「生きたふたりの姿をしっかり届けたい」柿澤勇人、矢崎広ら出演ミュージカル『ボニー&クライド』製作発表会見レポート
ミュージカル『ボニー&クライド』製作発表会見より 左から)瀬戸山美咲、柿澤勇人、矢崎広、桜井玲香、海乃美月

柿澤勇人、矢崎広が主演するミュージカル『ボニー&クライド』の製作発表記者会見が1月31日、都内にて開催された。映画『俺たちに明日はない』で知られる、実在したギャングカップルであるクライド・バロウとボニー・パーカーの人生を、世界恐慌下であった1930年代アメリカの社会情勢と照らし合わせながら描いていく物語。

クライド役は柿澤と矢崎がダブルキャストで務め、ボニー役は桜井玲香と海乃美月が演じる。



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ミュージカル『ボニー&クライド』メインビジュアル

『ジキル&ハイド』『デスノート THE MUSICAL』など数々の人気作を手掛けるフランク・ワイルドホーンの音楽が彩る名作ミュージカル。2011年にブロードウェイで上演され、日本では2012年には初演された作品だが、その後ブラッシュアップを重ねており、今回は2022年にロンドン・ウェストエンドで上演されたバージョンを基に瀬戸山美咲が作る新演出版だ。



会見には柿澤、矢崎、桜井、海乃と演出の瀬戸山が登壇。会見冒頭では、クライドとボニーが「いつかビッグになってやる」と夢を歌うナンバー『ピクチャー・ショー』と、逃避行を始めるふたりが「ふたりの名前を世界に残そう」と歌う一幕ラストの大ナンバー『残すのさ名前を』の2曲を四人で披露。ワイルドホーンによる疾走感あるジャジーな楽曲を力強く歌い、作品の世界観を伝えた。



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その後改めて出席者が登場。「もともと『俺たちに明日はない』が大好きで、あの乾いた雰囲気や、ボニーとクライドの焦燥感ある刹那的な生き方に惹かれていたので、このお話をいただいた時はとても嬉しかった」と話す瀬戸山は、「このミュージカル版では夢と現実のコントラストが色濃く描かれています。フランク・ワイルドホーンさんの力強い楽曲が、彼らのどこかに行きたいけれど行けない、でも飛び立ちたいというエネルギーを表現している。疾走感とエネルギーある作品にしていきたい」と意気込みを語る。



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キャストも口々に、クライドとボニーという人物の魅力を話す。柿澤は「疾走感あるストーリーと、(ここから)抜け出したい、世の中をひっくり返したいと思っているクライドとボニー。

そんな爆発力のあるふたりを中心に、カンパニー一同で素敵な作品に仕上げようと努力しています。期待してください」と話し、矢崎も「ボニーとクライドは民衆に応援してもらったカップル。『ボニー&クライド』もたくさんの方に応援していただけるようなミュージカルになれば」と意気込みを。



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桜井は「世界中で熱狂的なファンがたくさんいるカップルです。彼らがなぜギャングになったか、その理由や、そう至った気持ちを丁寧に描いている作品なので、ぜひ皆さんにこのふたりのことを知ってほしいし、好きになってもらえるようなふたりを演じられたらと思います。とても悲しいストーリーですが、とにかく楽曲がカッコいいし、ビジュアルもカッコいい。観た方に『スカッとした』『最高に気持ちよかった』と思ってもらえるような作品にできたら」と意気込み、今作が宝塚退団後一作目となる海乃は「とても楽しくお稽古させていただいています。ボニーとクライドの物語は、映画などでは彼らを客観的に見ていた人の目線で描かれることが多いのですが、この舞台では彼ら自身が生きざまをとても丁寧に描いている。私も全力で生き抜きたい」と話した。



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芝居以外の話しかしない“カッキー”と、芝居の話しかしない“ピロシ”

