【1~3月M&A】2025年も快調スタート、前年を32件上回る347件|金額は5兆円を突破

上場企業によるM&Aが2025年も快調な出足を見せている。1~3月期(第1四半期)のM&A件数(適時開示ベース)は347件と前年を32件上回り、2022年4~6月期から12四半期連続で前年比プラスとなった。

このペースでいけば、2年連続で過去最多を更新し、年間1400件台に迫る勢いだ。

取引金額は3月に大型案件が相次ぎ、1月からの累計で早くも5兆円を突破し、3年連続の年間10兆円の大台乗せをほぼ確実とした。

ただ、米国トランプ政権の関税政策をめぐる世界経済の混乱が懸念される中、産業界にはM&Aを一時的に手控える動きが広がる可能性もあり、先行きに不透明感が漂う。

国内案件で“貯金”を増やす展開に

上場企業に義務付けられている適時開示情報をもとに経営権の移転を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、M&A Onlineが集計した。

1~3月期のM&A347件の内訳をみると、日本企業同士の国内案件が前年比32件増の286件、国境をまたぐ海外案件が前年と同数の61件。国内案件の伸びが全体を牽引する形だが、海外案件も引き続き高水準を保っている。

2024年の年間M&A件数は前年比14%増の1221件と2年連続で1000件の大台に乗せる同時に、リーマンショック前年の2007年(1169件)を超え、17年ぶりに最多を更新した。コロナ禍の影響で2020年~22年に2割以上落ち込んでいた海外案件も、コロナ前を大きく上回るまでになり、総件数を押し上げた。

こうした流れを引き継いで2025年の第1コーナーも全体として快調な滑り出しを見せた。1月は82件(前年比17件減)と3年ぶりに前年比マイナスのスタートだったが、2月134件、3月131件と件数が積み上がった結果、3カ月間で“貯金”を32件とした。

【1~3月M&A】2025年も快調スタート、前年を32件上回る347件|金額は5兆円を突破
適時開示ベース、※2025年は第1四半期

SBG、セブンがメガ案件を発表

一方、1~3月期の取引金額は前年比89%増の5兆円429億円(金額公表分を集計)。とくに3月は3兆3399億円と金額が膨らんだ。月間で3兆円を超えるのは、日本製鉄による2兆円規模の米鉄鋼大手USスチール買収発表などがあった2022年12月(約4兆1500億円)以来。

金額1~2位は1兆円近いメガ案件が並んだ。

ソフトバンクグループ(SBG)は9730億円(65億ドル)を投じて半導体設計大手の米国アンペア・コンピューティングを買収すると発表した。買収完了は2025年前半を見込む。

SBGは傘下に、英国半導体設計大手アーム(2016年に3.3兆円で買収)を抱えており、アームの設計力を補完する役割などを期待している。

セブン&アイ・ホールディングスは業績不振が続く総合スーパーのイトーヨーカ堂などの非中核事業を束ねる中間持ち株会社のヨーク・ホールディングスを9月、米投資ファンドのベインキャピタルに売却することになった。売却額は8147億円。

セブンはカナダの小売大手、アリマンタシォン・クシュタールから買収提案を受けている。対抗策として、創業家主導でMBO(経営陣による買収)を通じた株式非公開化を模索したが、資金調達のめどが立たず断念。収益源のコンビニエンス事業に経営資源を集中させ、単独での成長を目指す。

西友、トライアルHDの傘下へ

SBG、セブンを含めて金額1000億円超の大型M&Aは9件(前年同期は4件)あり、うち8件が海外案件で占める(一覧表参照)。

九州を地盤にディスカウントストアを展開するトライアルホールディングスが総合スーパーの西友を子会社化する案件も国内案件に仕分けされる。現在、米投資ファンドのKKRが85%、米小売大手のウォルマートが15%の割合で西友の株式を保有し、外資の傘下にあるためで、トライアルは7月に両社から全株式を3800億円超で取得する。

