

Ira Kalish
Deloitte Touche Tomatsu
チーフエコノミスト
経済問題とビジネス戦略に関するデロイトのリーダーの1人。グローバル経済をテーマに企業や貿易団体への講演も多数行っている。
ドイツを中心に企業・家計双方においてユーロ圏の信用状況が悪化
欧州中央銀行(ECB)の最新の銀行貸出調査によると、2024年の第1四半期において、ユーロ圏の信用状況は悪化しました。企業・家計双方の信用状況が悪化し、企業の融資需要が低下したことが背景にあります。これは今後数カ月の経済活動にとって良い兆候ではなく、ECBに早期の金融緩和を求める圧力が強まることが予想されます。
同期間において、融資を希望した企業へのユーロ圏における与信基準はわずかに悪化しましたが、これはもっぱらドイツでの悪化によるものであり、ユーロ圏の他地域での企業の与信基準に変化はありませんでした。一方、企業の融資需要に関して、ECBは大幅に減少したとしており、今後数カ月の投資支出は芳しくないことが示唆されます。
家計向けの与信に関してECBは「2021年第4四半期以降初めて、家計向け住宅ローン融資の与信基準が緩やかに緩和した」と報告した一方、「消費者信用の与信基準は一層引き締まった」とも述べました。ユーロ圏における消費者信用への需要はわずかに増加し、ドイツでの大幅増加をフランスでの大幅減少が相殺しました。
ECBは政策金利の据え置きを決定も、6月の利下げ転換を示唆
直近数カ月、ユーロ圏のインフレは大幅に減速しており、需要の低迷も続いていたため、ECBが近く基準金利の引き下げに踏み切るとの期待がありました。その期待はまだ残っていますが、4月11日に開催された会合では、政策金利を過去最高水準の4.0%に据え置くことを決定し、今後2カ月間は動きがないと想定されます。
この決定は全会一致ではありませんでした。ECBのラガルド総裁によれば、即時の利下げに賛成した委員は少数派であったとした一方で、6月会合にて利下げを検討することで大筋合意したと述べました。
金利据え置きの決定は予想外ではなかったため、資産価格が大きく動くことはありませんでした。
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Deloitte Global Economist Networkについて
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