「豊田通商」豪州の中古車販売大手を買収 収益性を高める段階へ移行か

トヨタグループの商社である豊田通商<8015>は2026年2月2日に、オーストラリアで中古車の買い取りや販売事業を手がけるMCT Automotive Group Pty Ltd(以下、MCT社)を子会社化した。

同社はこれまで、中古車関連事業ではアフリカや東南アジアの新興国を中心に、自動車の流通や中古車取引を含む関連事業を構築してきた。

今回のM&Aで、中古車需要の多い成熟市場であるオーストラリアに進出する。これは同社の中古車関連事業にとって、基盤整備のフェーズから事業運営を通じて収益性を高める段階へと移行する節目となりそうだ。

アフリカ、東南アジアでの知見を活用

豊田通商は、中古車市場の透明性や信頼性の向上を目的に、アフリカや東南アジアを中心に、オークション事業や中古車検索サイトなどを展開している。

こうした事業を通じて、モビリティバリューチェーン(自動車の製造から、流通、ローン、保険、整備、中古車取引、廃車、リサイクルまでの一連の流れ)の構築と拡大を進めてきた。

子会社化したMCT社は、オーストラリア全土でオンラインを活用した中古車の買い取り事業を展開するほか、クイーンズランド州では2拠点で小売店舗を運営している。

ウェブサイトでの個人からの車両買い取りをはじめ、事業者向けの卸売、個人向けの小売りに強みを持つ。

豊田通商ではオーストラリアは自動車の普及率が高く、とくに中古車市場では、継続的な人口増加を背景に、今後も堅調な需要拡大が見込めるとしている。

MCT社の子会社化を通じて、豊田通商がこれまで培ってきた知見やノウハウと、MCT社の強みを活用し、中古車需要の高いオーストラリア市場で、中古車事業を拡大する計画だ。

「豊田通商」豪州の中古車販売大手を買収 収益性を高める段階へ移行か
MCT社が運営する「Cars4Us」のウェブサイト
MCT社が運営する「Cars4Us」のウェブサイト(豊田通商のニュースリリースより)

中計で利益成長を加速、モビリティ事業は「収益拡大」へ

豊田通商の中計経営計画(2026年3月期~2028年3月期)では、最終年の2028年3月期に、当期利益を2025年3月期より875億円多い4500億円に引き上げる計画を掲げている。

増益分のうち500億円については非⾞載半導体領域の拡⼤や物流DX(デジタルトランスフォーメーション)などと並んで、グローバルサウス⾃動⾞バリューチェーンの強化や⾃動⾞バリューチェーンの拡大によって実現するとしている。

前中期経営計画では、モビリティ分野については基盤整備を重視する方針を掲げていたものの、利益成長計画は示していなかった。

こうした状況を踏まえると、今回のオーストラリア進出はモビリティ事業の一つの転換点をみることができそうだ。

アフリカや東南アジアで培ってきた事業基盤を、より収益創出が見込みやすい市場で展開することで、利益を拡大する体制への移行が進むことが予想される。

また中期経営計画では、3年間で1兆2000億円の成⻑投資を計画しており、このうち5000億円をセキュリティソフトウエア遠隔更新事業などと並んでモビリティバリューチェーンの拡大に振り向けるとしている。

このため今回のMCT社の子会社に次ぐM&Aの可能性も見込める。

2025年に金属リサイクル大手の米国企業を子会社化

豊田通商は、1936年に設立されたトヨタ車の販売金融を行うトヨタ金融が前身。1948年にその商事部門を継承して設立された日新通商が現在の豊田通商の起源となる。

1956年に社名を豐田通商とし、トヨタグループの商社として完成車の輸出などを通して成長してきた。

現在は、自動車用鋼板や特殊鋼板などを手がけるメタル+(Plus)部門が売上高の18.5%を占める。

これに、非鉄金属地金や貴金属地金などのサーキュラーエコノミー部門(売上高構成比17.2%)、新車・中古車販売や再生可能エネルギーなどのアフリカ部門(同16.0%)が続く。

このほか、自動車用構成部品や半導体・電子部品などを扱うデジタルソリューション部門(同13.1%)、ロジスティクスやモビリティパーツの製造・組み付けなどを行うサプライチェーン部門(同12.1%)、乗用車や商用車、中古車販売などを展開するモビリティ部門(同9.9%)が一定の比重を占める。

製造・物流設備向け部品・工具類や再生可能エネルギー発電などを手がけるグリーンインフラ部門(同7.9%)、飼料原料や穀物などのライフスタイル部門(同5.3%)と合わせ、多角的な事業構成となっている。

「豊田通商」豪州の中古車販売大手を買収 収益性を高める段階へ移行か
豊田通商の売上高構成比

2025年3月期の収益は、10兆3095億5000万円(前年度比1.2%増)、当期利益(親会社の所有者に帰属)は3625億500万円(同9.4%増)の増収当期増益となった。

円安の影響で売上高が伸び、これに伴って利益も増加した。

過去10年間に適時開示された豊田通商関連のM&Aは6件あり、直近では2025年に金属リサイクル大手の米国ラディウス・リサイクリングを子会社化している。

中古車事業を含むモビリティ分野で、基盤整備から次の段階へ進もうとする同社が次に打ち出すのはどのようなM&Aになるだろうか。

「豊田通商」豪州の中古車販売大手を買収 収益性を高める段階へ移行か
過去10年間に適時開示された豊田通商関連のM&A

文:M&A Online記者 松本亮一

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