クライドとボニーは閉塞した時代の中で強盗を繰り返し、不況にあえぐ民衆たちに祀り上げられていくものの、しまいには殺人にも手を染めてしまい、悲劇的な最期を遂げることになる。そのクライドの原動力について問われると、柿澤は「一番大きいのは怒りの感情ではないかと。社会に抑圧され、動いても何も変わらない、神も救ってくれないとみんなが諦めている時代。

そこに対してクライドは反逆をおこした」と分析。「個人的には今年に入り、三が日に自宅のトイレがつまり、仕事で行った韓国ではパスポートを落としました。ふざけんなよというようなことが2025年に入ってたくさんあったので、そういう気持ちをぶつけたい(笑)。……半分冗談ですが」というエピソードも添え、会場を沸かす。



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矢崎も「アメリカの激動の歴史の中でも、1930年代は本当に大変な時代。クライドは自分が今いる意味は何だろうと自問し、もっと大物になるんだと思っている。そこにボニーと出会い、自分の持つ情熱にさらにボニーの気持ちが乗っかり、止まらなくなってしまったのだと思う」と役の解釈を明かした。



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ボニー役のふたりも、「ふたりの話は色々な物語になっていますが、作品ごとにボニーの印象が違って、真面目な女の子という描写があったかと思えばセクシーな女性だったり、危険な片鱗がみえたりする。ただ、ボニーは小さい頃からなぜかまわりの人たちが彼女に魅了される、何か人を惹き付ける魅力がある女の子だったのは間違いない。見ている方が何か気になってしまうような、目が離せなくなるような女性を演じたい」(桜井)



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「玲香ちゃんが言うように、幼少期から色々な人に好かれる子だという印象があります。加えて文学的な才能があったそうで、文章を書いたり詩を書いたりするのが好きだった。つまり想像力が豊かな女性だったんだろうなと思います。

真面目だからこそクライドのような人に出会った時に惹かれ、出会ってからは自分の夢を引っ張ってくれるクライドとの相乗効果でどんどん前に進んでいく。世界恐慌の時代をかき分け走っていくような存在になっていく信念の強さもボニーの特徴だと思うので、そこを大事に演じたいです」(海乃)と、それぞれの役について語った。



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そんな四人の俳優としての魅力については、瀬戸山は次のように話す。
「柿澤さんは本当に爆発力がすごい。まだ前半の明るいシーンの稽古をしている段階ですが、それでも怒りや悲しさ、寂しさといったヒリヒリした瞬間が垣間見えて、そこが魅力的です。矢崎さんは10年前にご一緒していますが、その時からとても楽しい俳優さんでした。大人になられても楽しい俳優さんであることは変わりありませんが、時代背景やクライド像をすごく掘り下げて考えていらっしゃるのが素敵です。また常に稽古場で面白いことにトライしようという気概に溢れていらっしゃいます。



「生きたふたりの姿をしっかり届けたい」柿澤勇人、矢崎広ら出演ミュージカル『ボニー&クライド』製作発表会見レポート

桜井さんはボニーの抱える満たされない感じ、世の中に対する反発心というような精神をお持ちの女優さんだなと以前から感じていました。もどかしさやもがいている感じがとても魅力的。海乃さんは、最初に歌声を聴いた時にその明るさにびっくりしましたし、そこがすごくいいなと思いました。クライドはボニーのこの明るさに惹かれたのだろうと思います。

一方で稽古をしていると突然殺気のようなものも感じ、ボニーの残酷さが一瞬見えるのも面白い」。



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さらに会見では稽古場での雰囲気についても質問がおよび、矢崎が「カッキー(柿澤)はめっちゃ自由。ストレッチしているかと思えば芝居に打ち込んでいるし、地面にいたと思えば高いところにいる。あんなにあちこちにいる俳優、みたことない。おさるさんみたいだよ?」と言えば、柿澤は「ピロシ(矢崎)は役者として真面目。常に新しいことにトライし、正解を決めず何が自分にフィットするのか考えている。この時代のこともとても勉強している。ふたりでいるとピロシは芝居の話しかしない。逆に僕は『どこかいいサウナない』『ご飯どうしてるの』というような芝居以外のことばかり話してる。もしかして(俺に対し)ムカついてる……?」と言ったところで「いや逆に……俺、ウザい?」と矢崎が心配そうに返す一幕も。



