マツキヨココカラ&カンパニー、「ウエルシア・ツルハ連合」発足を前にM&Aを“再起動”

ドラッグストア大手のマツキヨココカラ&カンパニーがM&Aにアクセルを踏み込んでいる。8月、9月と2カ月連続で買収を発表し、3月の案件と合わせて今年のM&Aは3件となった。

同社は経営統合で2021年10月に発足後、しばらくM&Aから遠ざかっていたが、ここへきて“再起動”した形だ。

10月で経営統合から4年

マツキヨココカラ&カンパニーは名前が示す通り、マツモトキヨシホールディングスとココカラファインを母体とし、この10月で経営統合からちょうど4年。

旧マツモトキヨシ、旧ココカラファインともM&Aに積極的で、統合前の10年間だけで両社合わせて約40件を数えていたが、統合を境に途絶えていた。両社グループの融合や統合シナジー(相乗効果)の創出を最優先に取り組んできたためだ。

そうした中、マツキヨココカラが発足して初のM&Aは昨年11月。化粧品メディア「LIPS」を運営するApp Brew(東京都文京区)の買収を発表した。毎日数千件の口コミが投稿される「LIPS」に蓄積されたユーザーの嗜好・行動データをグループのデータ基盤と統合することで、コスメ関連のサービスや商品提案の精度向上につなげることを狙いとした。

続く今年3月には小規模案件ながら、「丘の上薬局」の屋号で調剤薬局・ドラックストア・調剤薬局4店舗を運営するティー・エム・シー(東京都多摩市)を傘下に収めると発表。M&Aの本格再開に向けた動きが出ていた。

新中計を1年前倒しでスタート

マツキヨココカラの2025年3月期業績は売上高3.8%増の1兆616億円、営業利益8.4%増の820億円とそろって最高を更新した。

発足3年目をめどに統合効果として300億円の収益改善(営業利益ベース)を目指していたが、仕入れ・物流の効率化や情報システムの一元化などを通じて達成。営業利益率も7.7%と目標の7%以上を確保した。

これを踏まえ、統合後に策定した旧中期経営計画(5カ年)を1年前倒しで終了し、2026年3月期を初年度とする新中期経営計画(6カ年)をスタートした。

マツキヨココカラ&カンパニー、「ウエルシア・ツルハ連合」発足を前にM&Aを“再起動”

九州地場大手の新生堂薬局を買収へ

新中計では最終年度の2031年3月期に売上高1兆3000億円+α(プラスアルファ)を掲げ、このうち東南アジア地域を中心とする海外売上高で1000億円を目指す。「α」部分はM&Aを基本とする。

向こう6年間で成長投資として2000億~2200億円の枠を設定。出店・改装に1000億円、システムなどIT投資に600億円としており、残る600億円程度がM&Aなどに充当される見通しだ。

新中計始動後のM&Aの第一弾として8月半ば、九州北部でドラックストア・調剤薬局を約120店舗展開する地場大手の新生堂薬局(福岡市)の子会社化(10月1日付)を発表した。新生堂薬局の直近売上高は287億円。買収金額は明らかにしていない。

さらに9月下旬には、ドラックストア・調剤薬局7店舗を運営するシグマ薬品(大阪府八尾市)を子会社化すると発表したばかり。買収完了は2026年1月。

「ウエルシア・ツルハ連合」への対抗軸は?

マツモトキヨシはかつてドラッグストア最大手として20年以上にわたって業界に君臨した歴史を持つ。だが、ココカラファインとの経営統合を決めた当時は業界6番手まで順位を落としていた。

ウエルシアホールディングスに首位の座を明け渡したのは2017年。ウエルシアはこの3年前、イオンの傘下に入り、M&Aによる規模拡大を強力に推し進めた。そして2位につけたのは北海道発祥で全国に店舗網を拡大するツルハホールディングスだった。

マツモトキヨシにとってココカラファインとの統合は業界トップ返り咲きへの足掛かりとする狙いが込められていた。統合でウエルシアにあと一歩と迫りながら、その目論見が外れることになった。

マツキヨココカラ&カンパニー、「ウエルシア・ツルハ連合」発足を前にM&Aを“再起動”
「メガドラッグ」誕生へ、12月に予定されるウエルシア・ツルハの経営統合

新生・マツキヨココカラの前に立ちはだかったのが12月に予定される「ウエルシア・ツルハ連合」の誕生だ。ウエルシアとツルハの統合新会社の売上高は2.3兆円。マツキヨココカラの2倍で、国内で圧倒的な規模の「メガドラッグ」が出現する。

マツキヨココカラとしてウエルシア・ツルハ連合への対抗軸とどう形作っていくのか。“再起動”が鮮明になった同社のM&A戦略が要ウオッチとなりそうだ。

文:M&A Online

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