
不動産業中堅のサンフロンティア不動産<8934>が、ホテル買収を活発化させている。
2024年7月にオリエンタルヒルズ沖縄(沖縄県恩納村、14コテージ)を運営するオリエンタルリゾートアソシエイツ(同)を子会社化したのに続き、2025年8月には長野リンデンプラザホテル(長野市、136室)の運営会社であるエムケー興産(同)を傘下に収めた。
同社は2028年3月期にホテル運営室数6000室、2033年には1万室を目指しており、運営室数拡大のためにM&Aを活用する方針を打ち出している。
現在の運営室数は3160室(2025年6月末時点)のため、2028年3月期までの3年ほどの間に2倍近くに、2033年までの8年ほどの間に3倍ほどに拡大することになる。この先もまだまだホテルの買収は続きそうだ。
ホテル市場は今後さらに拡大
サンフロンティア不動産は、ホテル・観光市場は、インバウンド(訪日観光客)需要が拡大しているのに加え、国内の旅行消費も堅調に推移しており、ホテル客室の稼働率や単価は上昇傾向にあると分析する。
同社によると、日本人国内旅行消費額はコロナ禍で大きく落ち込んだあと、2023年はコロナ禍前の2019年と同水準にまで回復しており、インバウンドも回復が著しく「消費額、インバウンドともに今後さらに拡大が期待される」としている。
このためホテル運営室数の拡大を重要施策として取り組むことにしたもので、2026年3月期から2028年3月期までの3年間に、新たなホテル建設などのホテル開発に700億円を投じるとともに、既存ホテルの買収などのM&Aにも100億円を投じることにした。
成長投資に3100億円の枠
サンフロンティア不動産は、稼働率が低下したビルの機能性やデザイン性などを見直し、高稼働、高付加価値のビルにリノベーション(大規模な改修工事)する再生事業に強みを持つ。
総売上高の70%弱を占める、この不動産再生事業を核に、同10%強の不動産サービス事業(オフィスビルの管理、保守、仲介など)、同20%弱のホテル・観光事業(ホテルの開発、運営など)、同2%ほどのその他事業(海外事業、建設事業など)で事業を構成している。
同社によると不動産市場は、同社がオフィスビル事業を展開している東京都心部では、賃料の上昇や空室率の改善が進んでいるほか、不動産投資市場でもアジアを中心とする富裕層や国内外の機関投資家などの投資意欲は高い状態にあるという。
このため成長が見込まれるホテル・観光事業への投資と並んで、2028年3月期までの3年間に主力であるオフィスビルの再生関連(投資額2000億円)や、新築開発(同300億円)などの事業への投資も実施。
これらを合わせた総額3100億円の成長投資枠を設定し、ホテル・観光、不動産の両面での成長を目指す計画だ。
建設事業の基盤強化でもM&Aを
サンフロンティア不動産は、1999年に不動産の売買、賃貸、管理、仲介を⽬的に東京都内にサンフロンティアを設⽴したのが始まり。
2010年にリンクゲートアドバイザーズからオフィス事業を取得したのをはじめ、2012年にユービ(現 SFビルメンテナンス)を⼦会社化し、ビルメンテナンス事業を開始したほか、2015年にはサンフロンティアホテルマネジメントを設⽴し、ホテルマネジメント事業を始めるなど業容を拡大。
2016年に国内第1号となるホテル「スプリングサニーホテル名古屋常滑」を、2017年に⾃社ブランドホテルの第1号店「⽇和(ひより)ホテル舞浜」をそれぞれオープンした。
その後2019年に内装工事などの光和⼯業(現 SFエンジニアリング株式会社)を、2021年にビル清掃を手がける日本システムサービスを、2021年にネットワーク工事などのコミュニケーション開発(現 SFコミュニケーション)を⼦会社化するなどM&Aを活発化してきた。
今後のM&Aについても、ホテル運営室数の拡大だけでなく、建設事業の基盤強化にM&Aを活用する方針を打ち出しており、2025年10月1日にサッシ、ガラス窓施工の大竹建窓ホールディングス(東京都品川区)の子会社化に踏み切っている。
ホテル・観光事業、不動産関連の両事業で追い風となる状況が続く中、2025年3月期は売上高1031億7400万円(前年度比29.2%増)、営業利益212億7900万円(同20.9%増)と、売り上げ、営業利益とも過去最高を更新した。
2026年3月期も13.4%の増収、12.0%の営業増益と、2期連続の過去最高更新を見込んでいる。

文:M&A Online記者 松本亮一
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