
高級レストランを運営するひらまつ<2764>が、2019年8月末に国内の投資ファンド・アドバンテッジパートナーズから第三者割当増資により20億円を調達しました。調達した資金は、2021年関西で開業予定の都市型ホテルに投資します。
同社は2017年7月にも公募増資と第三者割当増資により、60億円を調達していました。その際も資金はすべてホテルへの投資に充てています。
稼ぎ頭のウエディング事業が少子化により先細ることを懸念し、2015年にいっきに宿泊事業へと舵を切りました。実はそこから、業績は悪化の一途を辿っています。
そして基盤となるレストラン事業も迷走中。2017年に16億5000万円で買収した京都の高級料亭を、2019年1月に関連会社の平松総合研究所に早くも譲渡しました。
営業利益率はホテル事業進出前の1/4ほどに
ひらまつのホテル事業は、2015年に宿泊型レストラン「オーベルジュ・ド・ぷれざんす 桜井」の指定管理者になったことが始まりです。2016年に1泊13万円の超高級ホテル「THE HIRAMATSU HOTELS & RESORTS 賢島」をオープンしました。このホテルブランドは熱海、仙石原でも同じ年に開業しています。

2017年に京都の高級料亭「高台寺 土井」を買収して本格和食事業に進出。2018年に「THE HIRAMATSU HOTELS & RESORTS 宣野座」をオープンして沖縄進出を果たしました。

華々しく出店する姿とは裏腹に、業績は悪くなる一方です。ホテル事業進出前の2015年3月期の売上高は113億2900万円。
さらに、2019年3月期は売上高が109億4800万円(2015年3月期比4%減)、営業利益は7億4000万円(同73%減)となりました。この年の落ち込みは、レストラン「アイコニック」と「ブラッスリー ポール・ボキューズ ラ・メゾン」と料亭の撤退を決めたためです。
営業利益率は、2015年3月期の25.2%から6.7%まで落ち込んでしまったのです。
総資産回転率は1.2から0.5まで低下
ひらまつは、資金調達をしてホテルを出店すればするほど、稼ぐ力が失われてゆくように見えます。
下の表は2012年から2019年までの営業利益率、総資産利益率(ROA)、総資産回転率の推移を示したものです(2014年は9月期から3月期に移行したため、半年分の売上、利益なので数字が悪くなっています)。
ひらまつは2013年9月期に自社株買いを実施しました。その年の総資産回転率は1.2回転と全業種平均の1.1回転とほぼ横並びの数値になりました。
ホテルの出店費用を増資で賄い、固定資産を膨らませても稼げる体質になっていないのです。営業利益率、ROAを見ても、ホテルを出店し始めた2016年3月期を境に急速に悪化しているのがわかります。
営業利益率ROA総資産回転率 2012年9月期 17.4% 17.0% 0.97 2013年9月期 24.8% 30.4% 1.2 2014年3月期 25.2% 12.0% 0.47 2015年3月期 23.9% 16.8% 0.7 2016年3月期 20.0% 15.6% 0.77 2017年3月期 16.5% 9.4% 0.57 2018年3月期 13.0% 6.6% 0.51 2019年3月期 6.8% 3.4% 0.5※有価証券報告書をもとに筆者作成

サービス重視で都市型ホテルでも客室数は50に留まる
ひらまつのホテルは、客室が10~30室程度と極めて少ないです。しかもリゾート地が中心のため、季節指数に左右されやすい特徴があります。宿泊事業の弱点はそこです。今回20億円を調達して建設するホテルは都市型となります。期待はできそうですが、客室数は50室程度とやはり多くありません。

客室数を少なく抑えているのは、サービスを追求するひらまつブランドからくるものと考えられます。星野リゾートが旅館からビジネス、シティホテルに舵をきったように、ひらまつも収益性を追求する時期がきていると数字が語っているようです。
同社は2019年3月に一休.comの創業者・森正文氏に第三者割当増資を実施して、経営陣に引き込もうとしました。しかし直後に中止を決めています。
今回の資金調達のタイミングで、アドバンテッジアドバイザーズと提携すると発表しました。同社は、ひらまつへ出資をしたアドバンテッジパートナーズのグループ会社です。アドバンテッジは企業価値向上のプロフェッショナル。ひらまつのホテル事業をどう料理するのか、注目が集まっています。
麦とホップ@ビールを飲む理由