戦後80年を迎えた。この間に日本経済は急成長して世界市場を席巻したが、バブル崩壊から30年以上もの停滞を余儀なくされている。
日本企業の「新陳代謝」をどう評価するか?
日本企業の時価総額ランキングを見ると、1位がトヨタ自動車(約45兆7000億円)、2位が三菱UFJフィナンシャル・グループ(約27兆9000億円)、3位がソニー(約25兆7000億円)と1980年代にはすでにリーディングカンパニーだった企業がトップスリーを占めており、「大企業信仰」は相変わらずだ。
これに対して、米国では1位がエヌビディア(4兆4000億ドル=約648兆円)、2位がマイクロソフト(3兆8600億ドル=約568兆円)、3位がアップル(3兆4300億ドル=約505兆円)と、1980年代には存在しなかったか、ベンチャーだった企業が米国経済を引っ張っている。これが日米経済の成長力格差につながったとの見方もある。
これについて茂木氏は「企業の新陳代謝はあるべきだと思う。新陳代謝はどの国でもあるが、米国では激しく起こっている一方で日本はかなり穏やかだ」と見る。日本記者クラブ(東京都千代田区)の会見で、M&A Onlineの質問に答えた。
その上で「米国は早い段階で世代交代が起こるので、大きな問題になる前に市場から消えてしまい、新たな企業に資源が移っていく。日本の場合は助け合いの精神もあってドライな企業淘汰に慎重で、後になって問題が深刻化してしまうこともある。とは言え、総合的に見て米国と日本のどちらが良いか、簡単に結論は出ない」と述べた。
「会社は株主のもの」が行き過ぎると、株主が損をする
「同意なき買収」を巡り、「会社は誰のものか」との議論も起こっている。茂木氏は「資本主義経済なので、会社の持ち主は株主ということになるが、経営者が株主だけを見ていて良いわけではない。ステークホルダー全体のことを考えなければ、企業経営は成り立たないだろう。
日本企業のコーポレートガバナンスの状況については、社外取締役を例にあげ、「私自身は1990年代の終わりに帝人で社外取締役に初めて就任し、その後8社ぐらいで社外取締役を経験した。1990年代後半は社外取締役の役割についての議論はあまりなかった。現在は議論も深まり、頼む側も頼まれる側も、十分にその役割を理解している。社外取締役の人数も増えており、日本企業にコーポレートガバナンスは浸透してきたと思う」と評価した。
日本企業の多くはバブル崩壊後に「低価格戦略」へ
1990年のバブル崩壊後の「失われた35年」で、日本経済は多少の浮き沈みはあったものの、世界市場での競争力が失われ続けている。2022年には1人当たり名目国内総生産(GDP)で、日本が「中進国」と見なしていた韓国や台湾に抜かれ、アジアでも存在感の低下が目立つ。
その要因の一つが「リストラ」と「選択と集中」に代表される、ローコスト経営だ。その結果、企業の国内投資の減退や人件費抑制に伴う賃金伸び悩みが引き起こした消費の落ち込みで、長期にわたるデフレを招くことになった。
なぜ、日本企業はローコスト経営を目指したのか?茂木氏は「国際競争力にはいろんな要因があり、価格も重要だ。ただ、安ければいいというわけではない。
文・写真:糸永正行編集委員
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