人気キャラの髭切・膝丸を演じる莟玉と吉太朗。若きふたりが、第二弾歌舞伎『刀剣乱舞』の要となる!
左から)中村莟玉、上村吉太朗 (撮影:興梠真帆)

人気ゲーム「刀剣乱舞ONLINE」を原案とした新作歌舞伎が上演されてから2年。待望の第二弾が上演される。題して、歌舞伎『刀剣乱舞 東鑑雪魔縁(あずまかがみゆきのみだれ)』。今回は、源氏に縁のある刀、髭切・膝丸を中心に、鎌倉幕府三代将軍源実朝の暗殺事件をめぐる物語が描かれる。髭切を演じる中村莟玉、膝丸を演じる上村吉太朗の思いやいかに──。稽古が始まったばかりのふたりを直撃した。



刀剣乱舞ファンと歌舞伎ファンの掛け合いも感じつつ、お客様と一緒に作り上げた前回

人気キャラの髭切・膝丸を演じる莟玉と吉太朗。若きふたりが、第二弾歌舞伎『刀剣乱舞』の要となる!

──まず、2023年に上演された歌舞伎『刀剣乱舞 月刀剣縁桐(つきのつるぎえにしのきりのは)』から振り返っていただけたらと思いますが、あの反響の大きさはどう感じておられましたか。



莟玉 実は、幕が開く前から、髭切・膝丸の兄弟は「人気キャラですから」と脅されていたんです(笑)。だから、大丈夫かなと思っていたんですけど。



吉太朗 受け入れてもらえるのかなって。でも、作っていく上では、歌舞伎の曽我十郎・五郎兄弟をイメージしたり、演じやすいキャラクターではありましたし。その中で、SNSなどのお客様の反応から、例えば、膝丸のファンの方は膝丸のこういうところが好きなのかと勉強させてもらえたこともたくさんあったので。本当にお客様と一緒に作り上げていけた感じがしています。



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歌舞伎『刀剣乱舞 東鑑雪魔縁』より、髭切=中村莟玉ビジュアル
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歌舞伎『刀剣乱舞 東鑑雪魔縁』より、膝丸=上村吉太朗ビジュアル

莟玉 キャラクター同士のやりとりも期待していらっしゃるんだなということが、お客様の反応でわかりました。刀剣男子同士がやりとりする場面になって、原作でおなじみのセンテンスがちょっと入っているだけで客席がザワザワっとして(笑)。それで歌舞伎のお客様にも「ここは笑っていいんだ」と原作の設定を知っていただけたりして。客席での歌舞伎ファンの方と刀剣乱舞ファンの方との掛け合いが舞台上にも伝わってきたので。当然、どちらのお客様にも楽しんでいただけるものを目指してみんなでお稽古しましたけど、それがいい形で昇華されたんじゃないかなと感じました。



──しかも、事前に脅されていらっしゃったように(笑)、髭切・膝丸兄弟のやりとりを、多くの方が楽しみにされていました。



莟玉 それぞれの刀の生きていた時代が違う中で、同じ時代に生きていた髭切・膝丸にエモさを感じるというのは、しごく当然だと思いますし。他のキャラ同士のやりとりにはないものを楽しんでいらっしゃるんだろうなというのは感じていました。



──そうすると、本番を重ねるごとに、おふたりでこうやってみようと考えたりも?



吉太朗 それが、前回は一緒にいる場面が本当に少なかったんです。



莟玉 少なかったね。最初と最後と松永弾正の庭先と。あとは立廻りだけだったから。



吉太朗 ただ、あの庭先での“二人御注進”は面白かった。歌舞伎では普通ひとりで注進するところを、せっかくだから兄弟ふたりでやろうということになって。歌舞伎の古典の手法を、新たな形でさせていただけたのはありがたかったです。



──ふたりの動きが見事に合っていました。



吉太朗 やっぱり揃っていたほうがきれいでかっこいいのでね。



莟玉 でも、合わせようとしなくとも、というのか。膝丸が吉太朗くんなので、僕の中で特にこしらえなくとも、特別な創作をせずとも、そのままいればいいというのをすごく感じながらやっていました。松也兄さんのナイスキャスティングです(笑)。



人気キャラの髭切・膝丸を演じる莟玉と吉太朗。若きふたりが、第二弾歌舞伎『刀剣乱舞』の要となる!

吉太朗 だから、第二弾の今回も、まだ稽古が始まって数日ですけど、安心感があって。もちろんこれからではあるんですけど、「まあ大丈夫やろ」と思っています(笑)。キャラクターとしても、ひとりで考えて自由気ままな兄者に、弟の僕がひっついて行って、兄者の考えていることに気づいて俊敏に動いたりしているので。その感じはまさしくこのふたりだからできるんじゃないか、それこそナイスキャスティングで、髭切・膝丸はこのふたり以外考えられないんじゃないかと感じています。



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「莟玉さんが髭切をやっているのか、髭切が莟玉さんをやっているのかわからなくなる」

──おふたりの仲はいつからですか?



