「和食さと」「にぎり長次郎」に次ぐブランド開拓へ SRSホールディングスの候補は?

「和食さと」や「にぎり長次郎」などを展開する外食中堅のSRSホールディングス<8163>は、和食さと、にぎり長次郎に次ぐ経営の柱となる第3、第4の外食ブランドの開拓に乗り出した。

物価高の中でも底堅い需要が見込める低価格帯の業態で、既存ブランドの事業拡大や、M&Aによる新ブランドの獲得で実現を目指す計画だ。

「得得」「かつや」が有力候補か

SRSホールディングスの主力の和食さと(和食レストラン、中価格帯)は、2025年3月期末の店舗数は198店で、同期の売上高は279億700万円、2番手のにぎり長次郎(グルメ寿司、高価格帯)の同期の店舗数は72店で、売上高は140億2800万円だった。

店舗数でこれに次ぐのが家族亭(そば、和食、中価格帯)の59店で、得得・とくとく(うどん、低価格帯)の57店、かつや(かつ丼、低価格帯)51店と続く。

家族亭は同社では中価格帯のブランドとして位置付けているため、低価格帯の得得・とくとくと、かつやが新たな収益の柱として注力するブランドの有力な候補となりそうだ。

同社ではこれらブランドについて業態改革や収益性改善を進めることで「ブランド競争力を高め、既存エリアを中心に店舗数を拡大する」としている。

海外企業買収の可能性も

一方、M&Aについては、既存店と同様に低価格帯に的を絞り、ブランド獲得を目指す。

同社はこれまでに多くのM&Aを実施しており、2025年3月期には東北地域を中心にグルメ寿司業態の「うまい鮨勘」などを展開するアミノ(仙台市)を子会社化したほか、関西地域でビフテキ重専門店の「牛ノ福」を展開するシンガ(大阪府富田林市)を子会社化した。

これ以前にも2023年のテイクアウト唐揚げ専門店「鶏笑」を運営するNIS(大阪市)の子会社化や、2019年の家族亭(大阪市)と、ドトールコーヒーや大釜屋などのフランチャイジー事業と直営店事業を手がけるサンローリー(大阪市)の子会社化、2016年の定食レストランチェーン「めしや 宮本むなし」事業の取得など多くの実績がある。

同社では今後5年間(2026年3月期~2030年3月期)に、M&AをはじめDX(デジタル・トランスフォーメーション=デジタル技術で生活やビジネスを変革する取り組み)やシステム投資、海外戦略などに100億円を投じる計画だ。

同社の低価格帯のブランドには、天丼・天ぷら本舗 さん天(天丼、天ぷら)、宮本むなし(定食レストラン)、鶏笑(テイクアウト唐揚げ専門店)などがある。これらの後に続くのはどのようなブランドだろうか。

また、同社はグルメ寿司を中心に新たな海外展開を模索しており、成長が見込める場合は寿司以外のM&Aによる海外展開も検討するとしており、M&Aに関しては海外企業を傘下に収める可能性もある。

「和食さと」「にぎり長次郎」に次ぐブランド開拓へ SRSホールディングスの候補は?
SRSホールディングスの2010年以降の主なM&A

2期連増の2ケタ増収経常増益に

外食産業はコロナ禍で苦しい経営に陥り、その後も物価高や人手不足など厳しい環境が続いているが、コロナ禍後の人流の増加やインバウンド(訪日観光客)需要の増加などに支えられ大手を中心に業績は回復傾向にある。

SRSホールディングスは和食を中心に低価格帯から高価格帯まで多彩な外食ブランドを展開しているのが強みで、コロナ禍の中の2021年3月期と2023年3月期に経常赤字に転落したものの、2025年3月期は売上高674億7800億円(前年度比12.0%増)、経常利益25億3900万円(同17.4%増)と2ケタの増収経常増益を達成。2026年3月期も、12.6%の増収、10.3%の経常増益と2期連続の2ケタアップを見込む。

2030年3月期には売上高1150億円、経常利益60億円を計画しており、これは2025年3月期との比較では売上高は年平均11%の伸びとなり、経常利益は2.4倍を超える。

これら数値には新規のM&Aを含んでおらず、これにM&A分が上積みされることなる。同社にとってM&Aが果たす役割は大きそうだ。

【SRSホールディングスの2025年3月期から2030年3月期までの数値目標】

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SRSホールディングスの2025年3月期から2030年3月期までの数値目標

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文:M&A Online記者 松本亮一

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