では、実在しない物件や、業者が何ら権利を持たない物件について、手付金や売買代金、出資金を詐取する手口が多く見られます。
また、当初は事業の成功を目指していたものの、資金繰りの悪化や計画の頓挫を隠し続ける過程で、新規投資家の資金を既存投資家への配当に充てる構造が生じ、結果的にポンジスキームと同様の状態になるケースも起こり得ます。実在するプロジェクトであったとしても、本当にそのプロジェクトが実現可能なものかどうかを事前に検証する必要があります。
■ポンジスキームに騙されてしまう理由
ポンジスキームの被害に遭ってしまう背景には、投資家の心理的な弱点を突く巧妙な手口があります。ここでは、多くの人が騙されてしまう主な理由を3つの観点から解説します。自分自身がこうした心理状態に陥らないよう、理解を深めておくことが重要です。
●高い利回りに目がくらむ
誰でも短期間で大きな利益を得られる話には魅力を感じます。通常の投資では年利数パーセント程度が妥当な水準ですが、ポンジスキームでは市場平均を超える高利回り、例えば年利10%などの数字を謳うケースもあります。
こうした非現実的な数字を目にすると、興味本位や金銭欲にかられてしまい、冷静な判断力を失ってしまうことがあります。また、「他の人が儲けているなら自分も」「今を逃したらチャンスがない」といった焦りの感情から、本来なら疑うべきリスクへの警戒心を鈍らせてしまうのです。
また、投資の経験が浅いなど市場の相場観が身についていない場合には、異常な高利回りを見抜けず被害に遭いやすくなります。
●甘い言葉に警戒心を失う
詐欺師は投資家の不安を取り除くため、「元本保証」や「必ず儲かる」「損失リスクゼロ」といった騙すための言葉を巧みに使います。本来、投資にはリスクがつきものであり、元本保証や確実な利益を約束することは法律でも禁じられているケースがほとんどです。
しかし、こうした過度な宣伝文句に疑いを持たずに信じ込んでしまうと、本来なら投資を躊躇すべきリスクに気づけず、詐欺被害に遭いやすくなります。また、著名人の推薦や成功者の体験談、豪華なパンフレットやセミナーなどで演出された信頼感が加わると、警戒心はさらに薄れていきます。
冷静に考えればおかしいと気づけるはずの矛盾点も、甘い言葉の前では見過ごされてしまうのです。
●不動産なら安心と思い込む
通常のポンジスキームとは異なり、不動産は土地や建物という実物資産であるため、「不動産なら安全」「株式や金融商品より確実」と過信する人も多く見られます。ただし、不動産事業の開発には時間や費用も要する上に、建築基準法をはじめとした様々な法規制をクリアする必要があり、施工会社や運営会社との調整など事業開始までに乗り越えなければならない項目は多岐にわたります。
■投資詐欺に遭わないための対策
ポンジスキームをはじめとする投資詐欺の被害を防ぐためには、具体的な対策を講じることが不可欠です。ここでは、投資を検討する際に必ず確認すべき3つのポイントを解説します。
●免許や資格を確認する
宅地や建物など不動産の売買や賃貸、仲介などの取引を行うには宅地建物取引業免許が必要になります。不動産会社や投資ファンドを選ぶ際に、宅地建物取引業免許や運用会社の登録状況など、公式な許認可の有無を必ず確認しましょう。
宅地建物取引業免許については、各自治体や国土交通省のウェブサイトで、免許番号が正式に登録されているかどうかを確認できます。また、金融商品取引業者であれば金融庁の登録業者一覧で検証可能です。
こうした資格がない業者や、免許番号を明示しない業者は信頼性に欠けるため、トラブルが起こりやすくなります。たとえ事業者が立派なオフィスを構えていたり、豪華な資料を用意していたりしても、正式な許認可がなければ取引を避けるべきです。
●財務内容や組織体制を確認する
ポンジスキーム化するプロジェクトにおいては、事業者の財務内容について公開がされていなかったり、脆弱な内容であったりすることが多いです。財務内容や組織体制など事業者の情報が公開されていなければ、適切な投資判断はできません。
●過度な広告や高利回り案件に注意する
「確実に儲かる」「高配当保証」「元本保証で年利10%」など、好条件の宣伝文句には強い警戒が必要です。
市場の相場から大きく逸脱した高利回りは詐欺のサインになりえるため、提示される数字や説明に納得がいくか慎重に吟味することが重要です。例えば、一般的な不動産投資の利回りは年3~5%程度が相場であり、これを大きく上回る案件には必ず理由があります。その理由が合理的で実現可能なものか、客観的に判断しなければなりません。
●事業スキームを確認する
事業のスキームについて十分に理解し、そのスキームが果たして本当に実現可能なのかを客観的に判断することも欠かせません。「なぜそれほど高い利回りが実現できるのか」「収益の源泉は何か」「リスクはどこにあるのか」といったことがクリアにならなければ投資を見送るべきです。