「生きたふたりの姿をしっかり届けたい」柿澤勇人、矢崎広ら出演ミュージカル『ボニー&クライド』製作発表会見レポート

作品全体の構想としては瀬戸山が「ボニー&クライドというと、映画でも描かれたように死んだ時の状況がすごく有名ですが、その死よりも、生きたふたりの姿をしっかり届けたい」と話し、「ふたりには持って生まれた人を惹き付ける才能があり、それを持て余していた。そういうふたりが出会ってしまったから、エネルギーが増幅してこうなってしまったというのをしっかり描きたい。

ふたりの何が魅力的かというと、対等な関係だったというところにあるのだと思います。その関係性にアメリカの人が熱狂した。どちらが欠けてもダメだし、どちらかが主導しているのでもない。ふたりが合わさった時に圧倒的にカッコいい。今回もふたりの関係性ができる過程をしっかり描きながら、まわりの人たちが彼らにどう熱狂していったのか――もともとの戯曲にも描かれていますが、その民衆のパワーもきちんと段階を踏んでお見せできたらと思います」とアピールを。



「生きたふたりの姿をしっかり届けたい」柿澤勇人、矢崎広ら出演ミュージカル『ボニー&クライド』製作発表会見レポート

柿澤も「ボニーとクライドは犯罪を犯し人も殺した。ある意味極悪人ですが、史実では、ボニーの葬儀には3万人の、クライドの葬儀には1万5千人のファンが集まったそうです。なんでクライドの方が少ないのかなと思いますが(笑)、犯罪者なのにそれだけの人が何かポジティブな感情を持った。僕たちも観てくださる方に『悪いことばっかりやってるけど頑張れ』『行け』『死なないでほしい』、そういう感情を持っていただけるよう頑張りたい。皆さまに愛していただけるようなふたりになればと思いますし、ポップな曲あり、素敵なバラードありと作品自体カッコよくイケている。ぜひ劇場で体感していただいて『悪いヤツらだけど、すげえ好きになったわ』と思っていただけることを目指して稽古を頑張ります」と力強く話し、会見は終了した。



公演は3月10日(月) に東京・シアタークリエで開幕。

4月には大阪・森ノ宮ピロティホール、5月には福岡・博多座と愛知・東海市芸術劇場大ホールでも上演される。



ミュージカル『ボニー&クライド』プロモーション映像



取材・文・撮影:平野祥恵



<公演情報>
ミュージカル『ボニー&クライド』



脚本:アイヴァン・メンチェル
歌詞:ドン・ブラック
音楽:フランク・ワイルドホーン
上演台本・演出:瀬戸山美咲
訳詞:高橋知伽江
音楽監督・ピアノコンダクター:前嶋康明
振付:松田尚子



出演:
クライド・バロウ(Wキャスト):柿澤勇人/矢崎広
ボニー・パーカー(Wキャスト):桜井玲香/海乃美月
バック:小西遼生
ブランチ:有沙瞳
テッド(Wキャスト):吉田広大/太田将熙
エマ:霧矢大夢
シュミット保安官:鶴見辰吾



石原慎一/彩橋みゆ 池田航汰 神山彬子 齋藤信吾※ 社家あや乃※ 鈴木里菜 焙煎功一 広田勇二 三岳慎之助 安田カナ
(※スウィング)



【東京公演】
2025年3月10日(月)~4月17日(木)
会場:シアタークリエ



【大阪公演】
2025年4月25日(金)~4月30日(水)
会場:森ノ宮ピロティホール



【福岡公演】
2025年5月4日(日)・5日(月・祝)
会場:博多座



【愛知公演】
2025年5月10日(土)・11日(日)
会場・東海市芸術劇場大ホール



チケット情報
https://w.pia.jp/t/bonnie-and-clyde/(https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2455449&afid=P66)



公式サイト:
https://www.tohostage.com/bonnie_and_clyde/



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