吉太朗 最初に会ったのは、僕が(片岡)我當の部屋子になったときでした。



莟玉 初舞台(2009年、京都南座吉例顔見世興行『時平の七笑』)のときだよね。その月は僕も別の演目(『鬼一法眼三略巻』『土蜘』)で出ていて。あれは何歳でしたか。



吉太朗 8歳です。



莟玉 じゃあ、僕が13歳くらいか。



吉太朗 そこからもうずっとご一緒してきました。



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莟玉 その後、『筆谷幸兵衛』(2011年)という作品で、僕ら姉妹役もやっているんですよね。僕が姉のお雪、吉太朗が妹のお霜で。それが兄と弟になった(笑)。



吉太朗 性別が変わっただけ(笑)。



──なるほど。兄弟役は莟玉さん、吉太朗さんにぴったりだったわけですね。さらに今回の物語は、演出の松也さんが、髭切・膝丸を中心に描きたいと考えられたそうです。聞かれたときはいかがでしたか。



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莟玉 僕は前回、髭切とお姫様の二役させていただいていたので、今回の配役が発表されたときに、「今回はしっかり髭切を楽しめる」というお声をくださった方もいれば、「またお姫様をやってほしかった」という方もいらっしゃって。前回皆さんにご満足いただけていたのなら、その満足度を髭切だけでお届けしなければいけないというのは、すごくいいプレッシャーになっています。



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吉太朗 兄弟がメインになるとお聞きしたときは嬉しかったんですけど、普段はまだメインでお芝居をすることがないので、どう作っていくか不安なところもあって。でも、前回、三日月宗近と足利義輝のドラマチックな場面があって素敵な作品になったように、今回もそれに負けない、いい作品にしたいと思っています。そして、髭切・膝丸ファンの方がさらに盛り上がってくださればなお嬉しいなと。



莟玉 兄弟のやりとりを見ていただける場面も増えると思います。前回はどちらかというと、歌舞伎用語で言うところの、時代なセリフが多かったんですけど、今回は、世話(日常的)な場面が、特に序盤はかなり多いので。そこに、「そうそう、髭切と膝丸はこうだよね」というところを盛り込んでいけるんじゃないかなという気がしているんです。



吉太朗 「こういうのが観たかった」とファンの方が思うシーンを作れたらいいですよね。



──キャラクターも深めていけそうですね。



莟玉 そうですね。髭切は相変わらず自由気ままですが、今回はさらに、達観しているというか冷めている部分も見せることになると思います。「いちいち感情移入していたら何もできないだろ」というのが髭切のスタイルなんです。片や膝丸は、人の気持ちを汲み取るタイプなので、すぐにうわーっとなる。



吉太朗 熱くなりがち。発火してますね(笑)。



人気キャラの髭切・膝丸を演じる莟玉と吉太朗。若きふたりが、第二弾歌舞伎『刀剣乱舞』の要となる!

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──ちなみに、そのそれぞれの性格は、ご自身と似ているところもありますか。



吉太朗 あると思います。僕も、人からは静かなタイプに見えているみたいなんですけど、実は心の中で燃えているみたいなところがあるので(笑)。



莟玉 僕はもう完全に、普段の自分の人間性そのままですね。



吉太朗 いや本当に、たまに、莟玉さんが髭切をやっているのか、髭切が莟玉さんをやっているのかわからなくなるんです(笑)。



莟玉 セリフを見ても「僕も普段こう喋るしな」と思います(笑)。いつもだったら、このお役は今どんな気持ちかなとか、このセリフはどう言おうかとか考えるんですけど、その工程が特段必要ない。ただ、だからこそ、逆に難しいです。素の自分でいれば髭切になるんですけど、それだと髭切が非常に薄っぺらくなってしまうので、ちゃんとした厚みを持たせないと。そこは、でも、膝丸の存在と兄弟のやりとりが、ヒントになるなと思っています。



吉太朗 とにかく楽しく演じられるんじゃないかと思っています。キーパーソンの源実朝(中村歌昇)とも関わっていきますし。松也さんが演じる敵役の羅刹微塵と戦ったり、立廻りでもメインになるところがありますし。見せどころはしっかりお見せしたいです。



相性抜群の刀剣乱舞と歌舞伎、この先も両方を楽しんでもらえたら

──今回は二部構成で、大喜利所作事「舞競花刀剣男士(まいきそうはなのつわもの)」として、踊りもたっぷりあります。



莟玉 キャラクターごとの踊りがあるので、より楽しんでいただけるかなと。僕としては、ミュージカル「刀剣乱舞」で髭切を演じておられた三浦宏規さんのバレエ経験を活かしたダンスが見事で、髭切はかくあらんと思ったので。あの優美さを出せたらなと。



