5月も4月に続き、アクティビスト(物言う株主)による5%超の新規取得が目立ち、少なくとも9件を数えた。大量保有(5%ルール)報告書の提出状況を調べた。
旧村上系、愛知製鋼の大半を放出
旧村上系で目を引いたのはトヨタ自動車系の特殊鋼メーカー、愛知製鋼の株式売却だ。複数ある投資会社の一つ、シティインデックスイレブンス(東京都渋谷区)は5月23日、愛知製鋼株の保有比率(共同保有分を含む)を従来の9.67%から0.56%に引き下げたとする変更報告書を関東財務局に提出した。
この報告義務発生日は5月16日。愛知製鋼は同日、発行済み株式の16.2%に相当する自社株買い(約262億円)を実施。旧村上系は自社株買いへの応募や市場売却で保有株の大半を放出した。
愛知製鋼の株価は昨年9月初め、旧村上系による5%超の新規取得が判明した時点で3300円前後だったが、年末に5000円台、4月末には上場来最高値の8940円をつけた。自社株買い実施後は7400円前後で推移している。
旧村上系は4月に、フジ・メディア・ホールディングス(HD)、日本特殊塗料、月島ホールディングス、三井住建道路の4銘柄について5%超の株式を新規取得。このうち5月中、変更があったのは保有比率を下げた月島HDだけで、買い増しの動きはなかった。
三井住建道路は、前田建設工業を中核とするインフロニア・ホールディングスが買収予定を発表した三井住友建設の上場子会社。親会社の三井住友建設についても旧村上系が約28%の株式を保有し、筆頭株主となっている。
シンガポール3D、三井倉庫HDを6%強保有
倉庫最大手、三井倉庫ホールディングスの株式を新規取得したのはシンガポール投資ファンドの3Dインベストメント・パートナーズ。5月8日に5.07%の取得が判明した後、6.11%まで買い増した。
また、3Dは4月に新規取得が分かったゲームソフト開発大手のスクウェア・エニックス・ホールディングスの株式ついて3度買い増しし、保有比率を8.78%に高めた。
同じくシンガポールのシルバーケイプ・インベストメントは投資会社のマーキュリアホールディングスの株式5%強を新規取得。その後、追加取得しして6.51%に保有比率を高めた。
米ミリ、いちよし証券に照準
米投資ファンドのミリ・キャピタル・マネジメントは中堅証券会社のいちよし証券の株式7.46%を取得した。5.21%を新規に取得後、2度の買い増しを報告した。
日鉄鉱業株式を買い増し分を含めて7.46%取得したコンチネンタル・ゼネラル・インシュアランスは米国保険会社。「重要提案行為等を行う可能性がある」としている。
地銀など金融セクターに特化したファンドを運営する、ありあけキャピタル(東京都中央区)は池田泉州銀行を傘下に置く池田泉州ホールディングスの株式5%超を新規取得した。同社は4月にも滋賀銀行株式を大量保有(5.31%)したことが分かっている。金融スタートアップのfundnote(東京都港区)は橋梁建設などの川田テクノロジーズの株式5.94%を新規取得した。
英オービス ツルハ買い増し、スギは5%切る
英国勢の動きも目立った。インディペンデント・フランチャイズ・パートナーズが2月に新規取得が判明した資生堂株式の保有比率を7.28%まで高めた。
ドラッグストア株式に積極投資してきたオービス・インベストメント・マネジメントはウエルシアホールディングスとの経営統合を12月に控えるツルハホールディングスの株式1.11%を買い増して保有比率を10.29%に高める一方、スギホールディングスの保有比率を1.01%下げて4.66%とした。
同じく英投資ファンドのアセット・バリュー・インベスターズは紡績大手のクラボウ、ゼナー・アセット・マネジメントは豆腐製造のやまみについて、各5%超の株式を新規取得した。
半導体用設備部品製造のフェローテックホールディングスは電子部品メーカーの北陸電気工業の株式5%を取得後、買い増しを続けて保有比率を8.06%に引き上げた。取引関係強化を目的とした政策投資の一環だが、状況に応じて重要提案行為等を行うこともあり得るとしている。
◎5月:アクティビストによる主な保有状況(直近に提出の大量保有報告書に基づく。共同保有分を含む。赤字は新規保有。※保有割合が低下

文:M&A Online
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