
FUJI<6134>は、電子部品実装装置(マウンター)と、半導体チップをリードフレーム(半導体チップを固定する金属枠)などに固定する装置(ダイボンダ)で事業領域を拡大するとともに、新たな成長分野の開拓に向け、M&Aや資本業務提携などを活用する。
自動車の電装化ニーズをはじめ、カメラやWi-Fi(無線でネットワークに接続する通信技術)などの無線通信などの分野で進むモジュール(いくつかの部品を集め機能を持たせた複合部品)化のニーズを取り込むほか、宅配ロッカーシステムや移乗サポートロボットなどの新事業を拡充するとともに新たなビジネスを創出することで、2024年3月期に落ち込んだ業績を再び成長路線に乗せるのが狙いだ。
こうした計画の実現に向けてM&Aなどの成長投資に2025年3月期~2027年3月期までの3年間に250億円を投じる計画で、2027年3月期に2024年3月期比1.41倍となる1800億円の売上高と、同2.45倍となる330億円の営業利益を目指す。
成長見込む自動車と半導体でM&Aを検討
マウンターの販売先のうち、自動車業界はカメラやセンサーを用いた車両全体の総合制御や電気自動車化などによって自動車の電装化が加速することが予想されており、FUJIでは車載ECU(エレクトロニックコントロールユニット=車両のあらゆるシステムを制御する装置)やセンサーの需要が、2030年までは年率7%ほどで伸びると見る。
モジュール化についても、カメラや無線通信機器をはじめ、電力変換や電源供給などに使用されるパワーモジュールや、電力増幅器、アンテナなどのRFデバイスなどでも需要は増加傾向にあり、同社ではモジュール部品市場は2030年までは年率4%ほどで増加すると見る。
さらにダイボンダの市場でも需要が拡大しているため、2028年までは年率11%ほどの伸びを予想する。
こうした成長産業の需要を取り込むために、代理店や子会社との連携による販売力の強化や新市場の開拓、生産能力の増強などに取り組む一方で、新しいマウンターやダイボンダを開発する計画で、この中でM&Aや資本業務提携、さらにはスタートアップとのオープンイノベーションなどに取り組む。
M&Aに関しては1994年に画像解析システムなどを手がけるエデックを子会社化(現エデックリンセイシステム)したのに続き、2018年に半導体製造装置のダイボンダを主力とするファスフォードテクノロジを子会社化するなどの実績があるが、直近のM&Aから6年ほど時間が経過している。
同社がどのタイミングでどの分野のM&Aを繰り出すのか、関心を集めそうだ。
4.6%まで低下したROEの回復目指す
FUJIは1959年に名古屋市内で工作機械メーカー富士機械製造として設立され、1978年に電子部品自動挿入機を完成したあと、2016年に宅配ロッカーシステム、移乗サポートロボットを完成。2018年には現在の社名であるFUJIに変更した。
現在はマウンターの大手として、車載ECUや、スマートフォンなどの通信機器向けに製品を販売しており、2030年に5000億円が見込まれるマウンター市場で、35%のシェア獲得を目指している。
さらにダイボンダや、旋盤(加工物を回転させ、固定した工具で切削する機械)などの工作機械をはじめ、次世代の柱となる事業の創出に向けて宅配ロッカーシステムなどのマウンター以外の製品の事業化を推進中だ。

2024年3月期は市場環境の変化に伴う販売数量の減少や材料費高騰などの影響で、売上高は1270億5900万円(前年度比17.1%減)、営業利益は134億2100万円(同50.5%減)と大幅な減収営業減益に陥った。
2025年3月期も改善の傾向は見られず売上高1270億円(同0.04%減)、営業利益130億円(同3.1%減)と微減収営業減益を見込む。
こうした状況から反転し、2027年3月期には売上高1800億円を見込んでおり、このうちマウンターなどのロボットソリューション事業で全体の81%ほどを、ダイボンダなどのセミコン事業で15%ほどを、工作機械や宅配ロッカーシステムなどのマシンツール・その他事業で4%ほどを売り上げる計画だ。
また部門利益は、ロボットソリューション事業で306億円を、セミコン事業で55億円、マシンツール・その他事業は黒字転換し5億円を見込む。
さらに同社は2024年3月期にROE(自己資本利益率=企業の自己資本に対する当期純利益の割合)が4.6%まで低下しており、これを2027年3月期に同社の株主資本コスト(株式を発行して調達する資金にかかるコスト)8~9%を上回る10%にまで引き上げるとしている。
こうした目標にM&Aはどこまで、影響を及ぼすことになるだろうか。

文:M&A Online記者 松本亮一
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