
広告制作などを行うアマナ<2402>が、2022年12月期第3四半期に5億3,500万円の純損失(前年同期間は2億6,000万円の純損失)を計上し、2億5,400万円の債務超過に転落しました。
アマナは2020年12月期も債務超過に陥り、コクヨ<7984>や寺田倉庫(東京都品川区)などに対して第三者割当増資を実施。
2022年4月にストックフォト事業のアマナイメージズ(東京都品川区)を売却するなど、子会社の整理を進めて特別利益を計上し、急場をしのいでいます。
この記事では以下の情報が得られます。
・アマナの業績
・苦境に陥っている理由
繰り返される不正会計で信用が失墜
アマナは一般企業や広告代理店を主な顧客とし、広告のプランニングや制作を行っています。クライアントからの要望に柔軟に対応するため、クリエイター集団を集めたアマナフォトグラフィ(東京都品川区)やモデル・タレントを派遣するニーズプラス(東京都港区)などの子会社を持っています。

業績において潮目が大きく変化したのが2020年12月期。新型コロナウイルス感染拡大の影響で受注高が大幅に減少。売上高は前年同期比25.0%減の172億8,500万円まで縮小しました。

2020年12月期に15億2,300万円の営業損失(前年同期は9,700万円の営業利益)を出しています。
しかも、2020年に子会社アマナデザイン(東京都品川区)において、売上高の架空計上などの不正会計が発覚。2020年12月期は特別調査費用2億円を特別損失として計上します。それに加え、スタジオなどを退去したことで6億3,600万円の減損損失を出しました。
本業で15億円超の赤字を出した上に特別損失8億6,900万円が加わったことにより、24億3,300万円もの最終赤字となりました。
危機を救ったのがコクヨでした。第三者割当増資により、アマナは10億円を調達しました。コクヨは文房具やオフィス家具の製造から空間デザイン、コンサルティングなどを手掛けています。資本提携によって顧客の開拓や両社のサービスを相互活用し、事業拡大を目指すというものでした。
アマナは2021年12月期に1億6,300万円の営業利益を出し、回復に向けた一歩を踏み出します。しかし、それも長くは続きませんでした。
減収が続いていたアマナイメージズ
アマナはコロナ禍で変化した商環境に適応するため、組織のスリム化を図りました。2021年12月期上半期の稼働人員は961人でしたが、2022年12月期上半期は881人まで減少しています。スリム化を進めた影響により、固定費は46億5,300万円から44億1,900万円まで5.0%減少しました。
しかし、改革があまりに性急でした。稼働人員は961人から932人に抑制するという計画でしたが、実際は881人まで減ってしまったのです。
その結果、営業や制作進行を担う人材が不足。案件獲得やプロジェクト進行が計画通りに進まなくなりました。アマナは再び受注高を落とし、売上高が減少してしまいます。2022年12月期の売上高は前期比6.6%減の148億円を予想しています。
更に不正会計がまたも発覚。売上高の過大計上や原価の過少計上を行っていました。証券取引等監視委員会は2022年11月1日に課徴金納付命令を出したと発表しています。
アマナは2022年12月に特別調査委員会を設置しています。
2022年12月期は9億円の純損失を計上する見込みで、債務超過が解消される見込みはありません。
アマナは経営危機に陥った2021年から子会社や関連会社の整理を進めています。2021年2月にデジタルコンテンツを製作するアン(東京都品川区)の株式61%を、同社社長の兼子弘政氏に譲渡しました。
2021年12月には持分法適用関連会社で、グラフィックデザインを手掛けるミサイル・カンパニー(東京都品川区)の持株全てを同社代表の福田昭彦に売却しています。
そして2022年4月にストックフォトのアマナイメージズをNumazawa, Iizuka, and Nagai for Kimberley(東京都世田谷区)に売却しました。アマナは4億9,300万円の売却益を計上しています。
ストックフォト事業はWebサイトの作成や運用において不可欠なものとなりました。コンテンツマーケティングが流行してストックフォトには追い風が吹いていますが、アマナイメージズの売上高は縮小しています。

トップラインが伸びない理由はわかりませんが、無料の競合サービスが誕生し、写真のクオリティが高まっていることが背景にあると考えられます。
売上高の減少が続いていたのであれば、このM&Aは最善手だと言えるでしょう。本業の広告制作事業の立て直しが急務なためです。ただし、子会社を整理しても債務超過は解消できそうもありません。最大の課題は目先の資金調達です。繰り返された不正会計により、アマナの信用は失われました。資本性のある資金を調達し、債務超過を解消しなければなりません。
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