
フードロス削減に特化した食品EC(電子商取引)サイト「Kuradashi」を運営するクラダシ<5884>は、M&Aなどの成長投資枠をそれまでの30億円から44億円に引き上げた。
2025年8月に実施した日本郵便への第三者割当増資と、融資枠の拡大などで資金を確保する。
これら資金でM&Aを含む新規事業への投資で非連続成長を実現し、2年後の2027年6月期には売上高を現在(2025年6月期)の3.25倍の100億円に引き上げる。
成長投資の総額は2倍に
クラダシは2024年8月に公表した2025年6月期から2027年6月期までの3カ年の中期経営計画で、30億円としていた同中期計画期間中の成長投資枠を、2025年9月26日に公表した「事業計画及び成長可能性に関する事項」で44億円に引き上げた。
この44億円とは別に、すでに15億円分は実施済みとしており、これらを合わせた成長投資の総額は当初計画の2倍ほどになる。
同社は「事業計画及び成長可能性に関する事項」の中で、改めて既存事業の拡大、新規事業の立ち上げに加え、M&Aの活用により事業の成長を加速し、非連続成長を目指すとの考えを示した。
すでに中期経営計画の初年度となる2025年6月期に、冷凍弁当の宅配サービス「Dr.つるかめキッチン」を運営するクロスエッジ(東京都品川区)と、オンライン料理教室を展開するL’ATELIER de SHIORI(東京都渋谷区)の2社の子会社化を実施。
今後は、既存の事業領域と新規の事業領域で、シナジーのある同業種や、注力業種を中心に探索を行う方針で、既存事業では商品の製造や設計を手がける企業や、食品ECに関わる企業を、新規事業ではECサイト運営やマーケティングコンサルティング、広告、倉庫、運送などの企業に対象を絞る。
また新規事業については、2025年5月に再生可能エネルギー事業(系統用蓄電池事業)に参入し、土地や高圧系統用蓄電所、付帯設備などを取得している。
同社では「系統電力網の安定化やカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させる取り組み)の実現に向け、さらなる再生可能エネルギーの導入拡大に貢献する」としており、同分野でのM&Aの可能性もありそうだ。
フードロス市場は8500億円
クラダシは2014年に設立したグラウクスが前身で、翌2015年に「Kuradashi」のサービスを開始し、2019年にクラダシに社名を変更した。
ECサイトの「Kuradashi」は、賞味期限が近い食品や季節商品などのほか、パッケージの汚れやキズなどが要因で、通常の流通ルートでの販売が困難な商品を買い取り、ネットで販売している。
同社では、これら通常の流通ルートでの販売が困難になった商品の価値を表す、フードロス市場は8500億円に達すると見る。
同社の2025年6月期の売上高は30億7500万円(営業損益は広告宣伝費の増加やM&A費用の発生などにより6300万円の赤字)のため、成長の余地は大きいとしている。
日本郵便との資本業務提携(日本郵便がクラダシ株式の約10%を取得)では、今後、日本郵便の持つ全国の物流センターや物流ネットワーク、全国の拠点(郵便局)、カタログ販売などの資産を活用し「日本一のEC事業者を目指す」という。
こうした取り組みにより、2年間で事業規模を3倍に急拡大することを目指しており、その実現に向けては、非連続な成長を可能にするM&Aが鍵となりそうだ。

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文:M&A Online記者 松本亮一
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