厨房機器の「ホシザキ」が世界ナンバーワン実現のために取った手法とは?

製氷機器や冷凍冷蔵機器などの業務用厨房機器大手のホシザキ<6465>がM&Aを活発化させている。2025年4月24日に殺菌効果のある電解次亜水の大型生成装置事業を買収。

同年1月には米国の厨房機器販売店の事業を買収した。さらに前年の2024年には4社、2022年には3社を傘下に収めている。同社はなぜ積極的にM&Aを進めているのか。

業務用厨房機器市場は堅調な伸び

ホシザキが属する業務用厨房機器市場は、コロナ禍の影響が薄れるとともに、インバウンド(訪日観光客)需要の拡大などにより主要ユーザーである飲食店の業績が回復しており、これに人手不足が加わり、今後省力化機器を中心に需要が高まることが予想されている。

ホシザキでは米国のトランプ政権による追加関税をはじめ、ウクライナや中東の情勢などによる影響が懸念されるものの、業務用厨房機器市場は堅調に推移すると見ており、日本では市場が緩やかに成長し、海外でも製氷機や冷蔵庫、ディスペンサー(液体定量吐出装置)などで安定した需要が見込めるとしている。

そうした環境の中「今後伸びる新たな市場で先手をとって世界ナンバーワンを目指す」ことを目標に掲げ、この目標実現のために、M&Aの手法を活用しているのだ。

飲食店以外の食関連領域のビジネスを拡大

ホシザキは1947年に、ミシンメーカーのブラザー工業の協力工場として名古屋市で星崎電機として設立された。

1965年に製氷機の販売を、1972年に冷蔵庫の販売を始め、現在の業務用厨房機器メーカーとしての業容を整えていった。

M&Aについては2006年に米国の飲料ディスペンサーメーカーの LANCER CORPORATIONを子会社化したのをはじめ、2006年に業務用厨房機器のハーネス加工(電線や端子などの加工)などを手がけるサンセイ電機(島根県雲南市)を、2008年にデンマークの冷蔵庫メーカーGRAM COMMERCIALを子会社化した。

その後もインドの冷蔵庫メーカー、ブラジルのフードサービス機器(調理機器やドリンクディスペンサーなどの機器)メーカー、中国の冷蔵庫メーカー、マレーシアのフードサービス機器販売会社、トルコの業務用厨房機器メーカーなどの海外企業を次々に傘下に収めるなど、M&Aに前向きに取り組んできた。

これが2020年以降はさらに勢いが増し、同社が公表している沿革やニュースリリースによると、2022年はイタリアの業務用製氷機メーカー、日本の食品充填機メーカー、中国の厨房設計、施工事業会社の3社を子会社化。

2024年はトルコのフードサービス機器メーカー、フィリピンのフードサービス機器輸入販売会社2社、ベトナムの産業用冷蔵、食品加工設備メーカーの合わせて4社を子会社化した。

さらに2025年に製氷機や冷蔵機器などの販売事業を譲り受けた米国のCannon Marketingは、30年以上ホシザキの販売代理店だった企業で、事業譲受を機に米国の南東部地域でのさらなる販売拡大を目指す。

また、リビングテクノロジー(東京都千代田区)から事業を譲り受ける電解次亜水は、殺菌や除菌などの衛生管理に利用される電解水の一つで、この事業譲受によって大流量を供給できる大型電解水生成装置の提供が可能になるため、飲食店以外の食関連領域のビジネス拡大を加速させるとしている。

1年前倒しで目標達成へ

ホシザキは「世界ナンバーワンを目指す」との目標を定めた5カ年(2022年12月期~2026年12月)の経営ビジョンの中で、この目的を達成するために5年間に1250億円の投資枠を設け、 M&Aを積極化させる方針を打ち出しており、これに沿って新興国を中心に着実にM&Aを増加させている。

こうした取り組みで2026年12月期に売上高4500億円を目指しており、このうち500億円分をこうしたM&Aで稼ぎ出す計画だ。

2025年12月期は売上高4600億円(同3.3%増)を予想しており、予想通りに着地すれば1年前倒しで計画を達成できる見通し。

2025年のM&Aはすでに2件を実施しており、これまでのペースを上回る状況にある。今後のM&Aによっては、2025年12月期の売上高が上振れする可能性もありそうだ。

厨房機器の「ホシザキ」が世界ナンバーワン実現のために取った手法とは?
ホシザキの沿革と主なM&A

文:M&A Online記者 松本亮一

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