
MCo(東京都中央区)は日本の独立系メザニンファンドで、MBOなどの案件に対してメザニンファイナンスを提供するファンドの組成、運用を行っています。2021年12月に650億円の7号ファンドを組成しました。
メザニンは、PEファンドが買収資金を調達するために活用するケースが多くなっています。劣後ローンを活用することにより、税務メリットの享受や対象会社の負担軽減などを図ることができます。
PEファンドの活躍を裏で支えるMCoとは、どのような会社なのでしょうか?この記事では以下の情報が得られます。
・MCoの概要
・メザニンファンドの役割とメリット
ミドルリスク・ミドルリターンのメザニン投資
MCoは2005年10月に設立された株式会社メザニンが前身となる会社。メザニンは、M&AアドバイザリーファームのGCAが100%出資して設立されました。当初は、GCAを設立した佐山展生氏と山本礼二郎氏が代表に就任していました。
2006年5月に複数の機関投資家との間でMCo投資事業有限責任組合契約を締結し、日本初の本格的な独立系メザニン・ファンドを設立しました。第1次出資コミットメント総額は560億円に設定されていました。
MCoは6号ファンドまでで延べ100社から資金を集め、総額2000億円を運用しています。
メザニンとは、英語で中二階を指します。ハイリスク・ハイリターンの株式投資、ローリスク・ローリターンの債券投資のちょうど中間に位置し、ミドルリスク・ミドルリターンであるという特徴があります。メザニンファンドは劣後ローン、劣後債、優先株への投資が中心となります。
メザニン出資を受ける側にとっては、既存株主の議決権希薄化の回避、柔軟な償還・エグジット方法の設定などのメリットがあります。資本政策に合わせた柔軟な設計も可能です。
劣後ローンは返済順位が他の債権に劣後するもので、借入金が負債ではなく自己資本とみなされるメリットがあります。優先株と違い、他のデット・ファイナンスと同様の節税メリットが得られる点も特徴の一つです。
規模の大きいM&AではLBOローンが活用されます。MCoはLBOスキームでも活躍します。銀行からの融資にプラスして、優先株や劣後ローンによる資金を調達することにより、大型の企業買収ができるためです。
総合メディカルの非上場化を支援
2020年3月に、PSMホールディングス(東京都千代田区)による、総合メディカル(福岡市)のTOBが成立しました。総合メディカルは医業経営に特化したコンサルティングサービスを提供する会社。PSMホールディングスは、PEファンドのポラリス・キャピタル・グループ(東京都千代田区)が総合メディカルを買収するために設立した会社です。このTOBはポラリスの支援を受けたMBO(経営陣による買収)でした。
このM&AにMCoが資金を提供しています。
総合メディカルの買収総額は760億円程度と見られています。このとき、ポラリスに関連するファンドなどから315億5000万円の出資を受けた他、MCoや三菱UFJ銀行、みずほ銀行などから総額790億円を上限とした融資を受ける契約を取り付けていました。
Jカーブ効果が緩和できるメザニン投資
メザニン投資は、投資家にとって毎期キャッシュフロー収入が期待できるというメリットがあります。
プライベートエクイティ投資の場合、投資開始当初は収益の計上が行われず、コスト負担の影響でキャッシュフローがマイナスになることがあります。その後、時間が経過すると収益が上がるため、キャッシュフローはプラスになることが期待できますが、このJカーブ効果を嫌う投資家も少なくありません。
MCoは投資金額50億円、投資期間3年のシミュレーションを公開しています。それによると、メザニン投資のIRRは13.4%となりました。
■メザニン投資のシミュレーション

メザニン投資はミドルリスク・ミドルリターンであることから、投資家にとってはポートフォリオを強固なものにするという視点でも魅力があります。資金支援を受ける側にとっては、既存株主の議決権の希薄化を防げることや、借入金を自己資本と同等のものとみなされること、大規模なM&Aが行えるなどのメリットがあります。
MCoはその中心にいる投資ファンドだと言えるでしょう。
なお、MCoは2021年3月にMBOを実施し、GCAとの資本関係を解消しました。現在の代表取締役は笹山幸嗣氏。
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