
ラーメン業界でM&Aの機運が高まってきた。コロナ禍後の来店客数の増加に伴って業績が好転しており、今後の成長戦略の一つとして、出店の加速や、新業態の開拓、海外展開などを実現する手段として、M&Aに関心が集まっているのだ。
横浜家系ラーメン「町田商店」などを展開するギフトホールディングス<9279>は2024年12月13日に公表した決算説明資料の中で、出店力の強化策としてM&Aを掲げたほか、「ラーメン山岡家」を展開する丸千代山岡家<3399>も2024年6月に公表した2027年1月期を最終年とする3カ年の中期経営計画の中で、重点施策の一つとして「M&Aや海外進出に関する情報収集の継続」を明記している。
すでに筑豊ラーメン「山小屋」を展開するワイエスフード<3358>は米国とメキシコでラーメン中心のレストランチェーンを展開するTajima Holdings(カリフォルニア州)の子会社化を決めた。
2025年はラーメン業界でいくつかのM&Aが実現する可能性がありそうだ。
既存ラーメン店が対象に
ギフトが公表した資料では、2027年10月期までの3年間に国内での出店力を高める手段としてM&Aを活用する方針だ。
同社は2015年に飲食店運営のコロワイドの子会社を譲り受けたほか、2019年にはラーメン店の「ラーメン天華」と中華麺や餃子製造の「ケイアイケイフーズ」を傘下に収め、M&Aを積極化させていた。
ただ、その後はコロナ禍の影響などもあり、新たなM&Aは実現しておらず、2022年12月、2023年12月に出店力の強化策として「積極的なM&A」を掲げるなど、M&Aに注力する姿勢を見せていたが、いまだ適時開示したM&Aはない。
2024年12月に重ねてM&Aを明記したことで、ラーメン天華のケースのような既存のラーメン店を対象としたM&Aの動きが活発化することが予想される。
外食産業は原材料費やエネルギー費の高騰に人手不足なども加わり厳しい状況下あったものの、ギフトの2024年10月期は来店客数が増えたことから、直営店舗の1店舗当たり月商が過去最高を更新。
売上高は前年度比23.9%伸び、営業利益も23.7%増えるなど大幅な増収増益となっており、こうした好調な業績がM&Aの後押しすることになりそうだ。
売上高、利益ともに過去最高を更新
丸千代山岡家は2023年からM&Aの本格検討に入っており、対象業種や地域の選定などを行ってきたが、現時点でM&Aは実現していない。
現中期経営計画の中で、M&Aを重点施策の一つとして上げたことで、M&Aの実施に向けた動きが強まっているものと予想される。
丸千代山岡家は2024年12月13日に、2025年1月期の業績を上方修正し、前年度比30.2%の増収(前回は24.6 %の増収)、79.3%の営業増益(同47.8%営業増益)に引き上げた。
業績の上方修正は2024 年9月に次ぐ2回目で、インバウンド(訪日観光客)需要の増加などを背景に来店客数が前年同期比120%台が続いており、2024年11月の時点で既存店売上高は 31カ月連続で対前年を上回っている。
さらに2024年7月と11月に実施した価格改定により、売上高、利益が過去最高を更新する水準で推移していることから業績予想を見直した。ギフト同様、こうした好調な業績がM&Aを後押しすることになりそうだ。
ラーメン業界では、博多ラーメン「一風堂」を展開する力の源ホールディングス<3561>が、2024年3月期に21.7%の増収、44.5%の営業増益を達成。2025年3月期も10.1%の増収、8.2%の営業増益を見込んでいるほか、「ラーメン魁力屋」を展開する魁力屋<5891>も2024年12月期は11.2%の増収、9.1%の営業増益を見込んでおり、いずれも業績は好調に推移している。
2025年のラーメン業界では前向きな話題が増えそうだ。
文:M&A Online記者 松本亮一
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