「バローHD」着々と進む関西圏の攻略 売上高500億円の前倒し達成にめど

中部地区を地盤とする食品スーパーのバローホールディングス(HD)<9956>が、2027年3月期に目指していた関西圏の売上高500億円の目標が、2026年3月期に達成できる見通しとなった。

2025年3月期にトーホーストアから譲り受けた兵庫県内のスーパーマーケット7店舗をドラッグストアに転換(トーホーストアからは16店舗の取得を発表済み)したことなどから、計画の1年前倒しにめどが立った。

同社は関西圏の開拓を成長戦略の要としており、今後もM&Aなどを活用し早期に売上高1000億円の達成を目指す。

スクール業態のスポーツクラブのM&Aも

バローHDは、今後の継続的な成長のためには、強い成長ドライバーが必要であり、関西圏はこの成長ドライバーになり得るとして2025年3月期~2027年3月期の3年間の中期経営計画の中で関西圏への本格的な進出計画を打ち出した。

同社では、滋賀県を除く関西圏で同社に関わりのある市場の規模は27兆円ほどと試算しており、2034年3月期にはこのうちの1%ほどに当たる2500億円を関西圏での売上高目標に定めた。

この目標達成のためにM&Aのほかにも主力スーパーマーケットのバローや、生鮮特化型スーパーマーケットの八百鮮、たこ一、惣菜店のデリカキッチンなどの出店、枚方物流センターの建設(2024年10月稼働)、関西圏向けに食肉製品のスライスやトレー詰め、魚の切り身加工やパック詰めなどを行う新たなプロセスセンターの建設などを戦略として掲げている。

これら取り組みの結果、滋賀県を除く関西圏での売上高は、2024年3月期に267億円だったのが、2026年3月期は500億円に達する見通しという。

「バローHD」着々と進む関西圏の攻略 売上高500億円の前倒し達成にめど
バロー新中期経営計画(関西圏拡大)

M&Aに関しては中期経営計画の3年間に、商圏の獲得のために小売りで30億円以上を、事業補完のための機能強化に1億~30億円を投じる計画だ。

すでにトーホーストアからスーパーマーケット事業を譲り受けたあとも、2024年4月に3温度帯別で食料品と医薬品の輸配送を手がける鷺富運送(石川県白山市)を子会社化したほか、2025年8月に食品スーパー運営のドミー(愛知県岡崎市)を子会社化するTOB(株式公開買い付け)が成立している。

今後は成長の要としている関西圏でのM&Aをはじめ、中期経営計画に盛り込んでいるスポーツクラブ事業でのスクール業態のM&Aなどが探索の候補となりそうだ。

「バローHD」着々と進む関西圏の攻略 売上高500億円の前倒し達成にめど
バローホールディングスが2016年以降に適時開示した主なM&A

強みはサプライチェーン全体で収益を巻き取る仕組み

バローHDは総売上高の50%強を占める主力のスーパーマーケット事業、同20%ほどのドラッグストア事業、同15%ほどのホームセンター事業を中心に、同数%のペットショップ事業、スポーツクラブ事業、流通関連事業(スーパーマーケットなどへの資材、什器、備品の販売など)などで構成。

製造から流通、販売までを一貫して担う製造小売業としてのビジネスモデルを構築しており、同社では「小売り、サービス業を成長のドライバーとしながら、サプライチェーン全体で収益を巻き取る仕組みが強み」としている。

主力のスーパーマーケットは、全国スーパーマーケット協会がまとめた「2025年版スーパーマーケット白書」によると、2024年のスーパーマーケットの既存店売上高は2年連続で前年実績を上回っており、今後の見通しにつても堅調な需要が見込まれる。

ドラッグストア事業も、日本チェーンドラッグストア協会が2030年に売上規模13兆円(2024年度の売り上げは10兆円ほど)の産業を目指す方針を掲げており、今後も拡大が見込める。

一方、ホームセンター事業は、日本DIY・ホームセンター協会によると、コロナ禍の中の巣ごもり需要で、ホームセンター業界の売上高は2020年に4兆2680億円と過去最高を更新したあとは振るわず、2024年の売上高は4兆180億円に留まっている。

いずれの業界も少子高齢化や物価高、人件費の上昇、DX(デジタル・トランスフォーメーション=デジタル技術で生活やビジネスを変革する取り組み)化の進展などの共通した課題を抱えており、M&Aによる事業拡大や新分野への参入などの動きが見られる。

2030年に1兆円企業に

足元の業績は堅調で、2025年3月期は8544億3500万円(前年度比5.8%増)、営業利益 231億9100万円(同1.5%増)と増収営業増益を達成。

2026年3月期は5.6%の増収、8.7%の営業増益を見込んでおり、実現すれば増収営業増益は2024年3月期以来3期連続となる。

同社は2030年3月期に1兆円、2034年3月期に1兆2000億円の売上高を目指しており、関西圏の売り上げ規模拡大が、この目標達成を左右することになりそうだ。

文:M&A Online記者 松本亮一

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