「積水化学」首都圏の狭小地住宅で攻勢 ベンハウス買収で

化学品や住宅などを手がける積水化学工業<4204>は、狭小地での建築実績を持ち首都圏で不動産事業を展開するベンハウス(横浜市)を子会社化した。

積水化学が手がける鉄骨ユニット住宅は長寿命や環境性能の高さに強みがあるものの、狭小地などへの供給が難しく、首都圏でのシェアが高くないため、同エリアでの事業の拡大のためM&Aに踏み切った。

狭小地建築工法やアセットビジネスを活用

ベンハウスは、横浜市、川崎市、湘南エリア、東京23区を中心に、土地の仕入れから住宅用地の造成、販売までを一貫して行う総合不動産会社で、狭小地での建築工法やアセットビジネス(土地、建物などを保有、運用、収益化するビジネス)のノウハウを保有しており、シナジーが見込めると判断した。2025年3月期の売上高は91億円だった。

今後、ベンハウスとの協業、融合を進め、積水化学の資金力を活かしたベンハウスの成長加速や、ベンハウスが保有する狭小地建築工法やアセットビジネスなどの強みやノウハウを活かした事業強化に取り組む。

まずは、宅地の立地や形状などに応じて、ユニット工法とベンハウスの木造の工法を使い分け、効率的な販売ネットワークを構築するほか、両社の施工能力を共有することで、職人不足への対応と施工時期の平準化を進める。

また、ベンハウスのノウハウを活用し、積水化学グループの施工物件だけでなく、他社が建築した建物にも賃貸管理事業を拡大する。

首都圏で住宅や宅地を安定的に供給

日本の住宅着工数は、少子高齢化や人口減少、建築資材の価格上昇などの影響で、縮小が見込まれている。

国土交通省が2025年1月に発表した「建築着工統計調査報告」によると、2024年の新設住宅着工戸数は前年度比3.3%減の79万戸ほどで、2年連続のマイナスとなった。

そうした状況の中、積水化学では首都圏などの大都市圏では人口超過傾向が続いており、住宅や宅地の安定的な供給が求められていると見て、首都圏で住宅や宅地を取り扱う企業を探していた。

また住宅業界では新設住宅着工戸数の減少に伴い、リフォームやリノベーションなどの住宅ストックビジネスへの関心が高まっている。

積水化学でも、成長領域である不動産管理やリフォームなどで事業の拡大を目指しており、2024年11月には、北海道でリフォーム事業を展開するクレアスト(札幌市)を子会社化した実績がある。

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5期連続の増収営業増益に

積水化学は現在、総売上高の40%ほどを占める住宅カンパニー(新築住宅、リフォーム、まちづくりなど)のほかに、同20%弱の環境・ライフラインカンパニー(給排水管、建材、浴室ユニットなど)、同35%ほどの高機能プラスチックスカンパニー(半導体材料、車両用樹脂、建設用資材など)、10%弱のメディカル事業(検査薬、医薬品原薬、創薬支援など)で事業を構成している。

2025年3月期は売上高1兆2977億5400万円(前年度比3.3%増)、営業利益1079億5100万円(同14.4%増)の増収営業増益となった。

2026年3月期は5.1%の増収、6.5%の営業増益を見込んでおり、実現すれば2022年3月期以来5期連続の増収営業増益となる。

これにベンハウスの業績やシナジーなどのM&Aの成果が加わることになる。

「積水化学」首都圏の狭小地住宅で攻勢 ベンハウス買収で
積水化学工業の業績推移
2026/3は予想

文:M&A Online記者 松本亮一

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