カジュアル衣料の「アダストリア」M&Aで通販サイトの強化とグローバル事業の加速を

カジュアル衣料大手のアダストリア<2685>は、今後5年間でオーガニック(社内の経営資源を活用した成長)な成長で売上高を1000億円強増やすとともに、M&Aによるインオーガニック(社内の経営資源に頼らないM&Aなどによる成長)な成長でさらに最大1000億円の売り上げを上積みする。

国内のアパレル市場は人口減少などの影響で長期的には縮小する見込みだが、雑貨市場やインバウンド(訪日観光客)市場などで開拓の余地があるほか、人口増加と経済成長が続く東南アジアでは事業の拡大が可能で、さらにEC(電子商取引)市場でも成長が見込めると判断した。

今後、国内店舗や海外事業、物流などに900億円を投じ、オーガニックな成長を推進する一方、M&Aに500億円以上、最大1000億円を投じ、グループにない特色を持つ企業を取り込み、2030年2月期に5000億円(2025年2月期は2931億1000万円)の売上高を目指す。

新商品カテゴリーや新サービスを獲得

アダストリアは国内外で1600を超えるリアル店舗網を構築しているほか、EC会員が2000万人近くに達していることや、55を超えるマルチブランドを展開していることなどが強みで、こうした資産を活用することで、2030年2月期にオーガニックで売上高を現在よりおよそ1000億円多い4000億円に高める。

一方、M&Aについては、ファッショ商品の通販サイトであるand STの強化と、グローバル事業の加速化を目標に対象企業を探索する。

and STの強化では、これまでのアパレルや雑貨、アクセサリ―などに加え、スポーツやアウトドア、海外ブランド商品などにも取り扱いを拡げる。これによって会員数を増やし、広告や金融、メディアなどの分野で新しいサービスを導入し会員に提案することで、LTV(ライフタイムバリュー=顧客が企業にもたらす利益)の向上につなげる。

こうした新しい商品カテゴリーを持つ企業や新サービスを手がける企業を対象にM&Aを検討する。

グローバル事業の加速化では、中国や香港、台湾で多数のブランドを活用した出店を進めるマルチブランド戦略を展開するほか、東南アジアではECが先行する形で、オンラインとオフラインの垣根をなくして顧客体験を向上させる手法であるOMO戦略を採る。

これら出店やECビジネス拡大につながる事業やサービスを提供している企業を対象に、タイやフィリピンをはじめ、その他のアジアの国々で対象企業を探索する。

過去のノウハウでシナジーを創出

アダストリアは2010年以降に6件のM&Aを適時開示しており、2012年の婦人服のトリニティーの子会社化や、2022年の子供服EC専業ブランド展開のオープンアンドナチュラルの子会社化などの実績がある。

これらM&Aによって、ECの強化や商品カテゴリーの拡大、在庫管理やDX(デジタル技術で生活やビジネスを変革する取り組み)活用などを実現してきた。

同社では、この過程で得られたノウハウを用いて、こらから実施するM&Aとシナジーを生みだし、成長を加速するとしており、5年後には新たなM&Aで500億円以上、最大1000億円の売り上げを計上する。

カジュアル衣料の「アダストリア」M&Aで通販サイトの強化とグローバル事業の加速を
アダストリアが2010年以降に適時開示したM&A

ホールディングス体制移行でM&Aを加速

矢野経済研究所が2024年10月に発表した「国内アパレル市場に関する調査」によると、コロナ禍によって2020年に大きく落ち込んだ国内アパレル市場は、その後3年間連続で拡大している。

この傾向は2025年ごろまで続き、コロナ禍前の市場規模の水準に向けて、回復基調で推移する見込みという。ただ、長期的には少子高齢化、人口減少などの影響を受けて穏やかに減少するとしている。

アダストリアでは、こうした状況を踏まえ、EC事業や海外事業でM&Aの手法を活用することにしたもので、2025年9月にホールディングス体制に移行するのに合わせて、M&Aをより一層推進するとしている。

文:M&A Online記者 松本亮一

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