吉太朗 きれいでしたよね。僕はまず、刀剣男士みんなで踊れるのが楽しみです。前回は刀剣男士の踊りの場面で莟玉さんがお姫様で出ていて、髭切が踊れていなかったので。



莟玉 そう、それは僕も楽しみです。あと、外題に「大喜利」とついていて、「刀剣男士が大喜利大会をするんですか」と聞かれたんですけど(笑)。



吉太朗 「笑点」みたいに(笑)。



莟玉 決してそうではなく、興行の最終演目のあとに独立して付けられる出し物を「大喜利」と呼ぶんだということを、ぜひお伝えしておきたいです。



──所作事(舞踊作品)が付いてみんなで踊って終わることで、カーテンコールが盛り上がりそうです。前回もたくさんファンサ(ファンサービス)をされていましたね。



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莟玉 キャラクターから逸脱しない範囲内であればいいだろうということで、いろんなことをやっていました。



吉太朗 僕は『新作歌舞伎ファイナルファンタジーX』で経験していたので、こんなことをしたら喜んでもらえるんじゃないかということもなんとなく掴めていて。そのときお客様にウケていた(坂東)彦三郎さんの真似をして、舞台前面のライトの前に足を出して乗り出してみたんです。そうしたら、ちょうどその日が誕生日だった方の「ファンサしてくれた!」というSNSがバズって。受け入れてもらえたんだと、僕も嬉しかったです。



莟玉 そういうのも勉強になりますよね。



吉太朗 ひとつの見せ方ですもんね。



──カーテンコールがあるのも新作歌舞伎ならではです。新作を作っていくことにはどんな思いがありますか。



吉太朗 観たことがない方に歌舞伎を知ってもらうためにも、次の世代につないでいくためにも、すごく大切なものだと思うので。いろんな意味で新作が橋掛かりになればいいなという気持ちで取り組んでいます。



莟玉 これだけ新作が上演される時代になった今、何を目的に作るのかということが大事になってくると思っています。吉太朗くんが言うように、歌舞伎に触れたことのない人たちにまず接地面を提供するのか。その後古典歌舞伎に引っ張ってきたいのか。その意味では、古典の演出をふんだんに取り入れている歌舞伎『刀剣乱舞』は、古典歌舞伎への無理のない動線を作れるコンテンツに十分なり得るなと思っています。そもそも、刀剣男士同士のやりとりのここで笑うという型があるのも、まさしく歌舞伎。歌舞伎との相性は抜群なので、刀剣乱舞のファンと歌舞伎のファンの境目がどんどん曖昧になって、両方を楽しんでいただければなと思います。



──松也さんは製作発表会見で、第2弾で終わらせるつもりはない、第3弾、第4弾に向けていくつかの伏線も考えている、というような発言をしていらっしゃいました。この演目を続けていくことへの意気込みを、最後にお願いします。



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莟玉 シリーズを追いかけることで、より深く作品を理解できるという楽しみができると思うんです。今、いろんなコンテンツでそういう楽しみ方をしている人も多いですし。歌舞伎にも通し狂言がありますから、それを追いかけていくという楽しみ方が、浸透していけばいいなと思います。



吉太朗 自分にとっては、松也さんがいろいろ考えて配役してくださった『刀剣乱舞』は、やはり特別な作品なんです。だから、ずっと続いていって、そこに必ず髭切、膝丸がいてというふうになれば嬉しいです。大きな作品になっていくよう、少しでも力になれればなと思います。



取材・文:大内弓子 撮影:興梠真帆



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<公演情報>
歌舞伎「刀剣乱舞」
 『東鑑雪魔縁(あずまかがみゆきのみだれ)』
  大喜利所作事『舞競花刀剣男士(まいきそうはなのつわもの)』



原案:『刀剣乱舞ONLINE』より(DMM GAMES/NITRO PLUS)
脚本:松岡亮 演出:尾上菊之丞 尾上松也

出演:尾上松也、中村歌昇、中村鷹之資、中村莟玉、尾上左近、澤村精四郎、上村吉太朗、市川蔦之助、河合雪之丞、大谷桂三、中村獅童 ほか

【東京公演】
2025年7月5日(土)~7月27日(日)
会場:新橋演舞場

【福岡公演】
2025年8月5日(火)~8月11日(月・祝)
会場:博多座

【京都公演】
2025年8月15日(金)~8月26日(火)
会場:南座



チケット情報:
https://w.pia.jp/t/kabuki-toukenranbu/(https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2559244&afid=P66)



公式サイト:
https://kabuki-toukenranbu.jp/



©NITRO PLUS・EXNOA LLC/歌舞伎『刀剣乱舞』製作委員会



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