Web3.0とDAO|ブロックチェーンについて解説

ビズサプリの三木です。

私は以前、日本公認会計士協会の東京会というところで、当時出始めであったブロックチェーンの研究に関わっていたことがあります。

その際、ブロックチェーンは社会インフラになっていく可能性を感じる一方で、初めて耳にしたDAO(Decentralized Autonomous Organization)という考え方については「こんなの、実用できるのかなあ!?」と感じた記憶があります。

時代は変わり、ブロックチェーンは想像通り徐々に浸透し、Web3.0という新世代のインターネットが考案されつつあります。その中でDAOについても再びニュース等で耳にすることが出てきました。今日はWeb3.0やDAOについて、できるだけ簡単に考え方をご紹介していきます。

1.Web3.0とは

いま私たちが普段使っているインターネットは、Web2.0と呼ばれています。

少し前のインターネットであるWeb1.0では情報の流れが一方的(提供側はウェブサイトを作る、読み手はそれを読む)でした。それに対し、ツイッターやインスタグラムのフォロー、いいねボタン、視聴者側からの投稿やスーパーチャットの投げ銭機能など、双方向でのやり取りがなされるようになったものをWeb2.0と呼んでいます。

Web2.0は便利で楽しく、SNSを中心に新たなコミュニケーションの場として定着していますが、その裏で問題となっているのが巨大プラットフォーマーによる支配です。巨大プラットフォーマーの管理下で双方向のコミュニケーションを実現しているため、「管理者には悪意はない」「管理者はミスをしない」といったことが安全性の前提となっており、そこを担保するために膨大な法対応、セキュリティ対応を必要としています。

それだけでなく、巨大プラットフォーマーを擁した国が個人情報を独占し国際世論を動かしてしまうことや、国際課税の問題など、政治経済や安全保障の面でも課題が出てきています。

このようなWeb2.0に関わる問題意識から構想されたのがWeb3.0です。簡単に言えば特定の管理者を置かず、分散管理によって個人情報保護や情報の改ざん防止、本人確認を実現していく構想です。

そんなことが可能なのか・・・という疑問はあると思いますが、この構想に必要な技術やアイデアを与えたのがブロックチェーンです。

Web3.0により個人情報の保護や改ざん防止がプラットフォーマーの手を介することなく実現できるようになることが期待されています。

2.そもそもブロックチェーンとは?

Web3.0は私も含めまだ経験した人がおらず、空想の域を出ない部分も多々ありますが、その発想自体はブロックチェーンの考え方を引き延ばしただけともいえ、ブロックチェーンの仕組みが分かるとWeb3.0も理解しやすくなります。

ブロックチェーンでは、大量のデータをブロックと呼ばれる塊に切り分けて、多数の参加者がブロック同士を一定のルールに従ってつなげていきます。ブロックをつなげるのは「早い者勝ち」で、はやくルールに沿ってブロックをつなげた参加者は報酬(伝統的には仮想通貨=暗号資産)を得ることができます。

ブロックをつなげる際のルールとして、過去のブロック内のデータから計算される値を新規ブロックに書き込む形になっています。このルールにより、過去のデータを書き換えるためにはその後ろに連なるブロックをすべて書き換えなければならないため、ブロックが長く伸びると書き換えは実質的に不可能になります。(以上は典型的なブロックチェーンの例であり、様々な形態のものがあり得ます)

要するにブロックチェーンでは、多数の分散された参加者がルールに沿って競争をしているだけで自律的にデータが保全されています。

巨大な権限を持つ管理者はいません。単語で言えば「自律」「分散」がブロックチェーンの最大の特徴です。

インターネットの世界を、このブロックチェーンの発想で構築するのがWeb3.0です。トップダウンでプラットフォーマーが強大な権限をもって管理していくのではなく、参加者それぞれがシステム処理や活動を支えることでインターネットが維持されていくことになります。

現段階では具体的な手法が定まっていないものの、2022年6月7日、政府は「デジタル社会の実現に向けた重点計画」を閣議決定し、その基本戦略の1つとして「Web3.0の推進」を掲げており、本気であることはうかがえます。

3.DAO(Decentralized Autonomous Organization:分散型自律組織)

ブロックチェーンの発想である「自律」「分散」を、組織論に適用したのがDAOです。

最初、この発想を知ったときに「上司がいない会社!?愉快そうだけど、うまく回るの??そんなにビジネスは単純じゃないけど・・・・」と思いました。

実際その通りで、現在でも製造業やサービス業など、既存型のビジネス活動をそのままDAOに移行したケースは知っている限りありません。それでもDAOの考え方が的外れというわけではなく、学ぶべき要素は多数あります。

世界で初めて設立されたDAOは、その名も「The DAO」というものです。これは2016年にドイツで作られたVCファンドのようなもので、世界中の投資家がトークン(参加権と思ってもらえれば大丈夫です)を購入、集めた資金を参加権者による投票で投資、一連の仕組みをブロックチェーン上に構築、というものでした。

The DAOは、トークンの法的解釈の争い(証券に当たるかどうか)や技術的な課題(セキュリティ事故の発生)により頓挫してしまいます。しかしながらDAOの発想自体がうまくいかずに頓挫したわけではなく、この着想に目をつけてDAOは増えていきます。

例えば、分散型の金融(簡単に言えば貸し手と借り手の自動的なマッチングビジネス)や、オークションといった分野でDAOの方式による事業が立ち上がっています。

DAOの適用の仕方自体はいまだ模索が続いており、完全な無人化、管理者レスの仕組みにまでは至っていないようです。それでも従来型の組織にかわる可能性への期待値は大きく、DAOによるビジネスを目指して元ZOZO代表取締役の前澤友作氏が立ち上げたコミュニティ「MZDAO」には、2022年8月の1次応募に当初想定の1万人を大きく超える22万人が応募し、3時間で応募が締め切られました。話題性、期待の大きさがうかがえます。

4.おわりに

先にご紹介した「デジタル社会の実現に向けた重点計画」では、Web3.0の他にも、地方の活性化、デジタル化といった観点が多数盛り込まれています。地方のデジタル化や活性化は我が国の大きな課題ですが、ブロックチェーンの「自律」「分散」の考え方は古くから根付いていた相互扶助の仕組みに近く、デジタルという壁さえ超えられれば「自律」「分散」の考え方自体は我が国にはなじみやすいものではないかと思います。

ブロックチェーンとその周辺は今回ご紹介したもの以外にもNFTやDeFiなど様々な用語があって、「難しい」と感じられるかもしれません。確かに技術的な部分は難しく私も理解できないのですが、まずは根本的な発想である「自律」「分散」というベクトルを知ると、この辺の世界観が見えやすくなると思います。

文:三木 孝則(ビズサプリCEO 公認会計士)
株式会社ビズサプリ メルマガバックナンバー(vol.159 2022.9.7)より転載