鞘師里保「思いもよらない“?”も楽しみたい」加藤拓也作『らんぼうものめ』で8歳の男の子に
鞘師里保 (撮影:藤田亜弓)

次世代の演劇界をけん引する劇作家・演出家の加藤拓也。彼が初の子ども向け作品として、KAAT キッズ・プログラム 2024『らんぼうものめ』を上演する。

物語は、小学生の薫平たち家族が、都会から田舎に引っ越してきたところから始まる。片づけの気分転換にと散歩に出かけるも、突然神さまに母親を連れ去られてしまった薫平。母親を取り戻すため、神さまの世界に入り込んだ薫平は……。主人公の薫平を演じるのは、近年活躍が目覚ましい鞘師里保。初の加藤作品、さらにキッズ・プログラムに臨むに当たっての心境を語ってもらった。



これどうやってやるんだろう!?みたいなシーンが次から次へと

鞘師里保「思いもよらない“?”も楽しみたい」加藤拓也作『らんぼうものめ』で8歳の男の子に

――以前から加藤拓也さん作品はよくご覧になっていたそうですね。



はい。ただ私はずっと音楽に携わってきたので、決して演劇をたくさん観るようなタイプではありませんでした。それが初めて加藤さんの作品を観た時に、なんかふと、また行きたいかも……みたいな気持ちになって。そこに自分が出られるなんてことは、現実的にとても考えられませんでした。もしこの人生で本当に出られるようなことがあれば、すごく嬉しいなぁ……くらいの感覚で(笑)。だからこういう機会をいただけてただただビックリですし、同時にとても嬉しいです。



――加藤さんご本人から、キャスティング理由はお聞きになりましたか?



舞台上に“8歳の男の子”という役どころの人物が居る時、お子さんにとってどう見えるのがいいか、まず考えられたそうです。

私は今20代の女性という身体的な特徴があるのですが、そういう人が演じることによって、内容の暴力性みたいなものを保護出来るのではないか、と。そしてそういう男の子を演じるに当たってのイメージから、私のことを選んでくださったそうです。



――本作は加藤さん初のキッズ・プログラムとなりますが、台本を読まれた初見の印象は?



加藤さんの作品って、私たちの生活で実際に起きていそうな、リアルな会話を台詞にされている印象があったんですが、今回はファンタジー。でもだからといって加藤さん節というか、加藤さんらしさがなくならないのがすごく面白いなと。あとこれどうやってやるんだろう!? みたいなシーンが、ひとつやふたつじゃなく、大量に詰め込まれていて(笑)。それをどう私たちが表現していくのか、すごくワクワクしました。



鞘師里保「思いもよらない“?”も楽しみたい」加藤拓也作『らんぼうものめ』で8歳の男の子に

――演じられる8歳の男の子・薫平ですが、現段階でどんなことを特に意識されていますか?



今自分は8歳の男の子をやっている、と思うのではなく、そこにお父さんとお母さんがいて、ふたりに対する自分の関わり方としてこれが親子関係だと認識する。だから8歳の男の子だ、みたいな考え方の順番のようなものは意識するようにしています。それは“神さま”に対しても同じで。つまり相手との関係性から役を立ち上げていく。そのほうが私には合っているのかなと思います。



アトラクションに乗るような感覚で一緒に楽しんでもらいたい

――お稽古開始から3週間弱とのことですが、加藤さんからかけられた言葉で印象に残っていることは?



私はこれまで、ステージでドン!と立つことを頑張ろうと思ってずっとやってきました。

ただいくらお子さん向けにわかりやすくしているとはいえ、お芝居である以上、やっぱりそれは必要ないんですよね。加藤さんからも、「ステージに立っているように見える」といったご指摘をいただくことがあって。あと頭の中で段取りを組んで試したことは、すぐに段取りを組んでやっていることだと見抜かれます(笑)。あくまでこのシーンとして、自分がどういう状態でいるか。それが大事なんだと。すごく勉強になるなと思う反面、これはあくまで作品のための稽古ですから。みんなが見ている目的に向かって、自分も一緒に、なるべく無駄がないよう進んでいきたいと思っています。



――キッズ向けの作品に取り組む上で、特に大事にされていることは?



鞘師里保「思いもよらない“?”も楽しみたい」加藤拓也作『らんぼうものめ』で8歳の男の子に

これはカンパニー皆さんの意見でもありますが、ストーリーはもちろん、舞台というもの自体に興味を持ってもらえるような時間になればいいなと思っています。そのために楽しんでもらえるポイントや仕掛けは、たくさん詰まっていると思うので。この間共演者の安藤聖さんが、稽古場にお子さんを連れて来られたんです。そうしたら思いもよらないところで感動してくれたり、「このあとお母さんって帰って来るの?」とストレートに聞かれたり(笑)。もう「?」がいっぱいあるのが面白いですし、きっと本番を迎えたら、思いもよらないところから出て来る「?」がたくさんあると思うんです。

そして演じる側にも心の中のハプニングがたくさんあるんだろうなと思いつつ(笑)、そんなことも楽しめるといいなと思っています。



――本作を通して、お客さまにどんな時間を味わっていただきたいですか?



大人の方も、お子さんも、アトラクションに乗るような感覚で一緒に楽しんでもらえるといいのかなと思います。それで最後なにか残るものがあれば、私たちとしてもとても嬉しいです。



鞘師里保「思いもよらない“?”も楽しみたい」加藤拓也作『らんぼうものめ』で8歳の男の子に


取材・文:野上瑠美子 撮影:藤田亜弓



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鞘師里保「思いもよらない“?”も楽しみたい」加藤拓也作『らんぼうものめ』で8歳の男の子に

<公演情報>
KAATキッズ・プログラム2024『らんぼうものめ』



作・演出:加藤拓也

出演:鞘師里保 安藤聖 金子岳憲
近藤隼 秋元龍太朗 中山求一郎 高田静流

※おすすめの年齢:6歳~

【神奈川公演】
2024年7月20日(土)~7月28日(日)
会場:KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ

【いわき公演(福島)】
2024年8月4日(日)
会場:いわき芸術文化交流館アリオス 中劇場

【松本公演(長野)】
8月17日(土)・18日(日)
会場:まつもと市民芸術館 小ホール



チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2451447(https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2451447&afid=P66)



公式サイト:
https://www.kaat.jp/d/ranbomonome



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