今年に入って早くも2件目「大和ハウス」がM&Aを積極化する理由とは

大和ハウス工業<1925>がM&Aを活発化させている。2020年に入り2件のM&Aを発表しており、2019年に実施した主なM&Aの件数と早くも並んだ。

同社は2022年3月期を最終年とする中期経営計画の売上目標を4兆5500億円に設定しており、2020年3月期からの3年間で年間1300億円強、3年間合計で4000億円強の増収を自らに課す。

伸び率としては2019年3月期比9.8%増のため、それほど高い目標でないが、4000億円という売り上げを新たに生み出すのはそう簡単ではない。一気に売り上げの上積みが可能なM&Aに、この後も出番は多そうだ。

海外、介護の2分野で企業と事業を取得

大和ハウスは2月に米国子会社を通じて米国の総合不動産開発、戸建分譲事業、分譲マンション事業、複合施設開発などを手がけるトゥルーマーク・カンパニーズ(カリフォルニア州)株式の60%を取得して子会社化する。その後も事業成長資金として追加出資を行い、保有割合を高める。

大和ハウスは経済規模が大きく成長性が高いカリフォルニア州での事業拡大を検討していたが、同州での開発許可取得が難しいことから思うような事業展開ができていなかった。

一方、トゥルーマーク・カンパニーズは1988年からカリフォルニア州で宅地開発や建設事業で8000区画超を開発してきた実績を持つ。これまでは案件ごとに機関投資家から資金を集めていたが、自社資金を使ってより機動的な事業展開を行うビジネスモデルに今後数年かけて転換する計画。

大和ハウスは今回の子会社化を機に、トゥルーマーク・カンパニーズの米国西部でのさらなる事業拡大を支援することで、自社の北米事業の拡大を目指す。

このM&Aに先立ちグループ会社の大和リビングケア(東京都江東区)が、介護付き有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などを運営するライフコンプリート(佐賀市)とライフコンプリート東京(東京都立川市)の両社から会社分割で介護事業を譲り受けた。

大和ハウスグループでは首都圏を中心にサービス付き高齢者向け住宅ディーフェスタを14施設運営しており、今回の事業承継で新たに首都圏や九州の8施設が加わることになる。

大和ハウスは中期経営計画の基本方針の一つに海外展開の加速を掲げており、米国、オーストラリア、アジア諸国を中心に事業を拡大し、2022年3月期に海外事業で2019年3月期比43.6%増の4000億円の売り上げを目指している。

また介護事業についても一つの事業の柱に据えている。

2件のM&A案件については当該企業や当該事業の売り上げ規模を明らかにしていないが、トゥルーマーク・カンパニーズの住宅販売数が年間435戸、従業員数が95人であることや、譲り受けた介護施設が8施設であることなどを考えると、それほど大きな増収効果は見込めないことが予想される。

3年間という限られた時間の中で4000億円を生み出すためには、今後どのようなM&Aがでてくるだろうか。

【中期経営計画最終年の2022年3月期の目標と2019年3月期の実績】

  売上高 営業利益 当期純利益 2019年3月期 4兆1435億円 3721億円 2374億円 2022年3月期 4兆5500億円 4050億円 2670億円 伸び率 9.8% 8.8% 12.5%

文:M&A Online編集部

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