
化粧品大手のコーセー<4922>が、M&Aや提携によるグローバルサウス(ASEAN=東南アジア諸国連合、インド)市場の開拓に乗り出した。
「脱・自前」による成長の形として「地域に根付いたブランドの新たな獲得」を経営目標に掲げており、この方針に沿ってM&Aや提携を積極的に進める計画だ。
すでに2024年12月にタイの化粧品会社PURI CO., LTD.(バンコク)を子会社化したのに続き、2025年1月14日にはインドの化粧品会社Foxtale Consumer Private Limited(ムンバイ)の10%の株式を取得し、戦略的提携の契約を結んだ。
こうしたグローバルサウスでのM&Aや提携による事業基盤を強化する取り組みによって、2023年12月期に3%だった同地域の売上高構成比を2030年12月期には12%にまで高める。今後もグローバルサウスでのM&Aや提携は続きそうだ。
中華圏市場偏重から転換
コーセーはコロナ禍の影響でここ数年はマイナス成長を余儀なくされたが、2030年に向け新たな成長軌道に乗るための方策の一つとして「グローバル展開の加速」を掲げている。
これまでもグローバル展開には取り組んでおり、中国を中心とした中華圏で海外比率を高めてきたが、このところ中国市場が振るわないことから、方針を転換。次の成長領域としてグローバルサウスでの既存事業の成長やインオーガニック(M&Aや提携で成長を目指す戦略)な成長を目指すことにした。
ASEAN加盟国であるタイのPURIは、化粧品ブランド「PAÑPURI」を展開しているほかフレグランスの販売やスパ、ウェルネス事業などを手がけており、2023年12月の売上高は約25億円、営業利益は約5億円だった。
コーセーは同社の株式79.89%を取得しており、残りの株式についても3~5年をめどに取得する予定。コーセーが適時開示した企業買収は2014年に子会社化した米国の化粧品販売会社タルト以来10年ぶりとなる。
一方、インドのFoxtaleは、スキンケアブランド「foxtale」を展開しており、消費者の声を聞きながら試作を繰り返して新商品を開発、販売するスタイルで急成長しているという。
コーセーはFoxtaleのマーケティングの知見やノウハウを活用し、インド市場の開拓を加速するほか、今後Foxtaleと合弁会社を設立し、共同事業も展開する。
こうしたグローバルサウスでのM&Aや提携によって同地域での売上高構成比を高めることなどで、2023年12月期に37%だった海外売上高比率を2030年12月に50%に引き上げる。
10年ぶりの企業買収の成果は
コーセーはコロナ禍の影響で2021年3月期に売上高、営業利益ともに大きく落ち込んだ。
2022年12月期は増収営業増益に転じたが、翌2023年12月期には中国などの不振により営業減益を余儀なくされた。
2024年12月期は引き続き中国が振るわないものの、米国子会社のタルトが好調に推移しており、売上高3200億円(前年度比6.5%増)、営業利益180億円(同12.6%増)の増収営業増益を見込む。
計画通りコーセーは新たな成長軌道に乗ることができるだろうか。タルト以来のM&AとなったタイのPURIをはじめ、提携したインドのFoxtaleとの連携の成果や、グローバルサウスでの新たなM&Aや提携の動向に関心が集まりそうだ。

文:M&A Online記者 松本亮一
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