
自動車や工作機械、電力、生命保険などの企業向けにソフトウエア開発を手がけるSYSホールディングス<3988>が、順調にM&A件数を伸ばしている。
同社は2025年8月に、ソフトウエアの開発や販売、運用などを手がけるアイビーシステム(新潟市)を子会社化。
多様な技術力のニーズにM&Aで対応するとの方針を掲げ、M&Aに積極的に取り組んできた結果で、今後もこの方針に変更はなく、5年後の2030年7月期までは年に2~3社のM&Aを実施し、連結子会社数を30社(現在は国内連結子会社16社、海外連結子会社2社の合計18社)にまで引き上げる計画だ。
2025年はすでに3件を実施
SYSホールディングスはSIer(システムインテグレーター=情報システムなどを企画から運用、保守までを一括して請け負う事業者)領域のほか、機器組み込みソフトウエアやモバイルアプリの開発などの領域にも事業を広げているソフトウエア開発の中堅企業。
電力や生命保険、クレジットカード、鉄道、不動産などの関連企業や官公庁、自治体など向けにビッグデータ処理・解析サービスやソフトウエアを提供する「社会情報インフラソリューション事業」が主力で、総売上高の60%強を同事業が占める。
このほかに自動車関連顧客に需要が高まっている車載ECU(電子制御ユニット)関連の開発や検証などのほか、重工業、工作機械、鉄鋼、運搬機などの関連企業向けにソフトウエアを提供する「グローバル製造業ソリューション事業」が同40%弱。
流通、訪問介護、鉄道、医療、ロードサービスなどの関連企業向けにモバイルアプリなどを提供する「モバイルソリューション事業」が同2%ほどの構成となっている。
1991年に名古屋市内で創業し、2004年に中国上海市の上海裕日軟件有限公司を、2012年にモバイル製品、技術に特化したエス・ケイを子会社化するなど早くからM&Aに前向きだった。
この流れは近年加速化し、2025年はアイビーシステムのほか、組み込み制御系システムの開発を中心に手がけるHTCを子会社化、またコンピューターシステムの開発、運用、販売などを手がけるラーカイラムから情報サービス事業を取得するなど、3件のM&Aを実施している。

生成AIによる変革は追い風
SYSホールディングスが属する情報サービス産業は、DX(デジタル・トランスフォーメーション=デジタル技術で生活やビジネスを変革する取り組み)の進展や、生成AI(人工知能)の広まりにより、市場の拡大が予想されている。
同社では米国関税問題による自動車産業をはじめとする製造業でソフトウエア投資の抑制懸念があるものの、自動車産業は常に国際的競争への対応を求められてきた歴史があり、競争力維持のための技術、生産性への投資は継続するとの見通しを持つ。
さらにDX需要の増加などにより、エネルギー、金融、建設、不動産分野で売り上げアップが、またビジネスアプリのモバイル化により、モバイルソリューション事業でも受注の増加が見込めるという。
また、生成AIによって情報サービス産業が大きく変革すると見ており、現在のSaaS(インターネット経由でソフトウエアを利用できるサービス)の絶対優勢が崩れる可能性を予測する。
同社は、社員の年齢や性別、国籍、経歴がさまざまで、未経験からIT人材を育成する力を持つことを強みとしており、生成AIによる変革は同社にとっては追い風になると判断。
こうした情勢を踏まえ「付加価値のあるM&A」に継続して取り組み、2030年7月期に目指す売上高300億円のうち、既存事業で280億円を、M&Aで20億円を稼ぎ出す計画だ。
現在、情報サービス業界ではDXの進展に伴って、DX関連の人材不足が表面化しており、SIerの間でM&Aを活用して、事業拡大や人材確保を進める動きがある。
買収候補企業の探索を巡って競争が高まる中、SYSホールディングスは計画通り毎年2~3社のM&Aを実現することはできるだろうか。

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文:M&A Online記者 松本亮一
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