自動車部品メーカーの「オーハシテクニカ」新しい加工技術の開発で競争力を強化

独立系の中堅自動車部品メーカーであるオーハシテクニカ<7628>は、成長戦略の一つとして新しい加工技術の開発による競争力の強化に乗り出した。

材料費やエネルギ―費、物流費、人件費などのコストの上昇や、中国の日系自動車メーカー向け売上高の減少などよって利益が低迷しており、業績や企業価値を高めるためには、新しい加工技術の開発による競争力の強化が不可欠と判断した。

同社ではこの目標を達成するための手段の一つとしてM&Aを活用する方針で、2025年3月期から2028年3月期までの4年間に、M&Aをはじめとする成長投資に25億円を投資する予定だ。

次世代自動車や環境課題に対応する加工技術を開発

自動車業界は中国での売れ行きが減少しているのに加え、今後は米国での関税引き上げなどの問題もあり先行きが不透明な状況にある。

オーハシテクニカはエンジンやブレーキ、ボディ関連の自動車部品を手がけており、成長戦略として独自技術の進化や新たな加工技術の開発に取り組むのと並行して、独自の技術力を持つ企業との連携などによって新たな加工技術の開発を進めるとの方針を持つ。

加工技術については、これまでにもアルミの板鍛造技術の開発などに取り組んきたほか、現在も自動車の電動化や自動運転、燃料電池車などの次世代自動車の市場ニーズに対応する加工技術や、カーボンニュートラルなどの環境課題に対応する加工技術の開発などをテーマに掲げており、こうした取り組みの中でM&Aの活用が見込まれる。

過去のM&Aは1件

同社が公表している沿革では、過去に実施したM&Aとしてオーハシ技研工業を子会社化した1件がある。

オーハシ技研工業は1946年に名古屋市内で機械加工を手がける協栄鉄工として創業したのが始まりで、2007年にオーハシテクニカが協栄鉄工の事業を譲り受け、オーハシ技研工業として再スタートした。

現在は冷間鍛造、冷間圧造、精密機械加工によるギアやシャフトなどの自動車部品をはじめ、油圧関連部品や工作機械関連部品を製造している。

このほかにも、子会社化までには至っていないが、2014年にパイプ加工などを手がけるテーケーに資本参加し持分法適用関連会社化したほか、2017年にも金属部品のプレス、溶接加工などを手がけるナカヒョウに資本参加し持分法適用関連会社化した事例がある。

テーケーとは共同で、新しい加工技術である圧入プロジェクション接合(固相拡散接合法)を開発した実績がある。同技術は他の溶接法と比べると生産性が高く、コストが低いため多くの自動車メーカーが同接合法による部品を採用しているという。

ROEをコロナ禍前の水準に

オーハシテクニカは、コロナ禍の影響で2021年3月期に、業績が大きく悪化。その後は円安の効果などもあり売上高は増加傾向にあるものの、利益は低迷しており、ROE(自己資本当期純利益率)は2024年3月期に2.80%となるなど低位に留まっている。

この結果、ROEがWACC(加重平均資本コスト、6%台後半)を下回る状態が続いており、同社では「資本コストに見合う株主価値を生み出していない状況にある」としている。

この状況を改善するために、生産性の向上や自動化などに取り組むとともに、M&Aなどによって競争力を強化することにしたもので、これによって2028年3月期は売上高450億円(2020年3月期は359億500万円)、営業利益41億5000万円(同32億6500万円)を計画。

ROEについては8.2%(同8%)とコロナ禍前の水準への回復を目指す。

ROEの回復につながるような、同社にとって2件目となるM&Aはいつ実現するだろうか。

自動車部品メーカーの「オーハシテクニカ」新しい加工技術の開発で競争力を強化
オーハシテクニカの業績推移
2025/3は予想、2026/3、2027/3、2028/3は計画

文:M&A Online記者 松本亮一

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