
上下水処理設備大手のメタウォーター<9551>が、欧米でのM&Aを活発化させている。
2025年4月に米国の汚泥処理エンジニアリング会社Schwing Biosetを子会社化したのに続き、2025年10月7日にはドイツの下水処理や汚泥処理エンジニアリング会社E&P Anlagenbauを子会社化した。
ここ数年M&Aから遠ざかっていたため、4月の米国社の買収は、オランダの水処理エンジニアリング会社のRood Wit Blauw Holdingを子会社化した2020年11月以来となる。
同社は海外事業を企業成長の牽引役と位置付けており、今後も欧米でのM&Aが続く可能性がありそうだ。
欧米企業との連携強化でシナジーを創出
メタウォーターは2024年4月に、2028年3月期を最終年とする4年間の中期経営計画を策定。この中で欧米を戦略エリアと位置づけ、強い商材と技術力を軸にした現地企業との連携強化によるシナジーの創出を、海外事業の成長戦略として掲げていた。
北米は水不足、老朽化、高度処理需要が課題となっており、需要の増加が見込める再生水事業の強化などに、欧州は規制厳格化、老朽化、高度処理需要が課題となっており、需要の増加が見込める微量汚染物質処理事業の強化などに取り組む計画だ。
およそ4年半ぶりの企業買収となった米国のSchwing Biosetは、汚泥処理に関するエンジニアリングとサービスを北米全域と南米で展開している。
北米では、人口増加に伴い汚泥発生量の増加が見込まれており、今後も安定的な市場の成長が予想されることから、子会社化に踏み切った。
ドイツのE&P Anlagenbauは、環境規制の強化が進むドイツの下水処理場に、窒素やリンの処理技術などの納入実績を持っており、E&P Anlagenbauが持つリソースを生かして、シナジーを高め、欧州事業を強化、拡大する。
設計、建設、運転、維持管理を包括的に展開
メタウォーターは、日本碍子と富士電機システムズの水環境部門を承継したNGK水環境システムズと富士電機水環境システムズが、2008年に合併して誕生した企業。
「設計、建設、運転、維持管理を包括的に展開するバリューチェーンが強み」としており、現在は売上高のそれぞれ30%ほどを占める環境エンジニアリング事業(浄水場、下水処理場、ごみ処理施設向け機械設備などの設計、建設、保守など)と、システムソリューション事業(浄水場、下水処理場、ごみ処理施設向け電気設備などの設計、建設、保守など)の2部門を中核とする。
これに売上高の20%ほどを占める運営事業(浄水場、下水処理場、ごみ処理施設の運営など)と、海外事業(海外の浄水場、下水処理場、ごみ処理施設向け設備などの設計、建設、保守など)の2部門が加わり、合わせて4部門で事業を構成している。
今後は環境エンジニアリング事業とシステムソリューション事業で堅実な成長を見込み、運営事業と海外事業が売り上げの成長を担う計画で、中でも海外事業では大きな伸びを予想する。
国内の上下水道市場では、人口減少などに伴う自治体の財政難や技術者不足のほか、施設、設備の老朽化、地震や台風、集中豪雨などの自然災害への対策などの課題を抱えており、一定の需要は見込めるものの、急激な成長は難しい状況にある。
一方、海外の上下水道などの水処理市場では、需要の拡大が見込まれており、メタウォーターと同様に、海外市場の開拓に取り組む事例は少なくない。
JFEエンジニアリング(東京都千代田区)は、2025年8月にベトナムのハノイで下水処理場を完工した。同社では「今後も海外マーケットで上下水処理プラントのリーディングカンパニーとして、海外諸国の生活環境の改善に貢献する」としている。
また神鋼環境ソリューション(神戸市)は2024年12月に、カンボジアのプノンペンで浄水場を完工した。同社では「引き続き、カンボジアを含めた東南アジア地域での水処理ビジネスを推進する」という。
2年前倒しで達成へ
メタウォーターは、4年間(2025年3月期~2028年3月期)の中期経営計画期間中に、欧米でのM&Aをはじめ研究開発や官民連携による水処理施設の運営や更新などに400億円を投じる。
こうした成長投資の成果を見込み、2028年3月期には売上高2000億円(2025年3月期比11.6%増)、営業利益130億円(同22.3%増)の目標を掲げている。
中期経営計画初年度の2025年3月期は、8.2%の増収、7.3%の営業増益と好調に推移した結果、2026年3月期は、売上高2000億円(前年度比11.7%増)、営業利益115億円(同8.2%増)を予想する。実現すれば売上高は2年前倒しで達成できることになる。
このため同社では中期経営計画の目標数値の見直しを予定しており、この検討の際には欧米でのM&Aが、少なからず影響を与えることになりそうだ。

文:M&A Online記者 松本亮一
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