【ティーケーピー】成長軌道回帰へM&A再起動、「1000億円」企業が視野に

貸会議室大手のティーケーピー(TKP)が成長軌道への回帰を鮮明にしつつある。コロナ禍で業績後退を余儀なくされ、鳴り物入りで外資から買収したレンタルオフィス事業も手放した。

苦境をくぐり抜け、足元の業績には力強さが戻ってきた。M&Aも今年再開し、年間2件のTOB(株式公開買い付け)を繰り出した。

婚礼大手のノバレーゼを傘下に

TKPは12月19日付で婚礼事業大手のノバレーゼを子会社化した。TOBの成立に伴い、所有割合をこれまでの33%から60%に高めた。

TKPは6月、国内投資ファンドのポラリス・キャピタル・グループ(東京都千代田区)から株式を取得し、ノバレーゼを持ち分法適用関連会社にしたばかりだったが、子会社化(東証スタンダードへの上場は維持)によって情報や人的資源の共有、顧客の紹介などの連携を強化するのが狙いだ。

持ち分法適用関連会社化で約31億円、今回のTOBで約26億円を投じており、ノバレーゼの子会社化に際して総額約57億円を投じたことになる。ノバレーゼの2024年12月期業績見込みは売上高7.2%増の195億円、営業利益10.6%増の13億6100万円。

TKPが主力するとする貸会議室はビジネス利用のため平日が繁忙期で、土日は閑散期。一方、結婚施設の稼働はその真逆だ。

貸会議室を利用する顧客にノバレーゼの婚礼施設を紹介し、展示会、パーティーなどの企業イベントを送客し、平日の稼働を高める。また、稼働の低い平日の披露宴会場などの厨房機能については、貸会議室向けのケータリング(料飲)サービスの厨房として活用する。

TKPは2020年、同じく婚礼事業を展開するエスクリと資本業務提携し、現在約13%を出資する。ノバレーゼが子会社として加わり、「貸会議室×婚礼施設」の相乗効果がどう広がりを見せるのか注目される。

6月、同じくTOBでリリカラを子会社化

今年手がけたもう1つのTOBはインテリア卸大手、リリカラが対象だ。TKPは6月、リリカラ社長の山田俊之氏と親族が持つ株式の大半を取得し、所有割合を約27%から約53%に高め、子会社とした。取得金額は約22億円。

リリカラは壁紙、カーテン、床材などの内装品を主力とし、TKPが運営する貸会議室や宿泊施設への商品提供などでかねて取引関係があった。TKPは2023年4月、リリカラを持ち分法適用関連会社としており、ノバレーゼのケースと同様に期間を置かず、一気に子会社化(東証スタンダードへの上場は維持)に踏み込んだ形だ。

リリカラの2024年12月期業績は売上高3.1%増の338億円、営業利益89.6%減の1億5000万円を見込む。

【ティーケーピー】成長軌道回帰へM&A再起動、「1000億円」企業が視野に
リリカラの本社(東京・新宿)

「1000億円」企業にリーチ

TKPはリリカラの子会社化に伴い、2025年2月期業績予想を上方修正した。下期段階から連結ベースでリリカラが寄与するためで、売上高を当初予想の450億円から620億円、営業利益を73億5000万円から82億円に引き上げた。

続く2026年2月期からはリリカラ、ノバレーゼがともに連結業績にフルに反映することから、単純合算で売上高は1000億円規模となる決算だ。

ただ、節目の「1000億円企業」への道のりは決して平たんではなかった。右肩上がりの成長を続けていたTKPにコロナ禍が立ちはだかった。

2021年2月期は売上高が431億円と20%超落ち込み、営業損益も2017年の上場以来初の赤字(25億円)に転落。翌22年2月期も売上高は微増で、9億円近い営業赤字を継続した。

【ティーケーピー】成長軌道回帰へM&A再起動、「1000億円」企業が視野に

「リージャス事業」を三菱地所に売却

2023年2月には傘下のレンタルオフィス大手、日本リージャスホールディングス(東京都新宿区)を三菱地所に約380億円を売却した。

日本リージャスはレンタルオフィスの世界的大手スイスIWGのグループ企業で、TKPが2019年に約430億円で買収した。

買収額は当時のTKPの売上高を上回り、社運を賭けた大型M&Aだった。レンタルオフィス事業に本格進出し、貸会議室事業と並ぶ経営の両輪とすることを狙いとした。

コロナ禍が直撃する中、共倒れのリスクを避け、貸会議室事業に経営資源を集中させるため、レンタルオフィス事業を手放したのだ。この決断は財務の健全化にも功を奏した

2024年2月期はいったん500億円台に戻していた売上高が365億円に低下した。ただ、リージャス事業売却の影響を除いた売上高は折からのアフターコロナの到来を背景に2割近く増加し、貸会議室事業の復調ぶりを示した。

300億円以上の戦略投資枠を設定

TKPのビジネスモデルは貸会議室(2103室、8月末)を起点に、映像・音響機材のレンタル、同時通訳、仕出し弁当、研修、懇親会、宿泊手配などの付帯サービを幅広く提供している点に特徴がある。

売上構成をみると、貸会議室の室料は4割程度で、宿泊が2割、残りをオプション、料飲が分け合う。宿泊では2014年からアパホテルをフランチャイズ展開し、現在、15棟(客室数約2900)を運営する。

間もなく2年目を終える中期経営3カ年計画(2023年3月~2026年2月)では期間中、300億円以上とする戦略投資枠を設定。既存事業の拡張と周辺事業への展開を旗印に、事業提携や出資、M&Aを取り組む方針を打ち出している。

昨年、組織コンサルティング事業の識学に約10%を出資。企業研修の共同開発や、共同組成したファンドを通じたスタートアップ企業への投資に取り組んでいる。

また今年、約14%を出資した賃貸仲介のAPAMANとは同社運営するコワーキングスペースへの共同出店、法人顧客との相互送客などを推進中だ。

今後の見どころになりそうなのが海外事業。コロナ禍で事実上、ゼロベースに戻っており、本格的に再開を目指す場合、M&Aの出番が十分に考えられる。

◎ティーケーピーの主な沿革

年 出来事 2005 ティーケーピーを都内に設立 2012 直営貸会議室数が1000室を突破 2013 仕出し弁当の常盤軒フーズを設立 2014 アパホテル第1号店として、アパホテルTKP札幌駅前を開設 2017 東証マザーズに上場(2022年4月に東証グロースに移行) 〃 マーケティングリサーチのメジャース(現イチガヤ)を子会社化 2018 直営貸会議室数が2000室を突破 2019 レンタルオフィスの日本リージャスホールディングスを子会社化 〃 品川配ぜん人紹介所を子会社化 〃 レンタルオフィスの台湾リージャスを子会社化 2023 識学に出資 〃 日本リージャスホールディングスを三菱地所に譲渡 〃 台湾リージャスをスイスIWGに譲渡 2024 2月、APAMANに出資 〃 6月、リリカラをTOBで子会社化 〃 11月、システムソフトとAPAMANからレンタルオフィス事業「fabbit」を取得 〃 12月、ノバレーゼをTOBで子会社化

文:M&A Online

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