スーパーをめぐってはイオン「一強」の構図が鮮明になって久しいが、これまで地盤沈下が続いてきたかつてのライバル、イトーヨーカ堂、西友がそろって今年、新たなスタートラインに立つことになった。

【1~3月M&A】2025年も快調スタート、前年を32件上回る347件|金額は5兆円を突破
トライアルHDの傘下に入ることになった西友

外食関連でM&Aが勢いづく

1~3月中、比較的に目についた業種の一つが外食関連。

ラーメン「一風堂」を展開する力の源ホールディングス、ラーメン「一刻魁堂」のJBイレブンがそろって同業のラーメン店を買収。ローカルビジネスのマーケティング支援を手がけるCS‐Cは飲食事業に本格参入するためラーメン店の買収に動いた。

「築地銀だこ」で知られるホットランドホールディングスは主食事業の強化を目的に、和歌山県内のとんかつ店を子会社化した。鳥料理「塚田農業」などのエー・ピーホールディングスは業態・エリアの見直しの一環して、首都圏で串揚げ店を経営する子会社の売却を決めた。

◎1~3月M&A:金額上位25(HDはホールディングスの略)

1 ソフトバンクグループ 半導体設計の米アンペア・コンピューティングを子会社化 9730億円 3月 2 セブン&アイ・HD スーパー事業などを米投資ファンドのベインキャピタルに譲渡 8147億円 3月 3 三菱ケミカルグループ 子会社の田辺三菱製薬を米投資ファンドのベインキャピタルに譲渡 5100億円 2月 4 トライアルHD 総合スーパーの西友を子会社化 3826億円 3月 5 トプコン 米投資ファンドのKKRと組んでMBOで株式を非公開化 3481億円 3月 6 商船三井 化学品タンクターミナル大手のオランダLBCを子会社化 2605億円 3月 7 富士通ゼネラル パロマ持ち株会社による買収を受け入れ 2566億円 1月 8 SGホールディングス 台湾物流大手モリソン・エクスプレス・ワールドワイドを子会社化 1368億円 2月 9 豊田通商 金属リサイクル大手の米国ラディウス・リサイクリングを子会社化 1344億円 3月 10 日本郵政 陸運大手のトナミホールディングスをTOBで子会社化 926億円 2月 11 住友ゴム工業 米グッドイヤーから欧米・オセアニアでの「ダンロップ」ブランドを取得 830億円 1月 12 芝浦電子 同社に対して台湾の電子部品メーカーYAGEOがTOBを実施 655億円 2月 13 日産自動車 インド合弁会社「ルノー日産オートモーティブインディア」を仏ルノーに譲渡 617億円 3月 14 大塚HD 大鵬薬品工業を通じ、スイス創薬ベンチャー「アラリス・バイオテック」を子会社化 594億円 3月 15 プロトコーポレーション MBOで株式を非公開化 526億円 2月 16 カオナビ 米投資ファンドのカーライル・グループによるTOBで株式を非公開化 497億円 2月 17 イオンフィナンシャルサービス イオン・アリアンツ生命保険を明治安田生命保険に譲渡 494億円 3月 18 天馬 MBOで株式を非公開化 483億円 3月 19 ジャムコ 米ベインキャピタルによるTOBなどで株式を非公開化 451億円 1月 20 日本ガイシ 熱交換器・膜装置製造のドイツBorsigの持ち株会社を子会社化 423億円 2月 21 内外トランスライン 国内投資ファンドのIAパートナーズによるTOBなどで株式を非公開化 382億円 3月 22 MIXI オーストラリアのオンラインベッティング大手PointsBetを子会社化 352億円 2月 23 大東建託 不動産開発のアスコットをTOBで子会社化 351億円 1月 24 石油資源開発 北海油田開発の英国子会社JAPEX UK E&Pを現地同業Ithaca Energyに譲渡 335億円 3月 25 亀田製菓 持ち分法適用関連会社で菓子製造の米国TH FOODSを子会社化 331億円 3月

文:M&A Online

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