●契約内容を専門家と確認する
契約書や説明資料は、細かい部分まで丁寧に確認することが重要です。特に、投資の仕組み、配当の支払い条件、解約時の規定、リスクの説明などは重点的に確認しましょう。わからない点や疑問に思う箇所があれば、弁護士やファイナンシャルプランナーといった専門家に相談することをおすすめしますが、相談には費用がかかるため注意しましょう。
また、不動産取引には一定の期間内で契約解除できる「クーリングオフ」が適用されます。宅地建物取引業法では、事務所以外の場所で契約した場合などに説明を受けた日から起算して8日間のクーリングオフ期間が設けられています。クーリングオフを利用できる条件や、利用できない場合の代替手段については、こちらの記事で詳しく解説しています。
【関連記事】不動産売買のクーリングオフの条件とは?クーリングオフできないケースも解説
■代表的な投資詐欺の例
ポンジスキーム以外にも、投資家を狙った詐欺手法は数多く存在します。ここでは、ポンジスキームと類似した構造を持つ投資詐欺の代表的な例を紹介します。これらの手口を知り、より広範な詐欺パターンへの警戒心を高めておきましょう。
●手付金返金を悪用する詐欺
手付金詐欺では、まず契約前に高額の手付金を支払わせておき、何らかの理由で契約をキャンセルできない状況に追い込みます。
本来であれば、契約が成立しない場合や一定の条件下では手付金は返還されるべきですが、詐欺師は巧妙な言い訳や契約書の小さな条項を盾に返金を拒否する、という手法です。例えば、「物件の売主が既に手付金を受け取ったため返金できない」「契約書に記載された特約条項により返金義務がない」といった説明で、投資家を納得させようとします。
そもそも不動産は高額な商品なので、買主にとって不利な条件は法律で守られていることが多いです。知識がないとそのまま騙されてしまうため、ある程度知識を身に付けてから投資を行いましょう。また、こうした詐欺を防ぐためには、手付金を支払う前に契約書の返金条項を入念に確認し、不明瞭な点があれば専門家に相談することが重要です。
●マルチ商法(ねずみ講)
マルチ商法は、新規投資家を次々と勧誘し、会員が払う会費や商品購入代金を上位メンバーに配当する仕組みです。ポンジスキームと似ていますが、マルチ商法は参加者自身が新たな会員を勧誘することで報酬を得る点が特徴的です。
実際の商品やサービスの価値ではなく、人を集めることで利益を得るため、参加者が増えなくなると全体が破綻します。ピラミッド型の構造では、上位にいる一部の人だけが利益を得る一方で、後から参加した大多数の会員は損失を被ることになります。投資話と組み合わせて勧誘されるケースもあり、友人や知人からの紹介であっても、仕組みをよく理解してから判断することが必要です。
●未公開株や暗号資産の詐欺
情報が限られた未公開株や仮想通貨(暗号資産)を使い、高い利益を保証すると勧誘する手口も横行しています。「上場前の株式を今買えば、上場後に何倍にもなる」「新しい暗号資産は将来必ず値上がりする」といった誘い文句で投資家を引き込みます。
しかし実際には、その未公開株が上場する予定はなかったり、暗号資産自体が実体のない架空のものだったりするケースがほとんどです。しかし、未公開株や新興の暗号資産は情報の透明性が低く、一般の投資家が真偽を見極めることは極めて困難であるため、こうした投資話には安易に乗らず、公的な情報源で確認できない案件には手を出さないことをおすすめします。
●ソーシャルレンディング・クラウドファンディング詐欺
融資型のクラウドファンディング(ソーシャルレンディング)では、高利回りを謳って資金を募り、最初の配当を後続出資者の資金でまかなう場合があります。この仕組みは、まさにポンジスキームと同様の構造です。
ソーシャルレンディングやクラウドファンディングは、本来は有望なプロジェクトに小口で投資できる便利な仕組みですが、その複雑さと透明性の低さが悪用されることがあります。本来のプロジェクト収益ではない資金が回っていることに気づきにくいのが特徴であり、事業者の財務状況や融資先の実態が見えにくいため、投資家は判断が困難です。
こうした投資を検討する際には、運営会社の登録状況や実績、融資先の情報開示の程度をしっかり確認し、過度に高い利回りを謳う案件には特に注意を払う必要があります。
どういった商品であっても、投資にあたっては事業者の財務内容や組織体制や事業スキームがクリアになっていることで、初めて投資検討ができるようになります。そうした情報が十分に開示されていない場合、いかにその商品に魅力を感じたとしても絶対に投資するべきではありません。
自分の知り合いや著名人などがその投資を行っているとしてもそれに安心するのではなく、客観的な判断を持って検討をすることが重要です。
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